時間を忘れて読み進む・・・まではいかないが、読むのが苦痛じゃないのでスラスラ読める良作。残念点もあるものの、プレイ後少し経っても胸に残る温かいお話を読ませてもらえました
ネタバレを多く含みます。ご注意ください。
やさしい雰囲気に包まれたストーリーだったなぁという印象。
不快感を感じるキャラがほとんど出てこないので、最後までゆっくりと世界観に浸ることができた。
テキストはとても読みやすかったし、随所に挿入されるSD絵もとても可愛らしい(特に手の書き方)。
ヒロインも可愛いキャラばかり。個別ルートに入っても他のヒロインが空気になることがない。
一つ一つのシーンがテンポよく移り変わるので、サクサク読み進むことができた。
また、この作品は主人公にとても感情移入できた。
「釘が打てそうな堅物」という作中の比喩がぴったりな性格だが、明確な目的をもって行動する人物なのでしっかりと存在感があった。
その真面目な人柄は、ヒロインたちに好かれる理由も十分にある。
最近、最初からヒロインの好感度MAXから始まる恋愛ゲーが多いが、今作では「恋愛に至る過程」にちゃんと説得力があるので終始楽しく読むことができた。
ただ、不満点がなかったわけでもない。
不快感なく読めたのは確かだが、ここを改善すればもっとよくなったのにと感じた点がいくつかある。
個人的に大きく残念に感じたのは以下の2つ。
〇山場の盛り上がりが小さい
この作品、登場人物が良い人ばかりであるゆえに、山場の盛り上がりが物足りないシーンが多かった。
例えば、共通ルートでミルトス英雄祭を邪魔しに来るトリロバ卿。
この人物はミルトスの人達による村おこしに深く感銘を受けて、結局何もしないまま「実はいい人でした」で終わってしまっている。
また、マーガレットルートに進むと発生するラナンキュラス卿からの求婚話も同様。
もっと盛り上がれる話に出来るはずなのに、ここでもオチはギャグのような終わり方になってしまっていた。
登場人物のほとんどが良い人すぎるため、ほとんどの山場が軽めの展開になっている。
重くならない雰囲気作りは今作の美点とも取れるかもしれないが、個人的には山場の盛り上がりを欠いてしまうネガティブ要素に感じてしまった。
〇魅せるべき場面で一枚絵を使っていないシーンが多い
ここで一枚絵があれば臨場感がグンと増す、という場面で一枚絵が使われていないシーンが多い印象だった。
例えばジャスミンシナリオ。
このシナリオでは、ジャスミンのゲリラコンサートを邪魔しようとするフォルスを主人公たちが食い止める・・・という見せ場があるが、
フォルスを止めるシーンにも、ジャスミンが歌うシーンにも、どこにも一枚絵が使われていない。
それどころか、「こうしてゲリラコンサートは大成功に終わった」と、あっさりシーンが終わってしまっていた。
上で書いた残念点と少し被るが、他にも要所で一枚絵を使っていないシーンが多く、少し盛り上がりに欠ける気がしてしまった。
しかし、この点に関しては逆にハッとさせられたシーンもあって・・・
個人的だが、カトレアのシナリオは内容的に途中で少しダレてしまっていた。
で、何となくテキストを読み進めていたのだが・・・終盤の「ある一枚絵」が非常に衝撃的で、一気に物語に引き込まれたシーンがあった。
怠惰なプレイになりがちなシナリオゲーに於いて、こういった手法は素直に上手いなぁと感じた。
もしかしたら偶然の産物かもしれないが、他のルートでもこういった視覚的効果があればもっと物語に入り込めたのに、と思った。
簡単ですが自分の感想はこんな感じです。
時間を忘れて読み進む、というより、読むのが苦痛じゃないのでスラスラ進められる良作でした。
エンディング曲が各ヒロイン一曲ずつあるなどの作りこみも個人的にとても好感が持てます。
Hシーンが薄すぎるのは残念点ですが、プレイ後少し経っても胸に残る温かいお話を読ませてもらえました。