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myself6さんの穢翼のユースティアの長文感想

ユーザー
myself6
ゲーム
穢翼のユースティア
ブランド
AUGUST
得点
90
参照数
6031

一言コメント

「神神と言われてる一方でいつもの八月っていうのも良く見るし、どうせ信者が騒いでるだけで凡作なんだろうな。普段萌えゲーしか触れてない輩はちょっといいだけのシナリオで平然と神呼ばわりするからなぁ…」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

…というのが、プレイする前の私の心中です。
夜明けな、FAはやりましたが両方とも絵がいいだけの凡作(FAはそれ以下)という印象ですし、榊原拓に関してもべっかんこうがいるからどうにかなってる程度のライターという印象しかありませんでした。

で、実際にプレイしてどうだったかといえば…

プレイする前
(最初に書いた奴)
  ↓
序盤を終えた後の感想
「八月で娼婦とか思い切ったなぁ。なかなかつかみはいいけれど、どうせ舞台とかはインガノック辺りからでも引っ張ってきたんだろ。日常は人によってはそれなりかけるもんだし、所詮は榊原拓だからどうせラストになればぼろを出す」
  ↓
1章を終えた後の感想
「んーまぁまぁ。つか微妙に慣れ合ってないか?」
  ↓
2章を終えた後の感想
「うわ…テンプレートなヤンデレ…。めっちゃスキップしてぇ…。やっぱこのゲーム糞だわ」
  ↓
3章を終えた後の感想
「…え?…………ちょっとおもしろかった気がするけど…いや気のせいだな」
  ↓
4章を終えた後の感想
「………いや、いやいやちょっとどころじゃなく面白くね?」
  ↓
5章を終えた後の感想
「馬鹿なのは俺だったか」

ほんと、エロゲ3桁近くやってるからって「八月が名作を出すような会社じゃい」とか何を分かった気になってたんでしょうね…。これだからエロゲはやめられない。


舞台設定や雰囲気でいえば、序章がピーク。物語としての面白さは3章で一気に加速しました。山場は4章でしょうが、5章も嫌いではないです。
5章は世界系としてはありがちな展開ではありましたが、そのありがちな展開を丁寧に書き、説得力のあるものにしてみせたという意味では5章もかなりいいシナリオだと思います。
特に主人公の「世界の為だから仕方ない」という諦めモードから「恋人を守るんだ!」という熱血モードへの心の動きを丁寧に書いていたところは印象的でした。こういう丁寧な描写はそれなりに力量あるライターしかできないんですが、このライターにそんな力量あったんですね…。
あと、5章でのジークによる聖女の使い方は正直いって度肝を抜かれました。いろんな人たちの正体とかバレバレだったこのゲームにおいて唯一、びっくりした場面でしたね。


あと舞台が移り変わったのも印象的でした。
普通、学園物なら大抵を学園と寮の内部で済ましてしまうようにエロゲで物語の舞台が動くことはありません。
シナリオの終盤になって危機の解決の為に移動することはあっても、大抵は旅行のようなもので主人公の行動の拠点は一定の場所です。
これは、背景をかく手間を省くというのもあるでしょうが、そもそもシナリオを描くうちにライターの考えの幅が縮んでしまうというのも大きいと思います。
一度舞台を決めてしまうとそこでどうにかしようというのがまず最初になってしまう訳です。
で、今作ですが、攻略対象キャラに王女や聖女がいるので明らかなように、主人公の行動の拠点が章毎にどんどん変わっていきます。
簡単なようでなかなかすごいことだと思います。



何よりも最終的には筋のしっかりしたキャラばかりだったのが大きいと思います。
敵役も含めて、ほぼすべてのキャラに好感を持てました。
「最終的には」と書きましたが、シナリオ中でキャラが成長するのが結構上手くかけており(特に4章)、5章では割と穴がないと思っていた主人公が成長するのが印象的でしたね。

巷ではヘタレ化とか言われていますが、「生きる意味を見つけろ」という言葉が物語を通じて長くでてくるように物語の根低にあるのはカイムの成長だったと思います。
その成長を描く上であのての描写は必要でしょうし、その過程を丁寧に書いていたという印象しか私にはありません。描写が丁寧っていってもオルタのいっそうざくなるぐらいの丁寧さに比べれば全然ましな部類です。


主人公の成長といえば、その場その場で済ませてしまいがちな私にはこの言葉が心に刺さりました。

>「多くの人間が、今、自分の死を目前に生きている」
>「戦場に立つ者も、そうでないものもだ」
>「そんな中、お前は自分の行動も決められない」
>「……」
>「理想でも、理屈でも実利でも感情でも優先するものなど何でもいい」
>「全てを放棄してもいいだろう」
>「だが、選択を放棄するのは気に入らないな」
>「時には理想、時には理屈、時には感情……」
>「コロコロと主張を変え、それなりの正論を吐きながら、生きていく」
>「お前は頭がいいし、発言や判断も妥当な事が多い」
>「だから、誰もお前の行動を責めないだろう」
>「だが、それだけだ」
>「中身がない」


あくまで印象ですが、
2章の主人公は理想に生きていました。
あるべき姿をエリスに押し付け見事に失敗しました。
3章の主人公は感情に生きていました。
必死に理想にいきようとするイレーヌに対し、「ラヴィリアのことも考えてやれ」
4章の主人公は理屈に生きていました。
リシアを言葉責めしてましたね

狙ってやったのでしょうか…?まさかね…。



作品そのものは90点前後ですが、八月から出たという驚きも含めて100点とさせてもらいます。