本当に素晴らしい作品でした。心から身体から、楽しみ、感情移入し、考え、笑い、感動しました。
内容についての詳細は書きません。ただの感想で。
この作品の真価をもっともよく表すのはシナリオとテキスト。この要素についてですが、
たとえば、この作品と、このサイトで75~80点レベルの良作っぽい萌えキャラゲーを同時進行でプレイしてみるとよくわかる(私は偶然そういう形になったが)。
良作キャラゲーのなかに好きなものも結構あるし、その手の作品の良さもわかるし愛着もあるけど…
この作品に戻ってきたとき、「こういうのを本物っていうんだろうな」「これぞプロの仕事だ」という実感がわきあがって抵抗できなかった。エロゲってホント、真のプロいなさすぎるな。色々事情はあるんだろうけど。
レベルが別ジャンルじゃないかってくらい違うのは素人でもよくわかる。
要するに、本物のモノ書き、クリエイターがまじめに良い作品を作ろうとして、実際に優れたのができたってこと。残念だけどこういうケースが減少傾向と感じなくもない昨今、たとえ何年も前の作品でも、よいものを自分なりに厳選して貴重なmoney使っていきたいなっていう思いが強くなった。
ほめてばかりのようだけど、人によってはとくに苦しいかなと思った要素を…
まず、丸戸氏らのほかの作品にもいえることだけど、せまい世界のヒューマンドラマで、すごく面白くはあってもテーマの普遍的な広がりのようなものは追求しないスタイルで、その場限りのお話だ。2Dだけど地に足のついたリアル世界に近い。そのせいかエロシーンへの流れがものすごく自然だけど、結局エロゲーだなという感じに妙に落ち着くのが特徴だ。
それと強調したいのは、保守的で権威的な価値観・世界観がかなり前面にあるということ。主人公は一見破天荒な自由人のようだけど実はステレオタイプな「古典的野郎」だけでできており、なんでもそれで押し切ってしまうキャラだ。権威と戦う話だけれども、当の主人公&ヒロインズが内輪集団至上主義で、昔の長屋話さながらのコテコテぶりが、「うまい」テキストと相まって鼻につく、うっとおしいと感じる場面が多いのも確か。
こうしたあたりはアナクロチックで時代の流れっぽくないので、共感しにくい人も多いんじゃないかな。
しかしそうはいっても、変な「文学」くささのない、我と時間を忘れて面白くて引き込ませる文章とか、構成その他のうまさとか作りこみとかが、あまりにも圧倒的な長所なんです!! これが短所を吹き飛ばすに余りある力を持ってる。
それと、これほどヒロインたちのバラエティーある個性と魅力が最大限に引き出され、活かされてるのって、どれくらいあるんだろう。
また、「卒業感動」があるけど、かのアニメ「エンジェルビーツ」の場面なんかと比べるのもバカバカしいほど…(以下略)。
最後に忘れてならないのは、音楽の良さ。歌(3曲)とBGMいずれも最高レベルかと。パルフェのもよかったけど金とエネルギーのかけ方が違うのかな。
絵は「海巳大好きだー!」。声優さん「海巳の石川乃奈さん名演!」この人もっと出番あればいいのに。
とにかく無条件で面白い、練りこまれたほんもののエンターテイメント作品だから、きっと夏が来るたびに戻りたくなるかな。製作者の皆さんにありがとう、感謝してます。