序盤◎中盤〇終盤△
ヤマト奪還までで終わわせておけば名作級だったかもしれない作品。
序盤は時間を忘れてプレイするだけの勢い、面白さがあった。
圧勝しか許されないデコポンポ軍との戦闘、勝てないと分かっていながらミカヅチへ立ち向かう覚悟、アンジュ対クオン、アンジュに発破をかけるハク、ライコウとの読み合い。
序盤の勢いがやや落ち着いたのは、クオンが復帰したあたりから。
後述するが、そもそもクオンはハクオロとユズハの娘という最も重要なキャラクターでありながら心情的にもシナリオ上での役回り的にも掘り下げがほとんどされていない。
サブヒロインのエピソードを交えながら周辺圀との同盟を結び、ついには見事ヤマト奪還。
この時点で真の黒幕になりうる人物は、まぁウォシスと分かるわけだが・・・さぁここからの展開があまりに酷い。
ここから10時間ほどかけてウォシスについての情報が明かされ、戦闘は冠童と再三に渡って繰り広げられるのだが、これがまぁつまらない。
前情報のないキャラクターの生い立ちがいきなり明かされても何も響かないし、冠童との戦闘はただただ作業だった。
そして最終盤にトゥスクル勢を織り交ぜて話の締めに向かうのだが、ここでメインスポットが当てられるのがクオン。
アンジュとクオン。パッケージを見ても分かる通り、二人の白皇はこの二人とオシュトル(ハク)の物語だと予想がつくが、クオンはこの物語において果たして必要だったのか。
ハクはオシュトルの意思を受け継ぎ、その苦悩、葛藤、成長は序盤~中盤でしっかりと描かれている。
アンジュもこの作品屈指の名シーンであるクオンとの殴り合いなどを経て精神的な成長が描かれている。
じゃあクオンは?
トゥスクル皇女である事は物語上意味はあったのか?なにか葛藤が描かれたのか?いや特に描かれていない。
重要な役割を持ちながらも、エンナカムイで復帰してからただついてきていただけである。
そんなキャラクターがいきなり終盤も終盤になってウィツァルネミテアだのトゥスクル皇女だの大仰なお話になっても、反応に困る。何も響いてこない。
そもそも、クオンはトゥスクル皇女としてアンジュと対の存在として、物語中盤~終盤に話に絡んでくるのだと予想していた。早々にパーティ復帰したのは、やはりメインヒロインだから外せないという大人の事情だろうか。『我がヤマトを攻め落とす』というCMで流れた象徴的な台詞は実際のところ序盤も序盤に発せられた一言で特に意味もなかった。ヤマトとトゥスクルの戦争すら起きない。
クオン、トゥスクル、ウィツァルネミテア、オンヴィタイカヤン、アブ=カムゥ。
初代うたわれるものの要素を無理に入れた結果、物語の構成が歪なものになってしまったのではないか。
あと気になった点がもう一つ。
終盤の会話でシーンごとにすべてのキャラクターが一言ずつしゃべるのはスキップしたくなるほど萎えた。
ノスリ、オウギ、アトゥイ、ヤクトワルト、ほかにも考えてみればハク以外のヒロインキャラ全員がそうだが、毎回同じような事しか言っていない。
初代と違って男キャラとヒロイン勢共にキャラクター性が乏しいのもあって、意味のない発言や会話を聞くのはしんどかった。
総評
序盤~中盤の展開は名作足りうる要素があっただけに、終盤の失速具合が残念な作品だった。
『偽りの仮面』から受け継がれたものが非常に良かった反面『うたわれるもの』から受け継いだ部分についてはもったいない使い方をしてしまった。
評価の高いBGMや挿入歌も物語が進むにつれ乱用が目立ち、ここぞというシーンの一枚絵がほとんどなかったり、絵とBGMで彩るノベルゲームという点から見ても物足りなかった。