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monmonさんのナギサの ~Around The Seaside~の長文感想

ユーザー
monmon
ゲーム
ナギサの ~Around The Seaside~
ブランド
コットンソフト
得点
90
参照数
1074

一言コメント

手堅さの中に改善の傾向が見られて好感を持った一作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

コットンソフトとしての第三作。
ナツメグに似た雰囲気から、white>みずいろの進化のように
比較された作品となったが、改善の傾向を見ることが出来て
好感の持てる作品となった。

■システム
いつもの堅いコットン標準システム。
システム面でのバグは無いように思われたが、
機種依存の物はネットを見る限りまだ少しあるらしい。
とは言え、全般的にまとまっているのは確かだと思う。
ウインドウの濃さは変えられるともっといい。

■音楽
体験版時の時点では不安もあったものの、
製品版では相変わらずの高クオリティーで安心。
ただ、ネガティブキャンペーンを貼られないように、
今後はきちんとメーカー側のフォローも欲しいところ>体験版

■CG
司ゆうきの画風は安定期に入ったと思う。
レコンからの引き続き参加となった笹井さじはメインヒロインクラスへの
抜擢によく応えたと感じた。千果の絵は出来が良かった。
彩色はレコン風の塗りに落ち着いたのか?ナツメグの頃の
パッキリした塗りとはまた方向が変わってきた。

■シナリオ
・共通
 新RESは改善の傾向が見られ、間に共通のエピソードを挟んだりして
 さらに良い物になったのではないかと思う。自分は元々RESは肯定派だが、
 この調子で良くなっていけば、否定的な考えを持つ人にも好印象を
 与えれられるようになるのではないかと感じた。
 ただ、外部ライターを使用した弊害か、若干のズレも感じた。
 これはナツメグでは無かっただけに少し残念。

・夏生
 メインヒロインらしく、王道の展開。CG数も多く、見所も多かった。
 シナリオ的にさして問題も感じなかったが、強い印象を持つヒロインにまで
 なったかというと、その点ではやや不満も残る出来となったのは残念。
 眼鏡等の小道具に振り回された感があったのはマイナス点だったが、
 総じて高クオリティで安定していたのは紛れもなく良い点。
 海富の新しい可能性を感じ、読後感も良かった。

・千果
 夏生があかりならばこちらはマルチ。
 ドタバタ明るい娘に隠された秘密とは…といった切り口から、
 徐々に核心へと入っていき、世界に馴染んだ頃にドンと突き落とす。
 後はもう引っ張られるままに物語を楽しませてもらった。
 木緒の書く物はもう高値安定になったとは思うものの、
 今回は若干、伏線とその回収にほんの少しのブレがあったようにも感じた。
 些細なレベルなので問題ではないとも思うのだが、似た舞台での作品が
 2作続くことになった弊害なのかと勘ぐってしまう。
 夏生同様、満足の出来だったが、次作は違う物を読んでみたい。

・あおい
 もう一つ。というのは出来が悪かったというわけではなく、
 全てにおいてもう一歩のところで良シナリオに手が届かなかったという印象。
 萌えをやるのかシリアスをやるのか、どちらに振るべきなのか迷いながら
 ライターが書いているような気がした。
 秋津の書いたものではラムネコンシューマ版の美空がタイプも似て
 好印象のキャラだったが、こちらに比べると今回のシナリオは
 前述のように迷いが見られたように思う。
 お嬢様特訓のエピソードも、小ネタとして入れるのならいいが
 繰り返すと興ざめだった。キャラとしては抜群に面白いだけに残念。

・水守
 逆に、こちらはエロ担当要員としての役目が非常に出来ていたと思う。
 年上キャラとしての良さも感じたし、ナツメグで指摘されていたような
 Hシーンの少なさ(自分は特に少ないとは感じなかったが一般的感想から)も
 大幅に改善されていたのは印象が良かった。
 海富の好きなキャラの傾向からも、力の入り具合が違ったのだと思う(笑)。

 シナリオの好みからすると、千果>夏生>水守>あおいの順。
 ただ、これは個人的好みも入っているので、千果と夏生、水守とあおいは
 人によっては逆転もしくは同格と感じるかもしれない。

■総評
 ナツメグで出た不満点を解消し、更に良くしようとする意識が強く感じられ、
 いい流れを作ったのではないかと思う反面、やはり学園物が続いた事により
 少し飽きが来た部分があったのも確かではあった。
 ユーザーも固定されてきた感があったので、冬を舞台にしても良かったのではと
 思うのだが、やはり開けた印象を出すには仕方ないのだろうか。

 次作はもっと突き抜けた物を期待したい。