転と結が本当に心の底から合わなかった… キャラクターは魅力的で大好き。
総評
全体を通して、完成度は高いが自身に響くシナリオがあるかと言われたら…だし、本当に転と結がとてつもなく合わなかった。 それでもキャラクターが魅力的で局所的にとても刺さる部分があってとても評価し難い作品。
それと序盤は伏線が丁寧ではあるのだがあまりにもギャグが多すぎてなんとも…といった感じ。
それとノベルゲームに対して美術というのは私には相性が悪いように思えてしまった。文学の引用ならまだ理解しやすいが、美術作品の技法などを懇切丁寧に説明されても読むのが難しい。
完成度に関しては凄いなあと思ってしまうし、シナリオとして好きだと思う部分もあるにはあるのだが、ラストがあまりにも苦手すぎてただただ苦しかったので高評価は出来ずにこの点数。
ちなみに、局所的に刺さった部分は川内野優美と長山香奈。個別の部分で詳しく語るけどすごくすごく好きでした。
ボーカル曲の素晴らしさは他のケロ枕作品と変わらず。どれもとても好きだったけれど天球の下の奇蹟と在りし日のためにが一番好きだったかも。
Ⅲ Pica Pica 真琴ルート
人と人との関係性が複雑すぎて読んでて頭がこんがらがるけど、真琴の願いや愛はぼやけることなくはっきりと伝わってきて大好き。
禀との関係も好きだったし、一番最初に攻略できるふたりの関係としてすごく良い。
Ⅲ Olympia 稟ルート
序盤は稟ちゃんエロいな〜しか考えられなかったのでここからどう展開していくのか不安だったけれど、しっかり伏線も回収してくれて面白かった。
個別だけどあくまで序章だなあと思わされるシナリオだった。
稟の周りの人間が優しい棘だらけで好きでした。
Ⅲ ZYPRESSEN/Marchen 里奈(&優美)ルート
特に優美に対してすごく主観的で気持ち悪い感想です、すいません。
今までで一番好きなルート。里奈の美しさと優美の醜さに魅入られた。
引用してくる作品がとても好きで読んでいて楽しかったし、オオカミと赤ずきんに擬えた里奈と優美の関係性がとても好き。
ZYPRESSENをやるまでは優美のことが苦手だったけれど、優美の女の子が好きで、女の子に向ける感情が醜悪でありながらなによりも美しい女の子を愛す精神に心の底からわたしと一緒だと思ってしまったし、やっぱりそんなところが嫌いで好きです。
女を好きになる女には特有の暴力衝動、破滅願望、男性嫌悪と共に自分が一番男に近しい感情を抱いているということがどこかにあると信じている。その理由は誰よりも自分がそうであるからだし、その点で川内野優美はわたしととても似ていて、愛憎としか言えない感情を抱いている。
それと同時に、優美のことが好きだからこそ草薙直哉のことを好きになれなかった。優美に共感できるからこそ氷川里奈の心を奪っていった博愛主義者のように思える、直哉のことを憎いと思ってしまって。優美はきっとそう思っても最終的には割り切れるのだろうが、わたしには出来なかった。
でも、そんな直哉に振り回された優美、それと稟の健気さが好きだなあと思う。
「人を愛するってことは、誰かを傷つける事だってある。だって、それほど愛というのは大きい感情だもの…」
優美が好きだからこそ里奈と直哉に幸せになってほしくなくて、優美が嫌いだからこそ里奈と優美に幸せになってほしくなかったので優美×里奈、直哉×里奈のどちらでも結末を迎えることが嫌でたまらなかった。
Marchenの方が幸せだと思ってしまうのはきっと優美に肩入れしてるわたしの願望で我儘なんだと思います。これはメルヘンで、それ以上でも以下でもない。
Ⅲ A Nice Derangement of Epitaphs 雫ルート
真琴、稟、里奈ルートから続く伏線の回収は見事。草薙親子の関係も単純に好きだなあと思いました。
全体的にHシーンの導入はあまり好きではなかったものの雫は可愛い。
伝奇ものとして面白いし、今までのシナリオと雫ルートのテイストの違いに対する違和感は吹や里奈ルートの存在もありあまり感じず単純に楽しめた。
Ⅴ The Happy Prince and Other Tales
物語の転換点に対する衝撃があまりにも大きすぎて、何が起こったのか本当に理解できなかったしこういうやり方はわたしにとって合わないなと思ってしまった。その後の藍ルートへの分岐というか…もあまり好きではない。
ただ長山香奈。彼女だけは本当に好きです。
「世の中の連中。全員幸せそうじゃないですか。何故だと思いますか?やつらには偽物も本物も分からないからです」
もちろん、わたしは本物や偽物が理解できるような人間ではない。長山香奈とは断じて違う。けれど知らない、分からないということの幸せと、知ってしまった、分かってしまったからこその不幸が理解できるからこそ長山香奈のことが好きだなあと思いました。
長山香奈は確かに凡人。だけれど誰よりも凡人たり得ない執念があって、そこが本当に素敵だと思う。
他ルート、特に稟ルートでの長山香奈の攻撃性は大好き。わたしも同じ立ち位置だったら凡人としてそう思うだろうから。ここで行動に移す力強さが長山香奈のなによりの美徳。
「私は、私の芸術を一番愛している」
「私の心が、美を感じたならば、それが絶対です」
そう言い切れる長山香奈がだれよりも格好いい。
Ⅵ
正直、本当にわたしは心臓に響くほどこの物語を受け入れられなくてたまらない。もうそれだけです。心の底から苦しかったけれどその理由は分からない。再プレイはしたくないですがその理由を理解したかったのでサクラノ詩について考えることはやめないと思います。
サクラノ詩と素晴らしき日々のふたつを終えた感想として、やっぱりすかぢ先生の哲学や幸福論が自分自身に合わないなということをひしひしと感じている。
だけど攻略対象の描き方に関しては素晴らしいなあと思う。魅力的に描くのが上手すぎる。
優美と香奈が大好きだけど、藍先生と里奈のこともかなり好きでした!♡