コンセプトを守った堅実な仕上がり
■作品傾向タグ■
学生主人公・学園・部活(バスケ)・サブカップル
■作品構成■
全10回程度の選択肢を使った段階的なフラグ折型管理方式
男子校、女子校の統合により共学化した学校を舞台に、恋愛に飢えた主人公とサブキャラたちが
全能力を使い切って恋愛に前のめりに挑んでいく様を描く
また今作は非常に評価が分かれるであろう"サブキャラクターたちのカップリング"が
作品コンセプトの一つなので、その点については事前に回避可能という点を踏まえて
そのコンセプト自体が不快かどうかなどについては一切取り上げないこととすることを予め了承願いたい
■作品内容評価(良かった点)■
作品発表段階から強く懸念されていたサブカップル描写という点を無難どころか綺麗に御しきった点、これに尽きる
恐らくこれが凡作止まりの作品でやろうとしたら大して魅力の無い男友達に魅力的なサブヒロインが
持ってかれるような印象を抱くだろうが、光生も大河も主人公の友人として非常に輝いており、
互いに惹かれ合う過程も唐突な物ではなく
「こいつらなら幸せになってもらいたい」
という非常に前向きな姿勢で楽しむことが出来た
特に個人的に好きだったのはミツオで、あらゆる手を尽くしてもいつも自分の数手先を行く
主人公を目にして思わずこぼした
「だから僕は主人公になれない」
という台詞が痛く刺さったのは私だけではないのではないだろうか
結局作中では彼の願った最終的な関係をいのりとは構築出来てはいなかったが、正直主人公なんかより
ミツオの事を応援する気持ちが途中から高くなっていた気さえする
ヒロインに関してはこころと千依の二人が良かったと思うが、正直キャラとしては同社過去作
『フタマタ恋愛』の煌と宮子のコンパチ感が拭えない
そういう意味ではサブヒロインである楓美の方が個人的な嗜好にあっていたのだが、運命の悪戯か
大河とくっ付いてしまったのは嬉しくもあり悲しくもある
またこれは最近のアサプロ作品の傾向と言えるが、八日なのか氏のテキストフローがここ数作で
非常に読みやすく、ブランドとして顔芸や下ネタに逃げなくなった点が非常に嬉しい
特にキャラクターたちの会話のフローが現代的な口語として違和感なく繋がるようになったので、
アサプロ特有の怒涛の会話のキャッチボールを少しだけ抑えつつ洗練されたやり取りへと変貌を遂げ、
"読んでいて楽しい"をしっかりと体現できている点は非常に評価が高い
■作品内容評価(悪かった点)■
大筋では問題ないと思えるが、サブカップルたちの進捗を付き合う前、付き合いたて、で止めてしまったので
個別入り後の主人公カップルたちとの"コイバナ"部分に開きが生まれてそれ以上の面白さが
生まれなかった点が非常に残念だった
とはいいつつここでサブカプが経験済みなんて描写をする勇気が出ない気持ちもわかるので、
ここでは特段評価をどうこうするつもりはない
■総評■
地雷設定を調理しきった見事な一作
正直な所テキスト構成の技術的な面でいえばアサプロ作品の中ではピカイチに優れていると思う
ただ作品全体の娯楽的な面白さでいえばもう少し頑張れたかなぁと贅沢な悩みもある
例えばコイバナ部分も悪かった点でも書いた通り比較対象となるサブカップル組の進展が遅いので
会話の内容に幅が持たせられずに終始似たような内容になってしまっていた点や、
鴇矢と未愛がサブカプでもコイバナでも役割を果たせていない点、
学生恋愛として分岐後の学園イベントが一切ない等等・・・
あとはヒロインの一部コンパチ具合ももう少しどうにかして欲しかった
特にこころと煌の理想の恋愛と違ったとはわはわし、結局現実はこんなもんと主人公を
受け入れる部分や、千依と宮子の友達以上恋人未満のサバサバ系女子っぷりは
既視感が拭えなかった
とはいえ近年のアサプロ作品では個人的にかなり好きな部類に入る
癖強めのコンセプトを主軸にするアサプロ作品の中でもかなり読みやすくわかりやすい作品なので、
これからアサプロ作品に挑戦する人たちの入門作として一番お勧めできる作品だと思う
あとは個人的にFDでのミツオの幸せを願っている