『キミの想いは、ちゃんと届いていたぞ。羽々音小鳥っていう女の子に』
この台詞につい涙腺がやられかけました。
同じような台詞は物語の序盤で天音が行っていましたが、天音やイスカの事情を知ったあとで聞くと印象が全然違いますね。
超留年生というのが一体何年留年してるのかは分かりませんが、亜沙や依瑠と一回り違うと言っていましたから7、8年は立っている計算になります
その間ずっと一人でグライダー製作をつづけていた天音にとって、イスカの航空記録を読んでやってきたという小鳥の存在はさぞかし嬉しいものだったでしょう。
ところで、この『想いが届く』というのはこのゲームの一つのテーマだったように思います。
例えば、小鳥の胸に秘めたSOSが紙飛行機というものを通じて碧に届くのが小鳥ルートの大きな要素です。
イスカが自分のことを忘れてほしくないという想いをこめて残した航空記録は小鳥の元に行き、小鳥や碧達を天音の元へと導く役割を果たしましたし、
天音がイスカのことを想い何年もグライダー製作をつづけていたことで、そのグライダーを見たイスカは気力を取り戻すことができました。
これだけではありません。
飛岡がイスカの手紙をなかなか天音に渡そうとしなかったのは嫌いだったとはいえそれでも天音のことを傷つけるような手紙を渡したくはないと思っての行動です。もし早々に手紙を渡していたら天音は絶望から立ち直れずグライダー作りもやめていたでしょう。
天音が去った後に碧達がグライダー製作をつづけていたのだって天音がまた戻ってきてともにモーニンググローリーを見られると信じたからでしょうし、結果として天音は帰ってきて顧問になってくれます。
一度目のモーニンググローリーを飛んだことは亜沙や依瑠をソアリング部へと導きます。
また、小鳥や亜沙・イスカがグライダーを見つけることができたのは「空を飛びたい」と想い、頻繁に空を見上げていたからです。
このように最後のフライトまでにはそれぞれの互いに対する優しさやひたむきな願いがあって、そうした想いがすべて繋がって最後のフライトに辿りついたのだと思います。
今までに挙げたどの要素がかけても最後のフライトはなかったでしょう。
だからこそ最後のフライトは感動的でした。
このゲームはよく青春ゲーといわれますが、確かにこのゲームの「ひらすらに相手を思いやる」姿勢は青春といって差し支えないものでした。
あとイスカや天音から碧達に伝わった伝統が、碧達から双子へとつながっていくところもこのゲームのいいところだと思います。
だからこそ双子を任された七鳥未奏さんが本領を発揮できてなかったのが悔やまれますが…。
あるいは、イスカがみつけたモーニンググローリーの写真もずっと昔にOB達が撮ったものです。
となればイスカたちの前にはそのOBがいて、そのOBの前にもさらに前のOBがいるわけです。
そういうように伝統が脈々と続いていく様を、モーニンググローリーの長い雲が表しているのかもしれません。