作中で湊影明のことを悪鬼と称していますが、彼はどれかといえば凡人だったような気がします。
というわけで、最後の選択肢で「殺す」を選ぶのがこのゲームのTrueEndで、「殺さない」→「選んだ道を選ぶ」はHappyEndと勝手にしましょう。
ここでは、なぜTrueとHappyなのかをだらだら書いていくことにします。
そもそも、このゲーム中の「悪鬼」を称するなら「悪鬼という名の英雄」といった表現が一番ふさわしいかもしれません。
「悪でありながら正義漢を持ち、正義にできない方法で『悪と立ち向かう』」
これが英雄でなくてなんだというのでしょう?……悪鬼ですね。
この手のやつは悪とは似ても似つかないところにいます。
もちろん、「『自分の都合で』人を殺すのは悪だ」という湊斗影明の主張も言いたいなら言わせておけばいいでしょうってぐらいの理はあります。
簡潔にいえば、この「悪鬼」は湊斗影明の定義する「悪鬼」であり、雪車町一蔵とあと世間一般の定義する「英雄」です。(ちなみに今は「悪鬼」の話をしているのであって湊斗影明の話はしていないのであしからず。)
湊斗影明と雪車町一蔵、世間一般がこぞって定義する「悪鬼」。つまりは雪車町や童心坊のような人間とはかけ離れています。
糞面倒なジャンルですが、ある以上は仕方ありません。いい加減新しい日本語作ってほしいところです。アンチヒーローとかがいい表現でしょうか?……日本語……?
その証拠に、湊斗影明を唾棄すべき存在と思えたでしょうか?
思ったんなら普通GiveUpすると思います。このGiveUp率や感想を見る限り、湊斗影明は「アンチヒーロー」として英雄視されていると思えます。というか悪鬼=英雄なのです。気にしたら負けです。ぶっちゃけ悪鬼だのどうこう言ってるのは、ゲーム中のキャラ達だけです。
ここまで話せば、「殺す」と「殺さない」→「逃げる」と「殺さない」→「選んだ道を選ぶ」の3つがあるのに、2つしか考慮していないかわかると思います。
英雄、悪鬼、凡人という分類ではなく、アンチヒーロー、凡人の分類なのですから必要なのは2つだけなのです。
事実、「殺さない」→「逃げる」はバッドエンドですし。というかこれは英雄としても凡人としても悪鬼としても無理がある行動です。
さて、長々とアンチヒーローについて語ってきましたが、無駄話はやめて本題に入りたいと思います。
湊斗影明が凡人だというのは…散々述べられていた気もしますが、次の2つが一番強く述べられていたと思います。
殺すところ、村正とヤったところと、雪車町を追う場面です。
殺すところは何度も言われている通り、「泣きながら」殺します。
悪党になれないことはここから明らかです。
村正とヤった所は普通に書かれています。
>嗜虐の喜び
>これを良しとしてしまう、卑劣な人間なのだ。
どちらかと言うと悪党ですね。
雪車町を追う場面ではこんな書かれ方をしています。
愛する女のため、湊斗影明は人々に一切の配慮をしません。
>それがどうした。
>こっちは急ぎのようがあるのだ!
それはかつて斬っていった人々と同じ行動なのですが、それを象徴するようにフラッシュバックしますが、湊斗影明はただひたすらに一般人に迷惑をかけ続けます。
正直いままでの湊斗さんとは似ても似つかぬ行動です。
酒に泥酔した時ですら敬語を保っていたのに……!
しかし、そもそも今まで湊斗さんは失う物がありませんでした。というか自分で奪いまくっていってばかりで他人に自分の物が失わされるというシュチュエーションはこれが最初です。
>「自分が苦しい時、他人に何かをできる事は尊いことです」
あの子供には出来ましたが、湊斗さんにはそれができません。
だから、HappyEndのラストで出てくるのはあの子供なのでしょう。あれこそが、平和の使者であり、英雄です。
……まぁ、そんなことどうでもいいのですが。
しかし、アンチヒーローの物語にヒーローは必須です。
アンチヒーローはそもそも、ヒーローができないことをフォローしたりヒーローを成長させたりする存在ですからヒーローがいなければ木偶の坊でしょう。
それにしてはヒーローが出てくるのが遅かったですね。
途中でヒーローを殺しまくっていたせいなのですが。
そもそもあの選択肢を選んだ後で湊斗さんは初めてアンチヒーローとして書かれたのかもしれません。
最後に書かれる「装甲悪鬼村正 『始』」の文字もそれを裏付けます。
この時を持ってはじめて、湊斗影明は悪鬼になったのです。
さて、TrueEndでは、湊斗影明はすべてから解放されます。
実際、愛する女を失っているので、解放というか喪失というか微妙なところですが。
彼はこの後どうするでしょう?
どっかにいって、壺の店を開くのでしょうか?
寂れた店でカビ臭い空気を吸いながら掃除をするのがすごくお似合いな人です。売れないでしょうが、きっと細々とやっていくでしょう。
近所の子供たちに暗闇星人として退治されるかもしれません。それをきっかけに、子供たちにいろいろ教えたり、一緒に遊んだりするかもしれません。親切ですし、いろんな話題の引き出しを持った人ですから。
レーサークルスを開発したりするのはどうでしょう?
会社勤めに復帰するのはどうでしょう?
いろいろ夢がありますが、なんとなくそこにある静かで、ゆったりとした余生が見える気がします。そして、穏やかに死んで行くでしょう。
では、HappyEndでは?
先程も触れましたが、HappyEndではこのようなやり取りがあります。
>「……だったら。でめぇはあの時、どうして泣いた?」
>「泣いてなどいない。だが、もし、泣いたように見えたなら……」
>「……」
>「きっと、笑っていたのだろうよ。涙がこぼれるほど、愉しくて」
もう痛々しいほど真っ赤なウソです。
きっと、この後も湊斗影明はこのように自分を偽りながら生きていくのでしょう。
凡人にすぎないのに、自分を騙し他人を騙しただひたすら悪鬼と念じて生きていく。
地味に悲しい結末ですよね。もしかしたら、HappyEndと言えないかもしれません。HeroEndとかどうでしょう?
なんにせよ、それを裏付けるようにこんな行動をします。
>俺の口が苦く歪んで――ふと、気付く。
>違う。
>こうでは、ないな。
>戦いに臨む悪鬼の貌は、こうではない。
>表情は、こうだ。
>こう――
繰り返しになりますが、ここから凡人か英雄悪鬼かも区別のつかない幼い話ではない物語。
自分で自分を悪鬼と定義した湊斗影明の装甲悪鬼村正が始まります。
てか、私がいままでやってたゲームはなんなんでしょうねw装甲凡人影明でしょうかw