既視感ある設定にふたまたという要素をプラスしてみたが、果たしてこれはふたまたと言えるのだろうか
■作品傾向タグ■
学生主人公(大学生)・寮
■作品構成■
全5回ほどの加算型フラグ管理方式ではあるが、ルート毎に確定場面がずれるので
ある意味フラグ折り型ともいえる
過去の経験から恋愛について偏った価値観を抱くことになった主人公と、そんな主人公に
振り回されるヒロイン達との恋愛模様を描く
■作品内容評価(良かった点)■
八日氏らしいボケ倒しのやり取りは今作でも健在で、特に今作ではふたまたをする主人公像
というのも相まってそのやり取りがいつも以上にふざけて見えた点も良かった
ヒロインたちも一人一人個性的で実に可愛らしく描写されており、特に煌は共通から
魅せる直向きで一途な様子が多くの読者の心を射抜いたのではないだろうか
加えて一般的に評価が落ちやすそうな性格である結愛も非常に分かりやすい性格で、
私個人としては煌に負けず劣らず魅力的なヒロインにうつった
シナリオや構成に関しては、
"仲の良かった子が親の再婚で姉弟になる"
"恋愛感に穿った見方を持っていて主人公に試練を与えてくる"
"純粋に主人公の事が好きな正統派ヒロイン"
"色物枠"
という、FLATの『ひこうき雲の向こう側』でも見られた構成だったのである意味で比較しやすく、
またあれほど内容が重くはないことは八日氏のテキストフローを見れば明らかなので
比較的気楽に楽しめた方ではあると思う
特に主人公と正式に付き合うことになっても全然好きと言おうとしない結愛の姿も
ひこうき雲の瑛莉にそっくりだったのもあって、俯瞰してみると鬼畜ムーブをしている結愛の
姿もどこか愛おしさが感じられて純粋に物語を楽しめたのも良かった
■作品内容評価(悪かった点)■
大元のベースにひこうき雲が見え隠れするうえで、独自性を出そうとして追加された
ふたまたという設定であるが、これに関しては我々がふたまたと聞いて想像するものと
実際作中で表現された主人公のムーブに大きな隔たりがあったように思う
実際に今作が発売前に初お披露目となってタイトルを見た時の私の率直な感想としては、
「ふたまたか・・・、『恋愛、借りちゃいました』の主人公的なクズさは嫌だなぁ。」
というものだった
想像した内容にしても、今作で実際に主人公が序盤でやってみせたブッキングデートを
始めとし、互いがいちゃいちゃしてるシーンを互いのヒロインの接近に合わせてヒヤヒヤと
回避したり、それどころかそんなつもりはなかったんだと被害者面してみせたりと
本当の意味でクズムーブを連発しそうな未来を予想した
ただいざ物語を読み進めていくとそういったふたまたという言葉から当たり前に想像できるような
内容は今作ではあまり表現されておらず、主人公自身もそれを好きになったヒロインたち自身も
主人公をクズだと認めたうえで関係と物語が進んでいくので、正直な所今作において
ふたまたという要素はあまりにも弱く、どちらかと言えば"クズ"というキーワードの方が
今作を表現するのに適しているように思う
これに関しては悪かった点として挙げてはいるが、正直な所今作を『フタマタ恋愛』という
名前で売り出すのであれば、今作におけるこの読者の認識のズレは寧ろ好都合というか、
想像通りのふたまたを描かれた場合恐らく今以上に読者の心をつかむことは難しかっただろう
そういう意味であればこのディレクションは寧ろプラスに評価するべきとさえ思える
タイトルと結愛の面倒くさいムーブからマイナスイメージが付きやすくはあったが
過去の類似名作と比較すれば可愛いものだし、だからこそそういった前提が無ければ
勘違いを与えるという意味で今回は悪かった点としてこの件を挙げておこうと思う
■総評■
タイトルと一部ヒロインのムーブで酷い内容に思えるが、よくよく紐解くといつも通りの
八日氏が繰り広げるアサプロワールドだなと一安心できる一作
といいつつ年々丸くなっていく八日氏のテキストだが、正直変顔とシモネタで無理やりドリブル
していた過去数作より、しっかりと会話の中のやり取りで一笑い作ってくれる昨今の
スタイルの方が断然読んでいて面白いので個人的にはこのままで居て欲しい
今作に関してはふたまたがどうこうという点はこの際一切考えずに、単純に恋愛観に
問題を抱えた主人公がもっとうまいやり方も出来たのに変な道筋を辿って最終的に正常に
戻っていく様子を楽しむ物語と捉えた方が良いかもしれない
ただ相変わらずアサプロのタイトルと内容が合致しない現象はどうにかした方が良いように思う
純粋な学園恋愛に何か要素をチョイ足しすることでアサプロらしさを作り続けてきているが、
そのチョイ足し部分が過去数作から変わらず作品に味を出せていないのが気になる
もういっそファンタジー方面に振り切ってしまったほうが面白いのではないだろうか