うん、面白い。まさかこんなに真面目な王道熱血スポーツものだとは思いませんでした。キャラの掘り下げは十分で物語に入り込めたし、ウリである戦水バトルも色々考えさせられる内容で初回プレイは本当に楽しめました。ただ、それだけに多くの残念点が浮き彫りになってしまった作品でもあります
ネタバレを多く含みます。ご注意ください。
非常に惜しい作品という印象。
ストーリーはとても面白く、個性あふれるキャラたちに感情移入もできたのですが、
それだけに多数の残念点が目についてしまいました。
褒めちぎるのは簡単ですが、ここではあえてプレイ中感じた不満点を書いてみたいと思います。
○ぶっかけバトル
まず残念だったのは、この作品のウリの一つでもあるぶっかけバトル。
これは試合パートでSB弾(白い液体)を相手にぶっかけてぬるぬるにさせよう・・・というものですが、
せっかくSB弾をぶっかけても、肝心のCGがすぐ消えてしまいます。
これは個人的に大きなマイナスポイントでした。
ギャラリーにも登録されないCGなので、せめてワンクリックするまでくらいの余韻が欲しかったと思います。
これが面白そうだったから本作を購入したようなものなので、かなりの不満を感じてしまいました。
○単調になる試合展開
これはプレイした方なら誰しもが気付くと思いますが・・・
メインヒロインであるみとの無双っぷりがゲームバランスを崩してしまっているように思います。
最初はあれこれ考えながらじっくりプレイを楽しめていたのですが、中盤あたりからは
1、真麻あたりをリーダーにして前線に突っ込ませ敵を一か所に集める
2、みとの必殺技で一蹴
大体これで試合の大勢が決してしまいます。
周回を重ねる毎に試合が簡単になり、作業感を感じるようになってしまいました。
一応クリアした試合はスキップ可能になりますが、人間相手よりも序盤のVS魚類(?)が一番苦戦しました。
○Hシーンの出来
差分が少ないため、一枚絵の変化が乏しすぎます。
基本的に表情や汁描写が変わるだけ。次のCGに精液描写の引継ぎもない。
テキストが示唆する状況をCGで表現できていない部分が多く、臨場感を感じられないシーンばかりでした。
はっきり言って、Hシーンはその辺のエロゲ作品と大差ない出来という印象。
スク水のシーンばかりなので、予約特典の全裸パッチがないとかなりの物足りなさを感じるのでは?と思いました。
それと、これに関してはCGの回収が「超」面倒でした。
○莉子々ルート
これ、莉子々ルートという名の主人公ルートですね。
主に主人公の問題ばかりがクローズアップされ、莉子々はただの相談相手にしかなっていなかったように見えました。
あまりに主人公ばかりに焦点が集まる内容だった為、ヴァッサーグラールというヒロイン達の共通目標すら小さく霞んでしまったルートだと思います。
これは共通ルートで莉子々の抱える問題が大筋の解決を見せてしまったため、
それ以上ストーリーの幅を広げられず、仕方なく主人公にベクトルを向けた「逃げの手法」にしか見えません。
さすがにこのシナリオ展開はライターさんの実力不足だと思わざるを得ませんでした。
○賢木芽衣という人物
真麻ルートなどで活躍するこの人物は、真麻を目の敵にして陥れようと画策してくる敵キャラです。
しかし、その理由が少し弱い気がしました。
作中、大事な試合を真麻のせいで落とした事が原因~などと描かれていますが、
普通その程度のことで数年にわたってあそこまで執拗に絡んでくるものでしょうか?
しかも「勝利に対する執念を見せなかった」と言いがかりに近い理由です。
花宴桜の暴力問題など他の問題も絡んでの確執とは言え、ちょっと説得力に乏しい感じがしました。
さらに、
・何故主人公の正体を知っていたのか
・桜のドラゴンブレスをどうやって無効化したのか
・モブ子のマヴの故障の原因は本当に偶然だったのか
などの伏線が回収されていません。
魅力的なキャラばかりの中で唯一モヤモヤが残った人物でした。
上記の他にも、
・特訓メニューの開始時期によってはストーリーの進行具合がおかしい部分がある。
・通常時におけるぶつ切りのワンカット日常シーンの連続がしつこい。
・一日毎に発生する部活シーンがあるためか、シーンスキップ機能がないので周回が面倒。
・みとの初Hシーンは流れが強引すぎる。
など細かい残念点多数。
特にぶつ切りの日常シーンが連続するのはなんとかならんかったのか・・・と思います。
短い期間に同じお昼イベントなどが発生されるのはちょっと手抜きを感じてしまう点でした。
ただ、ここまで不満点を挙げてきましたが、これはそれだけ作品に入り込めたからです。
一言感想に書いたようにストーリーそのものは楽しめたし、掘り下げ十分な個性的キャラクター達はとても感情移入できました。
ライバルキャラや、モブ子(そういうモブキャラがいる)まで捨てキャラが一人もいないのは本作の一番の美点だと思います。
こういう王道ながらも自然とストーリーを追ってしまうような作品はなかなか無いのではないでしょうか。
自分の中では「当たり」と言える作品。
是非いつか夢橋さんか蛍子さんを主役に据えたFDをプレイしてみたいです。