これぞ王道の終着点
原作から10数年、和風伝記物としては間違いなく最高峰の作品に仕上がった。
初代から泣きゲーとして、また遊べるエロゲーとしてアクアプラスの名前をより強固なものとした
うたわれるものシリーズであったが、アニメ化、PS2でのリメイクというメディア展開を経て
ちゃくちゃくと一般層へと知名度を広げ、今回の二作で完全な伝説へと仕上げた、
十数年というう長いスパンの間に行われたメディア展開計画は流石の一言。
シナリオの面では前作の偽りの仮面が近作の前座であるというアシストを抜きにしても、
非常によく描かれていたように思う。
前作で問題となっていた一部助長を感じさせたシナリオはシリアス描写とのバランスをうまくとった形へと変更され、プロット自身も初代うたわれるものを踏襲したような弱小地方国を基点とした国取りシナリオとなり、
全体的な仕上がりは偽りの仮面を挟んだ甲斐もあり非常に上質な出来となっている。
特に今作では泣きポイントが複数設定されている点にも注目したい。
初代では最終決戦後のお別れ会がおそらく大半のユーザーの涙腺を破壊しにかかったであろうが、
今作ではオシュトルの母との語らい、マロロの死、お別れ会と非常に涙腺が刺激される点が多かった。
特に原作ファンなら、ネコネの
「でも、兄様がいないのです」
の言葉選びには感動したのではないだろうか。
これは初代におけるアルルゥの
「でも、お父さんいない・・・」
と同フレーズであり、こういった細かい点を挟んでくるあたりに、作品とファンへの心遣いが現れているように思う。
また似たようなものではヤクトワルトが師として仰いだのがゲンジマルという設定をだしたり、
エピローグでハクオロを開放する展開に持っていったりなど、今後のタイトル展開を見越した
形をところどころ残しておいたのも評価したい。
さて、一方バトル方面では全体的に大きな変更が加えられていた。
システム的には特定のキャラ同士の間で発生する協撃が導入され、単純に編成を組む上や実際に
戦闘する上で考慮するべき点が増えている。
また偽りの仮面のように敵味方ともに高火力で一発で倒しきっていたような展開が、
今作ではダメージがあまり伸びずに、雑兵相手でも必ず2.3回は殴らなければならないように、
ダメージや防御値が見直されている。
これによりネコネをはじめとするヒーラーの需要が高まり、前作ではタンカーとしての役割が強かった
ルルティエが各種オーラ持ちの上にバフ付の範囲ヒールを覚えたり、
新規参戦のフミルィルのヒール版反撃、「返礼」は、このゲームだけではなくRPG全体を通してみても
異色のシステムで非常によかったと思う。
私個人としては最後まで難易度を難しいで進めていたせいもあって、ところどころの中ボス戦は
考えながら挑まないと危ない状況に追い込まれる場面が何度かあり、
先述したバランシングと相まって非常にやり応えのあるものへと仕上がっていた。
また本編クリア後のお楽しみである夢幻回廊も前作に引き続きにやりとさせてくれる内容となっており、
コメンタリー集も大勢の演者からのコメントが収録されているなど、コメンタリー内でも語られているように、
スタッフたちの作品への愛を非常に強く感じるものとなっていた。
堂々の完結ということもあり、クリア後の心持はいろいろな感情が綯い交ぜになった状態であった。
エルルゥの物語の本当の終着地点でもあり、トゥスクル組みの再スタート地点でもあり、
またヤマトというトゥスクルに次ぐ、ウィツァルネミテアの存在と加護を知る場所ができた。
偽りの仮面が発表された当初、私個人は正直な所続編をそこまで望んではいなかった。
初代はあれで完結していて、またいずれエルルゥの子孫たちが再び巡り合うのだろうという
想像もできたし、それよりなによりも下手な脚色で作品を汚される心配のほうが、新作がでるということより
大きかったのだ。
しかしその懸念は今では綺麗に払拭され、今後うたわれるものという作品を語る際に、
初代だけでは語り尽くせないほどの感動と物語を提供してもらった。
今回の下地のおかげで、ゼロエピソード(ゲンジマルやトゥスクル婆たちの物語)や、
トゥスクル組みのその後の話など過去と未来に渡って展開が可能となっているので、
今後ともうたわれるものからは目が離せないだろう。
最後に、大きな感動をありがとう。