中位の感動がたくさん詰まった一作
非常に完成度の高い共通、個別ルートが味わえる魅力的な一作。
テーマとしては「鉄道」関係をがっつりと盛り込み、故郷に環境汚染を誘発する工場の誘致を撤回させるべく、
主人公である右田双鉄があの手この手と試行錯誤する場面が多く描かれる。
そのため、新たな問題との衝突とその解決策の発案、問題点の打開などの一連の描写が
共通、個別共に多く登場し、単純ではあるが明快な感動を味わいながら読み進めることができる。
構成としては起承転結の起承までを共通、転結を個別に割り振ることで文章量の多さからくる
飽きを感じさせにくくさせる他、一部ルート同士での心理描写のすり合わせなど、
読者に飽きさせずに読ませようとするライター側の心遣いが見え隠れする。
また鉄道関係ゆえに専門用語も多く登場するが、主人公が元来鉄道関係に疎いという設定を元に、
多くの用語をキャラクター達に説明をさせた点も評価は高い。
これは作品内でもWikipediaが用意されているのにもかかわらず、
という点もあわせて非常に高評価を与えたい部分である。
恐らく多くの人は地の文での説明より、声を含んだ登場キャラクターたちの説明のほうが
理解をしやすいであろうし、ことこういったヴィジュアルノベル作品の強みでもある音声が、
作中への没入感を大いに促進してくれるという点では、この描写方式は非常に効率的であった。
ルート構成としてはメインが3名、サブ4名とむしろサブルートのほうが充実しているが、
尺としてはもちろんメインのほうが長く作られている。
サブは関連したメインルートをクリアすると解放されるため、
どちらかといえば選択によっては有り得た未来をちょっとだけ覗く様な感じとなっている。
登場キャラクターはどれもキャラ立ちしていて魅力的ながらも、
嫌悪感を感じさせるものは一人もいない。
また工場誘致派と反対派という明確な敵対勢力があるのにもかかわらず、
不快感を感じる描写も少なく描かれているのも非常に高評価。
優しい世界の中で繰り広げられる優しいお話し。
読後に清清しい気持ちになりたいのであれば一読の価値あり。