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ms-dos-ojisanさんの夏への方舟Iの長文感想

ユーザー
ms-dos-ojisan
ゲーム
夏への方舟I
ブランド
Argonauts
得点
80
参照数
711

一言コメント

同ブランド前作、前々作とはかなり毛色が違うので注意が必要

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前々作「美娼女学園シリーズ」 & 前作「癒してあげたいシリーズ」のファンだった者です。
オカルト要素と伝奇要素が無いのでストーリー的な面白さのスパイスに少々かける感じがする。
今作の一人目のヒロインの田舎の閉塞感と自らの出自の人間関係にとらわれて親戚から自立できないという状況にどれだけ「可哀想→可愛い→可哀想→可愛い→」のループを感じられるかで良さが変わってくると思う。

1.良ストーリー抜きゲーArgonautsブランドの目玉の一つであるストーリー・舞台設定・背景描写・キャラ設定について

今作ヒロインですが、容姿や体型・やまかぜ嵐先生のデザインは◎でした。
ただ設定上あまり悲しい所が無く、美娼女学園シリーズの1作目ヒロインほどには[可哀想→可愛い]を感じることができなかった。(人生のほぼ半分以上が決められているとは言え裕福な設定なのでそれほど可哀想は感じられなかった)

主人公も夏休みに帰省してきた大学1回生というくらいで特に何かを背負っている…という重い設定があるわけではない。

欲望に流された年上の奇麗なお姉ちゃんと、自分もまた欲望に流されてパコパコやってしまう青年のオハナシ。
本作も前作シリーズや前々作シリーズと同じくシリーズものの1作目ですので、「あれ、これで終わるの ?」 というところで終わってしまうので現時点で今作ヒロインと主人公のすべてが明らかになっているわけではないのですが…

このブランドは低予算を如何に効率的に使って「抜けて面白い」(面白くて抜ける ?)ゲームを作るかに全振りしているので、予算をケチれるところはケチっているのですが、ヒロインの父親はある意味大事な役割をしていると思うので[家の彼女]シリーズのようにシルエットでも表示すべきだったのでは…音声は流石に予算オーバーでしょうが…。

2. 本作の目玉であるHシーンについて

HシーンはアニメーションするHシーンと、従来シリーズ通りアニメーションの無いがヒロインの台詞や独白をバルーン形式で表示するHがある。

Hシーンのアニメーションの出来は素晴らしいけど、その分Hシーンの最中のヒロインの細かい感情の動きが前作や前々作に比べると減ってしまった感じがする。これは今作ヒロインが最初から主人公への欲情255%MAX状態で始まり欲情255%MAX状態で妹バレHで終わるということとも関係しているかもしれない。

個人的にはアニメーション無しのHシーンの方が変則的なプレイが多く抜けた。
前作や前々作シリーズと異なり、プレイヤーにとって話の流れ的にいつHシーンがはじまっていつ終わるかがわかりにくく、抜きどころの予測がつきづらいというのもあった。

全体からすると他社ブランド作品に比べて圧倒的に優れたストーリー性且つ、シコリティの高い抜きゲーではあったものの前作や前々作に比べるとストーリーの謎要素やヒロインへの感情移入度などが低く、Argonautsブランドを1本もやったことがない人には全力でおススメできる作品だが、旧来シリーズ作品群が好きな人にはちょっと注意が必要。

まとめると、圧倒的に抜けてストーリーもそこそこ良いが、
前作(癒してあげたい)や前々作(美娼女学園)や前々前作(家の彼女/妹/恋人)と同じ感じだと思うとちょっと拍子抜ける。

前作(癒してあげたい)や前々作(美娼女学園)や前々前作(家の彼女/妹/恋人)をやっていないなら無条件で買って抜いておくべき。