この作品、共通ルートで既に目標を達成しているのでは?
ネタバレを多く含みます。ご注意ください。
優しい雰囲気に包まれた物語。
サウンドも落ち着いたBGMが多く、雰囲気作りに一役買っている。
CGも立ち絵も綺麗に書かれているし、テキストも全編にわたって不快感を感じなかった。
序盤の携帯を試しがけするシーンでは、ボイスも少し遅れて二重に聞こえたりと丁寧に作りこんである印象。
ちょっとスキップが遅いかな?とは思うが、システム関連も特に不満に思うところはなかった。
主人公はとてもいい人。
人を思いやり、人を良く見て適切な言葉を選ぶことができる人物。
ちょっと受け身すぎたり流されすぎたりするのが気になったが、正直な人柄はよく出ていると思う。
すすきのトイレに付いていくというズレた所を見せてくれたが全然大丈夫。むしろナイス設定。
「おしっこするとこ見ててね?」には萌え殺されるかと思った。
が、シナリオは・・・はっきり言って期待外れだったと言うしかない。
共通ルートはとてもよかった。
ひとつひとつのシーンが非常にテンポよく進む。
余計なテキストは極力控えてる印象でとても読みやすい。
主人公と綾乃がお互いに距離を測りながら徐々に惹かれあってゆく様子が丁寧に描かれていて、物語に引き込まれた。
だが、個別ルートは・・・何も起こらず終わってしまった印象が強い。
共通ルートがとても良い雰囲気だったので、メインの綾乃ルートは特に期待していた。
しかし・・・
はい、あーんをする、花壇を作る、みんなでトランプをする、二人きりになるとHをする。
こんな感じで大きな出来事など何も起こらないまま、終始のんびりした雰囲気で終わってしまった。
特筆すべきことや、突っ込みどころも特にない、本当に平坦で短いシナリオ。
事前情報なしで、泣けるシナリオゲーかと思いプレイを進めていたので、起伏のない展開には肩透かしを食らった。
綾乃以外のルートは・・・これ、深く考えたら負けなのだと思う。
とにかく、
・妻妾同衾のようなことを提案してくる綾乃
・綾乃という恋人がいるのに2号(?)になることを許容する他ヒロイン
・自分の意見ほぼゼロのまま、なし崩し的に2股関係を展開する主人公
この3点。
これらを深く考えなければド甘なピンク空間を満喫できると思う。
もちろん上記に挙げた点もそれぞれ理由があるし、背徳的な行為に及ぶ際には葛藤描写もある。
登場人物全員が一途だからこそ、このような展開になるわけであって、むしろ自然な流れ・・・だと思う・・・たぶん。
だが、うーん・・・あまり長く書くと本当にネタバレになるのでこれ以上書かないが・・・
つくしがちょっと面白くて、千景さんがエロい。本当にこれくらいしか印象がない。
大きなイベントは発生しない、大きな山場も発生しない、そして泣きも感動もない。すべてのルートがこんな展開。
もっとやりようがあったはず。今作のシナリオは残念の一言だった。
さらに、Hシーンも個人的には残念な出来だった。
全体的に尺は丁度いいと思う。
全38回(すすきルート含む)という多めのHシーンも好印象。
一つのHシーンに1枚絵を2枚使ってる場合もあるので、絵が合えば実用度は高いのかもしれない。
しかし、テキストは少し退屈・・・どこかでみたようなテキストが繰り返される。
差分はそれなりにあるのだが、基本的にヒロインの表情が変わるだけ。
汗や愛液などの差分が少なく、精液描写も軽めなので、汁分が足りない気がする。
CGによっては生クリームに見えてしまうなど、精液の塗りも物足りない印象だった。
あと、HシーンのCGに主人公の顔を入れるなら、もう少し主人公にも表情差分が欲しい。
ヒロインは表情豊かなのに、主人公だけ固定されてると無機質なものを相手にしてるような違和感を感じる。
それと、シーンにもよるが、喘ぎやフェラ表現がちょっとしつこく感じた。
尺稼ぎ、とまでは言わないが、「ちょっと長いかも?」と感じたシーンが多かった。
BGVも無いし、H効果音もおしっこ音くらいなので、しばらく眺めていたら飽きてしまったシーンもあった。
事後の甘い雰囲気の描写も足りない。着衣Hが多すぎるのも個人的にマイナス要素。
全体的にその辺のエロゲと大差ない印象。「今作ならではのこだわり」みたいなものは感じられなかった。
以上の理由から、Hシーンに関しても期待していたほどの完成度ではなかった。
最後までプレイして感じたことだが、この作品は「目標がない物語だった」ように思う。
例えば他の作品であれば、ヒロインとの結婚を目的としていたり、物語途中で起こる事件を解決したり・・・など、
何かしら「目標」に向かって進んでいくのが一般的だと思うが、この作品では最後までその「目標」が見えてこなかった。
自分が思うに、この物語は共通ルートで綾乃と恋人同士になることで、既に大筋の「目標」を達成してしまってるように見える。
そのため、個別ルートが単なるアフターシナリオになってしまっていた印象が強い。
大きな出来事も起こらず、ヒロイン達との漫然とした日常が描写されるだけ。
シナリオ全体が退屈に見えてしまったのは、この辺が起因になっていたのかな?と思った。
でもこれって、エロゲにおける理想的なシナリオ展開かもしれない。
難しいことは抜きにして、のんびりとプレイするには最適な作品。という感想でした。
ところでこの作品、初回特典で「すすきルート」と「いちゃラブボイス」なるものが付いてきました。
すすきルートはとても癒されました。
シナリオはやっぱアレだったけど、可愛いすすきの声は耳に幸せでした。
こういうお得感がある特典は今後も続けて欲しいですね。
いちゃラブボイスは何かと思ったが・・・ああなるほど、そーゆーやつね。アヘ声でも入っているのかと思った・・・