青春ロックンロールADV。システムは快適。オートモードがやや不満。全体的に起伏に乏しく、淡々と読み進めていく感じ。テキスト力は非常に高い。ボーカル曲は全てが高水準。結果的に、単なるサクセスストーリーものにしなかったのは好印象。現実的・即物的な内容が生々しく描写されており、ダウンな展開に耐性無い方は堪えるかも。それでも、たくさんの人にプレイして欲しい素晴らしい作品。長文は補足
瀬戸口廉也さんの作品はこれが初めて。
「CARNIVAL」もプレイしてみたいが、今だと入手は困難かな。
乗っけから(個人的に)痛々しい展開が待っていたのが悪い意味で衝撃的でした。
基本的に主人公「前島鹿之助」の一人称視点で進行するゲーム。
内面は臆病で計算高く、ひどく醒めている。
けれど、内面からくる優しさや一所懸命さ、そして即応力も行動力もある。
こいつを好きになれるかどうかも作品評価に影響するかもしれません。
個別ルートに入るまでは、とにかく平坦な構成で、ともすれば退屈。
というのも、最初『音楽の才覚で成り上がるサクセスストーリー』を想像してたのが
蓋を開けてみれば、音楽を通した、人間関係とか交流がメインだったわけです。
以下ネタバレのため未プレイの人はリターン推奨。
個人的に納得できないのが、TRUEルートへの持っていきかた。
TRUEルートでは鹿之助はきらりの家庭事情を打開すべく、思考を錯綜させるわけだが、
そこに他者が絡んでこない。鹿之助の脳内に始まり、脳内で完結する。
樫原ルートでは、叔父の祐司やメイドの斎木さんの助力を得て、樫原と共に樫原の祖父を説得する。
結局、完全な説得は無理だったものの、話は良い方向に収束する。
しかし、TRUEルートでは誰の力を借りることもなく、諦観が蔓延する椎野家に
圧されたまま鹿之助が答えを見出すことはなく(一応、きらりと遠くへ逃げようとはするが)
結果「好きな人の父を見殺しにする」という展開が待つ。
鹿之助ほど賢しい人間なら、学生如きに出来ることなぞたかが知れることになど早速に気付いて良い筈。
考え方の尺度なんて千差あるが、ここは形振り構うべきではなかったのでは?
というか構う必要あったのだろうか?そこらへん説明されてたっけ?
べつにALLHAPPYにしろってんじゃないけど、ここはスッキリしなかった。