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myself6さんのDEARDROPSの長文感想

ユーザー
myself6
ゲーム
DEARDROPS
ブランド
OVERDRIVE
得点
81
参照数
973

一言コメント

こんにゃく、星メモなどにならんで優良日常ゲーのトップクラスに君臨しそうな作品。というか、私の中では君臨して三本柱になりました。  青春物の王道を完全に突っ走って最後微妙にえ?って方向にそれますがそれ以外はほぼ完璧。  普段は大人なのに根は負けず嫌いな主人公を始め、キャラが非常に生き生きとしていて日常での掛け合いがほんとに楽しいです。  あと、劣化キラ☆キラとか言ってた人達は絶対に信用しちゃいけません。長文でも触れてますが雰囲気がまるで違います。作品の雰囲気が全然違って、もはやキャラゲーとシナリオゲーを比べてるようなものなので「へー」って感じで聞き流すのがすごくおすすめです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●キラ☆キラと比べるのは流石に無理
眠くなるような見当違いの横槍はやめましょう。

そもそも雰囲気が違いすぎるんですよね。
キラ☆キラは瀬戸口らしい陰鬱とした世界観が基調にあります。
あー生きてるの辛いーでも死にたくはないーと冗談交じりに言いだしそうな感じの薄暗い世界の中で光る綺麗なものを表現してみましたーって感じ

それに対し、この作品は主人公が落ち込んだーとか言ってますが、まるで重みがありません。
これぞまさに青春!って感じの希望にあふれた世界観でちょっと重い設定を付けようとして失敗している作品です。
しかし、失敗しているところがむしろプラスに働いているのがこれの面白いところでもあります。

なんにせよ、両方プレイすれば誰だってすぐにわかることでしょうが、面白いぐらいに雰囲気も目指す方向も正反対です。
片やあいかわらず重いシナリオゲー、片や結果として王道青春を完全に再現したキャラゲー。
この二つのタイプのゲームを同じ評価基準で比べようとしてる可哀そうな人なら皆さんも見たと思います。ここに大量に居ますが痛々しいので追い打ちはかけないであげましょう
一つだけ言えば、いつみてもこの手のは気持ち悪いです。

唯一キラ☆キラと似たような空気が芽生えたのが権田の過去のあたりでしょうか
滅茶苦茶あっさり片付きましたけれど…
よく描写不足と言われるのはここを指していってると思われます


<<胸糞の悪い話題はこれぐらいにして…>>

●キャラが生きてる
基本的に私がキャラゲーを褒めるときは一点に尽きます。すなわちキャラが生きてるかどうか。
で、大体キャラが生きてるというときは①2面性をもつ②テンプレじゃないの二つを満たしているときです。
それさえあれば、多少「あれ?」と思うところはあっても”多少なら”流してしまいます。

このゲームもキャラが生きているという割にはいささか綺麗すぎるキャラ達です。
悪意を持って突っ走るキャラなんてほとんど存在しませんし、いたのもあっさり改心してました(あれは確かに描写不足と言われても仕方ない)
これは好みもあるのですが、無駄に陰鬱なのよりかは多少(あくまで多少ですが!!)お花畑の方が好きなのでこれについても許容範囲内でした。
あと、テーマが王道青春サクセスストーリーなのでその雰囲気に合っていたから許せたというのもあります。

残りは上で上げた二点について
①2面性がある
このゲームは特にこれが顕著でしたね

主人公がバンドを始める経緯が「馬鹿にされてむかついたから」なんて非常に子供っぽ理由です。
これでいて、バイオリンでは世界レベルで活躍していて物腰も穏やか。
一見すると人格破綻者にも見えなくもないですが、世界レベルで活躍するのは丸く収まるような人間には決してできません。
自分より上手い奴をみて「悔しい」と思う、その子供っぽい心も主人公をさらなる成長へと導く原動力になっていたと思います。
しかし、流石にいい大人なのでそれなりに穏やかな物腰も身についてるわけです。自分が悪いことは多少理不尽な扱いを受けても流せるぐらいに大人です。
そういう面では非常に大人なんですが、元の子供っぽいところは残っているので音楽で馬鹿にされると…。

という風に整合性のとれる2面性―――完全な人間になりきれない弱い面も持った人間を、弱い面を強調しすぎず強い面を神聖視もせず、あくまで”二面性”として描けてたところが非常に好印象でした。


②テンプレじゃない
何度も言ってきましたが、「べ、べつに」は飽きた。

●いや、正直曲はいいよ
最初の何曲かはなんじゃこりゃと思いましたが、「Anytime,anywhere」「Noisyスイートホーム」「No music,no future」などは曲単体できいてもかなり楽しめます。
それでいて、曲の使い方はこの上なく上手いです。efも演出上手いとか言われてますがそんなん余裕で凌駕しています。

流石にバンドが主題なだけあって曲が流れ出すとオードリードになり何枚もCGが出てきます。
で、これのいいところは、サビのところでは熱くなるような文章を入れてくれますし、曲の終わりと同じぐらにオートリードも終わります。
もっと簡単にいえば、曲と文章のシンクロ率が高いんです。それも半端じゃないほどに。

普通にゲームをしてていい場面でいいBGMが流れるだけでも感情はかなり揺さぶれますが、曲の良さ+文章との一体感+演奏の臨場感で感動が何倍にも高まります。
燃えましたねー。やってることはただ曲を弾いてるだけなのに!
憎い演出でした。この演出だけで+10点の価値はあったかもしれません。


●りほ√の最後、主人公はバイオリンから逃げてた…か?
もうトラウマも克服できたように思えたのですが…。
どうもあの展開は納得できませんでした。

●でも、100点の価値はないよ
ちょっと、キラ☆キラとの比較で点が落とされたように私は感じたので高めに付けました。
そのうち戻しますが、まともにつけても90ぐらいの価値はあると思います。