風になりたい
この作品の「風」は「夏風」でも「冬風」でもなく
「春風」ですね。スッと染み込んで来て内面に作用をもたらす感じ。
SOUTH BLOWの「春風」とかくるりの「春風」を思い出しました。
まず一つ言いたいのは勤の存在!いや~こいつのお陰で2,5倍くらい
物語を楽しめましたわ。陶山さんが名前を変えずに出演されてるんですけど
これがやたら上手い。紫光院との絡みもさることながらシリアスシーンの
格好良さは個人的に何度もツボに入った。いい仕事してますね。GJです!
本編も勤のお陰でテンポは抜群に良かった。勤以外のシーンでも「物足りない」と
思わなかったことを考えると相当気を使っていたことが伺える。
というのも、プレイして最初に感じたことがサクサク出来るということ。
要点以外無駄を省いてると思われるテキストは毒にも薬にもならない感じで、
で、それが逆にシンプルで良かった。なぜそれがシンプルに感じられたかというと
単純にキャラが立っている。みなもは「問い詰め」シーンもあるしね。
あと望の声がちょっと今時の若者っぽく感じられたのも個性付けを助長している。
そんなに「名作!」と謳われてる訳でもないので少し斜に構えてプレイ
しましたが全くその必要なし、とにかく第一部に関してはサクッと進むので
心地よくプレイ(ただスキップが意味を成してないのは辛かった)。
第二部は一気にシリアスモードに入ります。ここで微妙な気分にさせてくれます。
人によって眠り病になったり死んでしまったりするんですがこれが鬱でした。
襲われちゃったり、不穏な空気を撒き散らす展開、ややすっきりしない終わり方。
特に一番好きなのが望なんであのENDはちょっとキツかった。
だけど月代彩ルートをやってみたらスッともやもやが解けましてですね、
なぜかというと説得力、迫力が一気に増すんですね。他のENDみたら
「何しれっと去ってんだコノヤロー」的な想いを彩に抱かざるを得ないんですが
この月代彩ルートをやると彼女の情念、過去、苦悩、現在がたっぷり語られて
それを聞くとちょっと胸の支えが取れるんですね。「許す」ということではなく
「受け入れる」ことが私は出来ました。あの最後に関してもあのまま復活していたら
彼女の「贖罪」を果たせられなかったと思うし、みなもの子供として生まれたのも
あの街の風に許されたんだな、と素直に思うことが私は出来た。
ストーリーに関して言えば、どうしても触れたいのは彩の最後の言葉で、
「世の中が進歩して人の想いが薄れてしまった」的なことと、
「夢が叶うか叶わないかが明白になり、簡単に諦めてしまう」的なことを
言ってたんですが(ちなみに正確ではないです。自分なりの解釈です。)、
この二つに関しては私も常日頃感じてることなんですね。
例えば、周りの人間たちなんか見てても、彼氏彼女が単なるアイテム化
してしまってるところがあるんですね。まるでゲーム機みたいにさ。
そういう「お手軽感」に完全に引いてしまってる私にとってこのメッセージは
大きかった。人と人との繋がりはお手軽なものではない。私も言いたいことなんです。
社名通り「minority spirit」を感じました。いい姿勢だな、と。
Hシーンはこだわってるのかこだわってないのかはわかりませんが
息遣いを強調してる様に感じられました。他のminoriの作品もそうなのかな?
ある意味、実用性もあるんじゃないでしょうか。
ちなみに彩の喘ぎは子供が泣いてるみたいで興奮度が少し上昇した(2回あるしね)。
最後に、この作品を通して「想いの結実の形」は決して「ずっといる」ことだけでは
ないのかもなあ・・とふと思ってみました。長文失礼しました。
ちなみに一言はTHE BOOMの曲から拝借しました。