いいところも目立つが、悪いところも目立つ
個人的にアサプロの最高傑作だと思っているアチ恋は超えなかったが、メーカーとしては次点に次ぐ良さは
感じられる一作であったと思う。
アサプロといえば同業界随一のパロネタの質を誇ることで有名であるが、過去二作に渡り
パロネタというよりかは質の悪い下ネタの比重を上げてきたせいもあり個人的にはかなり寒い作品を出す
メーカーになってしまったなという印象を抱いていた。
今作ではそういったパロネタ周りに細心の注意を払っている点がところどころ伺えており、
そもそも登場人物がパロネタを扱いやすく、受け止めやすくするために全員がオタク設定になっているあたりも
ライターサイド的には目的と手段が合致して非常に描きやすかったのではないだろうか。
タグとしては学園、部活、田舎と最近の人気タグを使ってはいるが、学園の描写がほぼ部室のみの上、
B研というほとんど実体のない部活動はタグとしてもいいのかどうかも怪しい。
田舎に至っては設定から田舎だということがわかるだけで別段シナリオに絡んでくるわけでもなく、
思い出したかのようにバスの本数の違いや店の品揃えの良し悪しを論う程度しかない。
また学園を舞台にしてはいるが学園関係のイベント(体育祭や学園祭)は一切出てこず、共通部で
某薄型冊子即売会に皆で行くというイベントが差し込まれるだけである。
一応そのなんちゃらマーケットにいくために皆で海の家でバイトをし、その流れで水着回が入るが
イベントと呼べない程度の尺と内容なので実質ないものとして認識したほうがいいだろう。
各ヒロインに関してはどの子も非常に際立って描かれていたが、実妹の性格が公式HPのキャラ説明や
コンセプト説明からかけ離れていた点が非常に気になった。
この点に関しては多くのレビュワーが感じたことだと思うが、私も彼女に関しては
「サブカルにまったく触れずに育った純粋培養の妹が、オタクになった兄を矯正する」
という構図を想像、というより実際公式がそういったミスリードがおきるような謳い文句をあちらこちらに
記載していたことが主な原因なのだが、これが実際プレイしてみるとこの妹も大層なオタクである。
そして主人公をオタクの道へと引きずりこんだような紹介をされてる義妹のほうが、実際プレイしてみると
無垢な性格をしていたりと、狙ってやったのかが判断できないようなわけのわからないスワップ現象を
体験できる。
一方幼馴染に関しては理解齟齬もなく非常に好印象。個別入りの仕方が若干弱くはあるが、
世話焼き幼馴染のテンプレからちょっと外れた幼馴染を久々に見ることができた点は大きい。
先輩に関しては何時も通り、アサプロ作品に必ず一人出てくるパロネタ砲砲術士であり、個別後のギャップを
楽しむルートである。
全体的なバランスとしては過去二作に比べて格段によくなってはいる。
ただ、毎回ユニークなコンセプトを打ち出す割には内容がそこまでコンセプトに準じていたり
濃く描写されているというわけでもないという点は今作でも同様であった。
特に今回の場合、必ずヒロインには対になる恋のライバルが存在するというのがコンセプトになっているが、
このコンセプト、よくよく考えてみるとこの手のADVでは一々コンセプトとして打ち出さなくても普通に
展開されるプロットであることに気がつくだろう。
ならば尚のこと、作中にライバル同士の掛け合いやガールズトークが差し込まれてほしかったが、
このあたりはさっくりと流してしまっているし、4人いるヒロインのうち先輩以外は全員が
幼少期より主人公へ好意を持っている状態なので、この手の作品で割りとやりがちな
「開幕高感度マックス主人公」
になってしまっていた点も評価が上がりきらない要素のひとつといえるだろう。
マイルドになったパロネタのおかげでクドさや睡眠導入剤的な効果はなかったが、
読破意欲が高いまま読み進められたかといわれると首をひねる一作であった。
アチ恋のようにコンセプトとパロネタがガッチリと合わさった爆発力のある作品を期待している。