ErogameScape -エロゲー批評空間-

mmasaharuさんの向日葵の教会と長い夏休みの長文感想

ユーザー
mmasaharu
ゲーム
向日葵の教会と長い夏休み
ブランド
得点
83
参照数
2678

一言コメント

ドラ〇ンボールはフリーザで終わっていればもっと名作だったのに

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ネタバレを多く含みます。ご注意ください。                    


この作品、各ヒロインの物語とも「山場まで」のシナリオは本当に面白かった。
各ルートとも秀逸なテキストから展開されるストーリーにどっぷりはまってしまった。
多少、何でもアリな要素とご都合主義展開が目についたルートもあったが、ファンタジー色が強い作品ではこういうストーリーも面白いと思う。
中でも、詠ルートとヒナルートは、時間を忘れて読みふけってしまうほど世界観に引き込まれた。

ストーリーの根幹が秀逸だったのはもちろんだが、ここまで作品に入り込めたのは、優しい雰囲気作りがとても丁寧に感じたから。
美麗なCGとやさしいBGMは、夏の片田舎や向日葵が咲き誇る小高い丘にある教会・・・など、作風をよく演出できてる。
主人公がとても好感のもてる人物だったのも、自然と作品に入り込めた大きな要因の一つ。
人を思いやる優しい性格や、時には弱いことろを見せる人間味も感情移入できるし、なにより存在感がきちんとある主人公だった。
「あいつが少しでも安らげるよう優しいゆりかごでありたい」という作中のセリフは、そんな主人公の人柄をよく表現した印象深いセリフだった。

各ルートともテキストが本当に読みやすく、先が気になる展開力を持っていたシナリオばかりだった。
複数ライターさんが手掛けるシナリオは大きな差異が見られず、世界観に引き込んでくれる素敵な物語を読ませてくれる。
詠以外のシナリオでは最後に詠ではなく黒猫が登場したり、ヒナシナリオでは無いはずの教会の鐘が鳴ったりと、不思議要素が残るのも面白い。
こういった考察させる余地を残してくれているのも、練りこまれたシナリオならではだなぁと思わせてくれた。


しかし、面白かったのはあくまで「山場まで」。
プレイを終えて一番印象に残ったことは、「蛇足とも思える長いシナリオに感動が薄れた」という事だった。

例えばルカルートは、
 1、すべての出来事が解決
 2、恋人同士になり後は数回Hする
 3、エンディング
 4、エピローグで1回Hして終わり
という流れ。

また、詠ルートやヒナルートも、
 1、すべての出来事が解決
 2、エンディング
 3、エピローグでHシーン連発
という展開になっている。

金剛石ルート以外は、山場までのストーリー中にHシーンは発生せず、全て解決してから連続してHシーンが発生している。
ここで終わっておけば感動だけが残るという場面を飛び越えて、蛇足とも思えるほどシナリオが続いてしまっているように見えた。

特に残念に感じたのは詠ルートとヒナルート。
一度エンディングを迎えた後のエピローグで、あんなに延々とHシーンを繰り返す必要が本当にあったのだろうか。
物語をストレートに伝えるため意図してこのような配置にしたのかもしれないが、
これではせっかくの感動が薄れてしまうのではないだろうか?

この作品に限った話ではないが、最近エンディングをただの通過点とはき違えている作品をよく見かける。
エンディングとは、「物事の終わり」を意味するとても重い言葉のはず。
個人的に思う事だが、エンディングの後のエピローグなんて、ほんの少しキャラクター達のその後を描写すれば十分なのではないだろうか?
やりこみ要素が強いRPG作品でもあるまいし、いつまでも引っ張るエピローグなんて余韻を薄める蛇足以外の何物でもない。
それが感動を伝えてくれたキャラクター達がサルのようにHするだけの内容なら尚更そう思う。
そんなエピローグでも綺麗に終わってくれたのが救いだが、詠とヒナのシナリオはこれを強く感じてしまった終わり方だった。

エロゲーである以上、どこかにHシーンを挿入せざるを得ない事はよくわかる。
しかし、本当に素晴らしいシナリオだったからこそ、もっとやりようがあったのでは?と思わずにはいられない。
もしかしたら、こんなにエピローグを余計に感じたエロゲーをプレイしたのは・・・自身初めてかもしれない。


「ドラ〇ンボールはフリーザまでで終わっていればもっと名作になれたのに」
プレイを終えた時、むかし誰かが言ったそんな言葉を思い出しました。