新規っぽくもありFDっぽくもある、なんとも煮え切らない作品
■作品傾向タグ■
社会人主人公・人外(亜人)・犯罪・暴力・魔法・科学
■作品構成■
フラグ折型の形式だがルート固定やグランドエンドは存在しない。
選択肢は折型にも関わらずルートを確定させるに至る決定的な要素は持ち合わせておらず、
あくまでその時点で対象ヒロインの好感度を稼ぐだけの味気の無い内容となっている。
折型ということもあり作品構成自体は話構成で区切られ、話数ごとに特定ヒロインがフィーチャー
された物語が読める形は前作、『空のつくりかた』と同様。
また今作ではメインヒロインであるナツの出生の関係上前作との繋がりが一部垣間見える
作りとなっており、前作を楽しんだユーザーからすると前作の登場人物の関係者たちから
「またなんかやらかしたか」
とため息が聞こえてきそうな展開が目に浮かぶようで、所々にやりとさせてもらえた。
加えて前作同様ルートロックがないので先にフラグを折り続けて後のヒロインから読破も可能。
ただ雪ルートだけはナツの前にやることを強く推奨しておく。
■作品内容評価(良かった点)■
前作登場キャラの特徴をトレードオフしたような登場人物たちは二番煎じ感を多少なりとも
感じさせられつつもしっかりと個を強調できていたように思う。
特にそのこと自体(前作キャラとの比較)を作中で実際にネタとして扱った点もよく、
2作品の間の繋がりをより感じられる点が非常によかったのではないだろうか。
前作に比べ尺は大分減り、理不尽や暴力などといった描写もかなり少なくなったため
前作に比べて陰鬱な雰囲気は減って明るいキャラゲーへと大幅に歩み寄った。
これに関しては賛否分かれる部分であるため一応良かった点としても載せたが、
私個人としてはこれは悪い点であったように思う。理由は後述する。
■作品内容評価(悪かった点)■
全体的にコンパクトに仕上げ「過ぎた」点が少々目に付く。
特に前作に倣い今作が「めでたしめでたしの物語」だということを作品冒頭で明かしたり、
作中においてもナツ自身に「物語の主人公になる為に」などと言う動機を明かさせたりと、
何かにつけて物語性を強調させた割には最後のナツルートに入るまでに辿った物語に
起伏が少なく、前作に比べて主人公の能力発揮の描写も少ないのでいまいち
盛り上がりに欠ける構成となっていた。
特に前作の舞台であるナオカと同様に
「血と犯罪と暴力が蔓延るくそったれた街」
をコンセプトにしたカグヤであるが、こちらも作品の尺に対して類する描写数が足りず、
「非日常が日常」であるという面を強調し切れなかった点は大分問題だったのではないだろうか。
サブキャラたちについても前作以上の超人ラインナップではあったが、
今作では彼らの使われ方が事件の発生源としてしか機能しておらず、一部ルートでは
悪役なのか味方なのか良くわからない立ち居地でふわふわし続ける時間が長く続きすぎてしまう
キャラもいたりと、前作のように物語を盛り上げる役割を果たせているキャラが全く
存在しなかった点は残念ながら大幅に減点対象となっている。
なのでその被害をもろに受ける形になってしまった最後のナツルートが割りとひどい内容で、
「問題発生!」→「どうするの!?」→「なんとかなんだろ!」→「本当だ!なんとかなった!」
というクソの黄金テンプレートをガツンとぶち込んできてくれた。
というかこの流れ自体どの個別ルートでも大なり小なりあるわけで別にナツルートだけ
というわけではないのだが、尺の長さを考えると最後ぐらいすかっと決めて欲しかったというのが
正直な感想である。
■総評■
前作の個人的な評価の高さで微妙に墜落せずに済んでいるようなスレスレの低空飛行で
なんとか最後まで飛び続けられた作品、といった感じであろうか。
前作でよかったと上げた部分をちょっとずつ削ぎ落として余った部分だけの作品と言っても
いいかもしれない。
とにかく前作を受けてまとめて「空シリーズ」と銘打つには今作にはパワーが足りず、
かといって今作を単品で評価しようとするとそれこそスッカスカの内容であったと
言わざるを得ない。
悪い点の方に上げこそしなかったが個別ルート突入序盤の異常なエロシーンの詰め込み方も
乾いた笑いが出てしまったし、全ルートで
ヒロインにやにや
↓
他ヒロイン達が主人公にどうにかしろと訴える
↓
それを受けて主人公がどうにかしようとするが結局主人公もデレ始める
↓
他ヒロイン達「だめだこりゃ」
の流れがもれなく付いてくる。思わず、「引き出しすくなっ!」と突っ込みたくなる。
ナツルートの最後も似たようなもので、ナツルートの場合問題の発生の仕方と先にも述べた
雑な解決方法も合わさり数え役満みたいな凄まじい結果になっている。
最後に、今作を先にプレイし、そらつくを後にプレイしてゼロエピソード的な楽しみ方をしたほうが
今作をより活用できるかもしれないという実も蓋も無い総評で締めたいと思う。