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myself6さんの素晴らしき日々 ~不連続存在~の長文感想

ユーザー
myself6
ゲーム
素晴らしき日々 ~不連続存在~
ブランド
ケロQ
得点
70
参照数
2405

一言コメント

酷い部分もいい部分もある作品です。俺翼とは似てるように見えて全く似てませんから注意が必要。GiveUp率の低さに少し驚き。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず音楽は驚くほどいいです。
ケロQの本気どころか、サーカスとかに比べても引けを取らないBGMばかり。
OPテーマも爽やかな感じの名曲だと思っています。


文章はいいっちゃいいのですが、不満がいろいろあります。



すがぢのいつものことですが、無駄に哲学を語りたがる悪癖は今回も色濃く出ていました。
といっても、これは人によっては美点になるでしょう。
というか「人よ、幸福たれ」のあたりで「あーはいはい」とかいってスキップするほうが特殊なのかもしれません。
ただ、私は哲学に対して身構えてしまう悪癖があって、言われてる内容が目を見張るほど素晴らしいことなら構わないのですが、
「もう思春期でもないだろうにいい年した大人が何を今さら…」と思える程度の物だとどーしても低評価をつけてしまいます。
ただ「このライターほんとに成人してるの?!」と思える作品が多い中ではまだまともだったと思います。実際そこらの哲学wを評価する声もおおいですし。




いじめの描写はほんと濃いです。このライターのいじめの文章を読んでいるといじめられていたというより義憤に駆られて書いてるんじゃないかなって気がします。
いじめている側の悪意も濃いですが、それに対する憎悪が読んでてひしひしと感じられます。
正直いい加減にしてくれと思いました。いじめ論議はもう読めたものじゃありません。
というか結構やりすぎなんですよ。いじめそのものもやりすぎですが、なによりそれに対する主人公サイドの反応のうざいことうざいこと…。
このライターがぶっ壊しにするのは大抵いじめ関連ですねー。

例えばこんな場面があります。

>クラスメイトが自殺し、学校がざわめきたっている時に。

>由岐「なんでそんなに楽しそうなの?」
>女子校生「わ、私たちははしゃいでなんかっ」
>由岐「ショックですか・・・・・・ふーん」
>美羽「ま、待って、うん・・・・・・そ、そろそろ先生も来るから」
>由岐「私にはやたら目がうれしそうに笑っていたように見えたけどな・・・」
>女子校生「そんな・・・・・・、そんな・・・・・・」
>美羽「あ・・・・・・、な、なかないで・・・・・・」
>由岐「図星を言われてばつが悪いのでないてるのかしら?」
>鏡「由岐っっっ」
>鏡「そんなことを言ってはだめよ・・・・・・彼女たちにちゃんと謝って」
>由岐「言いすぎた・・・・ごめんっ・・・・・・なんか、私も少し感情が高ぶってたのかも・・・・・・」
>女子校生「あ、うん・・・・・・」
>女子校生「こっちこそ・・・・・・そうだよね、水上さんは自殺したクラスメイトと仲がよかったもんね・・・・・・」
>由岐「あはは・・・・・・」
>だから別に仲良くないって!
>なんて心の中で悪態をつきながら、私は笑いながら席に着く。
>笑顔は人間関係の必需品だ。

すでに、笑顔とか謝ってどうこうとかで済まされない領域の暴言吐きまくってますw
普通なら明日からいじめられるのは由岐でしょう。ばいばい、由岐。でも、これは自業自得かもね。
というか正直、こんなに言われておいてファビョらないだけでもこの女子校生がどれだけ人間的にできてるか分かりそうなものなのに、この先も由岐は見えない敵と戦います。
ちなみに、この由岐という人物はコミニュケーション能力が著しく高いという設定です。
実際は、設定というよりもっと強いものなのですがとりあえずそこ辺りはスルー。
で、「どこの社会不適合者だ」と言わんばかりのこの発言。笑うしかありません。

あと、個人的に義憤に駆られてなんか書いてる人って心底自分正義に浸ってて気持ち悪いんですよ…。
まぁ、義憤かどうかは私の勝手な妄想なのですがw
そこ辺りのことは、装甲悪鬼村正が語ってましたね。善悪相殺。
あの部分はくどいので嫌いでしたが、主義主張自体はよかったです。これの何倍も…。





惹きつける力があまりにもない!
なんといっても、一章は頭の湧いたお人形劇で、二章・三章は謎が隠されたまま電波だったりいじめだったりのオンパレードです。

一章は怖いほどキャラが死んでいます。
ほんとに、萌える言動を並べただけって感じで、無機質な言葉が飛び交う不思議空間を形成しています。
よく、キャラゲーの素人が書いたーって文章で「うわ、きも」と思うことがそういうのともまた違います。これは「きもい」ではなく「怖い」。
冒頭の部分はつまらないと聞いていましたしあとあと納得のいく説明もありますが、下手したらあそこで投げていたでしょう。

三章は電波です。
よくこれを指して、俺翼と似ているという感想を見かけますが…キモオタと基地外は流石に別物だと思います。
むしろ、この主人公はカオスヘッドに似ている気がしますねー。フヒヒwww

この三章までは所々でスキップ使わないとつらいかもしれません。一回呼んだと思ったらスキップしたほうがいいでしょう。
同じ電波を何回も繰り返されます。





あと、推理物なのかサスペンスなのか今一煮え切らない。
確かに、サスペンスのところも後々から一応筋の通った説明が得られるんですが…………正直、幻覚とかを幻覚で済ませるのって嫌い…。
「ひぐらし」ほどではありませんが、あれに近い理不尽感がありますね。
他にもあるんですが、ネタばれになりそうなので、最後に書きます。




さて、私にとっては一番大切な「こ れ と 俺 翼 は 違 う」という話です。
というのも、これをプレイしたきっかけは俺翼と似ているという感想を数多く見かけたことでしたからこの部分の占めるウェイトは大きいです。
実際、先程から違う点をいくらかあげてきたと思います。

まず、俺翼はエンターテインメントに徹した作品でした。ライターの主義主張がほとんど見られない為、変に阻害されることもなく作品の雰囲気を楽しめます。
それと比べてこれはすがぢ一色。主義主張が邪魔をする上に、そもそも作品の空気の陰鬱具合がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

俺翼の人間像は基本的に優しいです。いじめとかの描写も薄く、不良の癖にバカな漫才しかしてなかったりといった調子です。
逆にこっちは、いじめが滅茶苦茶なほどに濃く、それ以前に悪いキャラを本気で憎悪してるのか救済的なものが一切ありません。

基地外とキモオタは違います。それに、カルラの基地外は陽の方向でもうネタばれとか終わっているので楽しんで読めますが、こっちのは陰湿なうえに謎が大量に残っててかけらも楽しめません。

というか、根本的に違うんですよ。俺翼はアクのあるキャラだったり、「あったらいいな」というリアリティだったりと言った雰囲気を味わうゲームで、これは陰鬱とした空気に耐えて最後に楽しむってゲームです。
確かに、「いじめ」とか「基地外」とか「人を選ぶ」とかそういったキーワードでみれば近いんですが…プレイしてみればほんとに似てません。








さて、散々酷評しましたが、中盤以降の流れは圧巻です。
転もなかなかのものがあります。
ほんとに「ジグゾーパズルのピースが揃っていくように」筋の通った説明がなされていきます。もっともされればされるほど卑怯という感情が増すのですが。
論理的にはそれでいいけど、感情が納得できないって感じです。

が、なにより結!
音楽がいいのもあるんですが、それを生かしきった文章力も素晴らしいと思いました。
悠木のラストの頑張りは典型的ではあるにせよ燃えました。
実際、そこに持っていくのが上手かった。このころには、良くも悪くも作品に釘付けにされてましたから。



以下、ネタばれ。





































多重人格の癖に、お互いを見えるのは流石に卑怯だろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
ずっと、皆守と由岐のペアーかと思ってました。