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motsuさんの収斂の十二月の長文感想

ユーザー
motsu
ゲーム
収斂の十二月
ブランド
talestune
得点
95
参照数
856

一言コメント

「収穫の十二月」最終話。 全てが結末で一つに収斂する。

長文感想

「収穫の十二月」の最終話。


前回、めちゃくちゃになった状況が
柾木が切れることで一応小康状態になった後の状況から
物語はスタートするわけだが…、

ここでの皆の思考と行動が、なんていうか良い。

周りのフォローに回りながら回復と次の準備を考えている柾木
責任を感じる以上、追い払われても「さなえ」に通い続ける耕平
皆が集まる事を探し、柾木と耕平を狼退治に誘う瑞穂
新しい可能性など考えず、「今」に集中する早苗
医者として出産関係のみに専念する真中
迷いが断てた以上、年長者として雪を指導するしろ
そして柾木に執着するからこそ余計に剥きになる雪

その姿が実にこれまで描かれていた人物像と一致する
個人的には

「早苗が落ち込んだら現在の彼女であるもよりのことも考えられず、
 毎回追い払われても愚直に「さなえ」に通う耕平」と

「次に雪に会ったときに決定打を打つために、昔の彼女まで使って
 情報集めと準備を勧めていく柾木」
の違いが印象的だった。

そしてそれらが組み合わさり、収斂して最高の結果を導いていく。

最後の卒業式であのひねくれていた柾木が周りに祝福を受けながら
自分たちの結婚を自慢するのはまさに万感の想いがした。


そしてエピローグで描かれた二人の出会いを読んだ一瞬に
その向こう側に数え切れないほどの美しい物語が浮かんだ気がした。


出会った男と女が惹かれあい、子供が生まれ、育ち、また出会う。
当たり前だがそれから完全に逃れられる人間は居らず、
ほとんどの物語もまたそうである。

だがその美しさとままならなさを
同時にここまで描いた作品はそうそうお目にはかかれない。


全部買ったら5250円と
同人作品としてはとてつもなく高いが、
それに見合った価値がある。文句なしのお勧め作品。


P.S.そういえば原画の担当が同じ「戦闘城塞マスラヲ」と
    作風や神にまつわる理論が似ているけど、
    林トモアキさんと竹田さんは
    ひょっとして同一人物だったりするのだろうか?