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mmasaharuさんの星ノ音サンクチュアリの長文感想

ユーザー
mmasaharu
ゲーム
星ノ音サンクチュアリ
ブランド
ま~まれぇど
得点
71
参照数
799

一言コメント

「シナリオゲー」を期待してプレイすれば間違いなく凡作。「前半シナリオゲー、後半抜きゲー」の認識でプレイすればおそらく良作。導入部では読み手を惹きつける展開力を持ちながら、それを最後まで維持できない転結の甘さは今作も健在でした

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ネタバレを多く含みます。ご注意ください。          


読み手を惹きつける導入部分と「AD」という今作オリジナルの面白い概念。
物語に入り込むべき共通ルートは及第点だったはずなのに、読み込むほどに何故か不満点ばかりが目につく作品。
この作品はもう完全に「前半シナリオゲー、後半抜きゲー」の内容だと思います。
以下、感じたことを書き殴っていきます。


○シナリオについて

 まず、今作のセンターヒロイン姫翠の扱いが残念。
 物語導入部分をかっさらっていったヒロインとは思えない普通ぶりでした。

 このヒロイン、本編開始直後にいきなりクラスメイトなんですね。
 一応、姫翠の個人的理由で他人を装ってましたが、何というか「再開できた幼馴染」みたいな特別感はどこにもありませんでした。
 それどころか、恋人になる過程も随分あっさりだったように思います。
 オープニング通りに「姫ちゃん」「まーくん」で呼び合うようになってたらまた違って見えたのでしょうがそれも無し。
 あの星空の下で再開を誓うシーンて何だったの?と思えるほど普通すぎる扱いでした。

 それと主人公。
 頼れる軍師タイプという設定をどうこう言うつもりはありません。
 が、個別ルートに入ると、ところ構わずサルになりすぎです。
 自室ならともかく、学園内の至るところで発情する様子を見せられるとなんだか冷めてしまいます。
 こんな厳しい学園なら、見つかれば一発で退学になるか、もしくは重いペナルティーを科せられるのでしょう。
 こいつは本当に「頑張って卒業して立派なスレイプニルの隊員になる」という響さんとの約束を守る気があるのでしょうか?
 共通ルートで散々語られてきた主人公の真面目さが一瞬で嘘っぽくなるので、Hシーンの入り方はもう少し考えて欲しかったです。

 さらに、シナリオを進めていくと展開に疑問を感じる箇所がいくつもあります。

 例えば、「明後日」のデートの約束をしていたはずなのに、次のシーンでは「明日」のデートになってるシーンがあります。
 さらに海に行くと言っていたのに何故か映画になっているシーンもありました。
 これはちょっと書ききれないのでほんの一例に留めますが、
 間に2~3行程度の説明文が抜けてるようなシーンがそこかしこに見られた印象です。

 また、Hシーンの挿入タイミングもそう。
 姫翠ルートでは暴漢に襲われて学園長から注意を受けたにもかかわらず、何故か人がたくさんいる海辺で目隠しフェラに及んだりする。
 また、瀬里奈ルートでもよくわからないタイミングでパイズリ行為に及ぶシーンがあったりする。
 こんな感じで、Hシーンの挿入箇所に疑問を感じるシーンがいくつもありました。
 これではエロいと感じるより何やってんのこいつらという言葉しか出てきません。

 他にも、
  ・相変わらずパロネタやスラングが多く見られる。
  ・背景CGは前作からの使い回し多数。
  ・ADを起動している絵は立ち絵1パターンしかない。
  ・戦っている一枚絵がないので戦闘シーンの臨場感が薄い。
  ・クリスのシナリオは過程をすっ飛ばし過ぎ。Hシーン入れたいだけだろ?と言いたくなる。
 など手抜きに感じる点多数。


 色々書きましたが、これらのほとんどは個別ルートに入ってからの不満点です。
 Hシーンに力を入れるのはいいと思いますが、そこに注力しすぎて肝心のシナリオがおざなりになっている印象でした。
 キャラの行動に疑問を抱いてしまうと、その後にどんな熱いストーリーがあったとしても白々しくて感情移入できなくなってしまいます。


○Hシーンについて

 エロいです。いいと思います。
 さすがシナリオを犠牲(?)にしてHシーンに力を入れてきただけあります。

 個人的に評価したいのは璃杏の扱い。
 実妹ということでなかなか本番Hに突入せず、貴重なシーン数を愛撫に割いているのが良かった。

 倫理的に忌避すべき妹という存在がヒロインの場合、弱い理由だけで簡単にセックスになだれ込まれるとキャラに感情移入できません。
 しかし今作の場合、

  ・妹とHする強い理由を徐々に構築
   ↓
  ・最後に本番H

 という流れを作れていたと思います。

 流されすぎな主人公の意志の弱さやシナリオの終着点には思うところがありました。
 しかし、キャラの心情を丁寧に描いた結果、妹相手のHシーンにもある程度の説得力が出ていたのは素直に評価したい点です。
 他ヒロインでは使わないコンドームが出てくるのもこのキャラだけですしね。
 実妹がヒロインにいる作品は、こういう丁寧さっていいなぁと思いました。

 また、全てのシーンではありませんが、CGが最初の体勢から少し変化するのも美点だと思います。
 例えば胸にあった手が口元に移動するとか、顔の位置が少しだけずれるとか。
 細かいことかもしれませんが、表情や汁差分だけ変化してシーンが終わってしまう他作品に比べて作りこみを感じました。

 さらに構図はもちろん、尻舐め、腋コキ、コンドームの精液を飲む・・・など、
 シチュエーションにもいい意味で下品さがあった点もよかったです。
 ペニスが抜け落ちたあと萎える差分があったのもすごくいいと思います。
 おふざけテキストが混じらない、部分カットインが入るシーンもある・・・など、全体的にHシーンは丁寧に作りこんである印象でした。


 しかし、ここでも当然不満点はあります。

 まず、テキストが退屈という点。
 「一緒にイって」、「すごいのきちゃう」、「おち○ちんのことしか考えられない」、「熱いのいっぱい出てる」
 どこかで見たありきたりな表現の繰り返しばかりで、この作品だけのオリジナリティは皆無という印象。
 尺の長さも、喘ぎによる水増し感が強いシーンが多く、これはエロい!と思える質ではありませんでした。
 短いスパンで何度も訪れるHシーンで延々と退屈なテキストを眺めるとどうしてもエロよりダレを感じてしまいます。
 エロに力を入れるならテキストもそれ相応の工夫を見せて欲しかった、というのが正直な感想です。

 それと、もうペニスが露出しているのに布の上から擦った・・・など、CGとテキストの整合性が無いシーンも非常に多い。
 上でCGが最初の体勢から少し変化するのも美点~と書きましたが、全てのシーンに作りこみを感じたわけではありません。
 あるヒロインは表情がまったく変わらないまま差分6枚だけで終わってしまうシーンもありました。
 ペニスに口が届いてないフェラシーンも多くあるなど、もう少し差分が欲しかったところです。
 作りこんであるシーンと手抜きのシーンの差が激しい印象でした。

 他にも、
  ・ほぼ着衣H。
  ・射精箇所選択肢がなく、挿入→射精はほぼ中出し。
  ・CGに主人公の顔を入れるならもう少し主人公にも表情差分が欲しい。
 など細かい残念点も。


 さらに、この作品のHシーンには個人的に大きく残念に感じた点が2つあります。  

 〇瀬里奈のHシーン
  この声優さん、相変わらず妖艶で素晴らしい演技です。
  しかし、その演技が妖艶すぎて瀬里奈の初々しさがあまり感じられませんでした。

  特にそう感じたのは3回目のHシーン。
  このヒロイン、まだH3回目だというのにいきなり主人公の尻穴を舐め回します。
  それだけなら「おいおいさすがエロゲーだなハハハ」で終わるのですが、そこにレベル99の舌技が加わるともうただの痴女です。
  直後のセックスシーンで「恥ずかしい」と言われても嘘つけとしか感じませんでした。

 〇造形崩れ
  主人公のペニスがやたら大きいシーンがありました。

  まずそう感じたのは姫翠とシックスナインするシーン。
  もう文字では伝えきれませんが、とにかく「うわっチンコ長っ!びっくりした!」と素で思ってしまうほどのロングサイズでした。
  しかもこれ、勃起差分があってさらにロングになります。
  あれをどのようにズボンにしまっていたのか・・・人体の不思議では説明しきれないサイズです。

  特に酷かったのは夜美のフェラシーン。
  このシーンでは主人公のペニスがヒロインの顔以上の超絶キングサイズになっていました。
  もはや洋物ポルノもバックミラーの彼方へ消え去るような、そんな圧倒的な存在感。
  私がヒロインならこんなモノが目の前に現れたら卒倒するかバキ折って逃げ出すでしょう。
  もう少し常識の範疇でお願いしたいと思いました。


  Hシーンが始まるとき、プレイヤーの目が最初に向くのはもちろん画面の絵だと思います。
  その際、違和感ある絵が目の前に出てきたら、それが終始気になってしまうものです。
  これではエロを感じるどころかシーンに感情移入することも難しい。
  残念ながら、今作のいくつかのHシーンはこれを感じる内容でした。



私の感想はこんな感じです。
この作品で一番に感じたことは、シナリオゲーから抜きゲーへという悪いベクトルが前作「恋色マリアージュ」と全然変わらなかった事。
導入部分では読み手を惹きつける展開力を持ちながら、それを最後まで維持できない転結の甘さは今作も健在・・・という印象でした。