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myself6さんのnarcissu 3rd -Die Dritte Welt-の長文感想

ユーザー
myself6
ゲーム
narcissu 3rd -Die Dritte Welt-
ブランド
ステージ☆なな
得点
85
参照数
505

一言コメント

2章と絵はもうすこし頑張ってほしかった

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

絵はもうTopページを見たときからわかっていたのですが、顔以外は結構上手く顔が散々でした…。
しかし、元々ナルキッソス自体が絵や音楽の排除というコンセプトで作られた作品であり、2ndからはそのコンセプトは消えてしまっているものの、やはり普通の作品よりは絵の占める要素が少なくなっていますので、あまり気にはなりません。

音楽・BGMともに素晴らしいものばかりですが、歌だけはどうも好きになれませんでした

この作品をプレイして感じたことは章ごとの区切りがほかに類を見ないほど大きいことでしょうか。
それぞれのライターさんが存分に個性を発揮した結果、同じ会社の別作品ってほどに違う者になっています。一口で四度おいしいとおもうかバラバラとみるかは人それぞれでしょうが、私は前者の方でした。
全員が人生観を語るのかな、と思っていましたがそれも章によっては希薄です。メッセージ性でいえば1、2章と3,4章の間にすこし溝があるように感じましたねー。

なので、全般的な事はこれぐらいにして個別の章に移りたいと思います。

2章「Ci-シーラスの高さへ-」
まず、最初5分プレイしてもっとも期待させられたのがこの章でした。
なんといっても、ものっっっっっっっっっっすごくキャラが魅力的です。そのキャラの印象付けもかなり高いレベルで成功していて、カズアキとチサトがどんな物語を繰り広げてくれるのか楽しみでなりませんでした。
そして、終わった時もっとも残念な気持ちになったのもこの章でしたww
ここからは少し愚痴っぽくなりますが…
ギャグを多用する手法はカズアキの話法で説明していた通り「ギャグを入れることで相手を飽きさせないようにする作者なりの気遣い」なのでしょう。
しかし、あくまで退屈させないための気配りなのに逆にギャグで読者を退屈させてしまっているのは一体どういう了見なのでしょうか。もちろん、重苦しい中に少しの笑いがあれば救いになりますが、ずっとギャグで通されると上手い下手云々の前にまずイラついてきます。
そもそもナルキなんてやる人の大半はギャグの面白さといったエンターテインメントよりも人生観だったりもしくはドキュメンタリー的なエンターテインメントだったりを求めている人が多いと思うんですよ。そこでギャグを連発されたらそりゃ飽きるわ…。もしこれが俺翼だったら私は称賛していたかもしれませんし、お気に入りになっていたかもしれません。それなりの出来だったとは思います。しかし、そもそもナルキには合わなかったかな、と。

とまぁ、語り口がぼろぼろだったわけですが、肝心のシリアスはと言えばこれまた酷い出来でした。
まずもって私は物語の核心やクライマックスより、その背景だったりそれまでどれだけ感情移入させられたかの方が大切だと考えています。私は、というほど特殊な考え方でもないでしょうがww
ですからチサトの変わっていく様は確かに上手く書かれていたなと思っても、肝心の「なぜ変わりたいと思ったか?」の踏み込みがあまりにも浅いため全然乗り気になれませんでした。
たとえるなら唐突に告白シーンになって「私昔から好きだったの」と言われている気分です。それで喜ぶ奴がいるかと!いますねと!しかし、私はあまり好きじゃないのです。

1章「死神の花嫁」
何と言いますか…なにも伝わってきませんでした。
ごぉはひまわりの明日香(?)√のように流れ無視でとりあえず主張をぶつけてくるというかけらも洗練されていない感じが結構好きだったのですが、流石にその段階から卒業してしまったみたいです。
今回の話も上手くまとまっているとは思うのですが、メッセージの盛り込みが足りずエンターテインメントに終始してしまったかなといった様相ですねー。
まぁまぁ面白くはあったのですがあまり印象に残らない。
といっても、これは他の熟練ライターと比べられてるからでそれなりに上手いことは上手いです。

4章「小さなイリス」
滅茶苦茶にナルキッソス関係ないやんと思わなくもないですが、全体的に淡白な感じでさっさと終わってしまった印象です。
考察とかすればそれなりに面白いのでしょう。
もっとも、片岡ともの文章はエロゲ―のシナリオライターの中でも1,2を争うほど面白いとおもいますが、所々にほんのわずかに匂ってくる主人公格でないキャラ達を妙に軽視した感じがあまり好きじゃないのでそんなに読む気になれなかったりします。

おまけはびっくりしたけどそれだけって感じでした。
というかまず最初に疑ってしまった時点で負けでしたwwいやほら物書きって政治家と同じほど嘘をつく職業ですしww

3章「メサイヤ」
早狩武志の文章は群青を途中リタイヤしており、他に知っているといえば怒りの日騒動の時のコメントぐらいです。
というわけで、始めた時はかけらも期待していませんでした。
文体は群青と同じでハードボイルドな感じでしたが受ける印象がまるで違いました。
まぁこれは、私自身が戦争物の重苦しい雰囲気とか武器の解説だったりとかいった要素が嫌いだっただけなのでしょうが、今作はそう言った要素がなく(戦争してるわけではないので当然ですがw)素直にハードボイルドな友情物語として楽しめました。
病人なのですが、重苦しくなることはあまりなくむしろ病人だからといった妙なすがすがしい雰囲気が漂っていたのも好印象。

で、そのまま終わるかなと思いきや終盤でいっきにメッセージ性を強めてきて「余命3ヵ月と3年と30年に違いなんてあるのかよ」という言葉が胸に響きました。正直3か月はちょっと短い気もしますがww

序盤のキャラ付けや雰囲気といった日常的な要素から終盤のメッセージに持っていく構成力までほぼ完璧なシナリオだったと思います。書いてて、もう一回プレイしたくなってきた。


というわけで、点数を付けるなら
1章 76
2章 72
3章 90
4章 76
絵  63
音楽 80
といったところでしょうか。平均をとっても上の得点になりませんがそこあたりは触れないでくださいww