鬼のような心理描写。短い話ながらも、身を切る鋭利な刃物のよう。
鬱ゲーを期待してプレイしたのですが、予想以上に出来が良くて脱帽しました。
経済的困窮、家庭、身勝手な欲望、偏見と自己本位な正義、あらゆるものがヒロインを責めたてる
1つの陵辱の話が終わる度にピアスが1つ外されていくのと同時に、主人公(とプレイヤー)に穿たれる陵辱の思い出。
変えることの出来ない――既に終わった話が語られる本作は、
初めから間違えている・終わっている話を好む自分にとって非常に刺さる作品でした。
CGに関しては立ち絵とスチルの塗りの違いに若干違和感が…途中から特に気にならなくなりますけど
あと桃也みなみ氏の演技が凄すぎる…。
(あと蛇足)
「パコられ」というタイトルの軽さに対して非常に重く陰鬱な作品でしたが、
これから「パコる」という通常男性視点からの言葉を用いて、振りかざされる身勝手な欲望の被害者の視点とは、を描き出しているように作品から感じました。
あと個人的に樹里のセリフには特に共感を覚えませんでした。
樹里が主人公によって傷つけられていた等のエピソードが有ったならば(特に冒頭幼少期)説得力が存在していましたが、
作中の描写を見る限り樹里は環境にも恵まれているとしか思えないため、強者の振りかざす正論という暴力のように思えたからです。
作中何度か登場したボンナイフ――(子供にナイフを安易に持たせないために作った安全剃刀みたいなナイフ)は、
他者を傷付けてでも自己本位に生きるといったことが出来ず、他者にいいように使われてしまうヒロイン紗倉の象徴だったりするのか、
(作中のリスカによる自殺未遂でもボンナイフを使っていた事から)自己を変革する、他者に抗う力を持たない子供(無力な存在)という意味も有るのかなとか考えてました。
個人的には紹介文からヒロインが過去のトラウマから逃れられず、主人公と共依存する形で、
主人公(又はプレイヤー)の救う、救いたいというある種の傲慢を暴く話なのかなーとか勝手に想像してたので
最後の選択肢を選んだ段階で唐突に終わってしまったという感じは否めませんでした。
まだあの選択を迫るような段階ではなかったような…?