ErogameScape -エロゲー批評空間-

mmasaharuさんの恋色マリアージュの長文感想

ユーザー
mmasaharu
ゲーム
恋色マリアージュ
ブランド
ま~まれぇど
得点
75
参照数
1755

一言コメント

進化するCGと相変わらずなライター

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオは大きな事件もなく淡々と進む。           
ハラハラドキドキする展開は皆無と言っていい内容なので、人によっては物足りなく感じるかも?
Hシーンもかなり後半に偏っていて、「前半はシナリオゲー、後半は抜きゲー」な印象だった。
また、物語の始まり方から「距離感」がテーマの作品かな?と思ったが、特にそんなことも無かったようだ。

主人公はとてもいい人。
手段はともかく、他人のために行動できる人なのは好印象。
仕事に真摯に取り組む姿勢や、仲間のミスもさりげなくカバーする様子など、とても好感が持てた。
ただ、「主人公はこんなに人を思いやれるんです」みたいな描写がちょっとしつこいかな?
それと心理描写が「うおぉやべぇぜヒャッハーー」とか「なにこのかわいい生き物ウッヒョーー」とか子供っぽい。
この辺がちょっと残念に感じた。


で、この作品・・・物語の構成や、作品自体の完成度にちょっと疑問を感じる部分がある。

共通パートでは、仕事に取り組む姿勢や、お客様に喜んでもらいたい!という情熱など、
キャラの真面目さがよく出ていて、好感を持ちながらプレイを進めていた。
しかし、個別ルートに入ってからは、主人公や各ヒロインたちの行動に疑問を持ったシーンがいくつかあった。

一番違和感を感じたのはメインヒロインの美穂乃ルート。(軽いネタバレになります、ご注意ください)

 〇美穂乃ルートの違和感
  実家の森川グループが破綻したという報を受けてからの展開がおかしい。
  倒れるほどのショックを受けたかと思えば、そんな事そっちのけで主人公とイチャイチャし始める美穂乃。
  情報集めに行ってた久遠が帰ってきてからも、美穂乃からその話題が出ることもなく、
  森川グループの事など忘れたかのように物語がしばらく続く。

  実の父親が旅館に登場すると思い出したようにストーリーが進む。
  しかし、父親が目の前にいるにもかかわらず「お父様に邪魔されたくないから」と隠れてフェラ行為に及ぶ。
  さらに業務そっちのけで部屋に戻り2回戦へ・・・
  そして体調不良を理由に朝まで・・・?

  あ、あれ?前半までの仕事に対する真摯さはどこへ?
  なんだろう、これでは美穂乃が「父親の事を心配する健気な娘」どころか、ただの痴女のような・・・
  そのあとで予定調和の如く、「お父様が心配でした!」的なイベントがあったが・・・

  いや、キミ心配してなかったよね?てか何この今更感。順番が逆じゃないか?

  その後も数回のHシーンを経て、特に大きな事件も起こらず結婚して終わり。
  シナリオをもう少し煮詰めればかなり面白い内容になったと思うが・・・
  そこらへんが非常に残念で、美穂乃ルートで感じた大きな違和感だった。

こんな感じで、物語構成に疑問を持ったシーンが他ルートでもいくつかあった。

他にも、
 ・スキップがいちいち止まる、選択肢でセーブ出来ないなどの不親切感あり。
 ・久遠と他のヒロインたちとのキャラデザが違いすぎて違和感あり。
 ・美穂乃ルートで電話をかけているのに発信音ではなく着信音が鳴っているシーンあり。
など、作品の出来に不満を持った点もいくつかある。

特に驚いたのが               
 ・CGモードで、感動的なシーンの後に久遠の飲ザーCGが突然カットインした。(ちなみにコレ、夜中にプレイしてたので肛門が自然拡張するほどビビった)

このように、全体で違和感を感じる点が多く見られる作品だな、という印象だった。



ところでこの作品、プレイを終えて一番印象に残ったことは、「このライター相変わらずだな」という事だった。

この作品のライターさん、今作でもネットスラングやパロネタを多く取り入れている。
具体的には、(キリッ)、「~と聞いて」、「第三部完」、「ロードローラー」、「URYYYY」など様々。
こんなの気にならない人も沢山いるだろうし、好きな人にはむしろ支持されるかもしれない。

しかし、このような手法を商業作品の中で多用するのはプロの書き手としてどうなのだろう、と思う。

インターネット掲示板や、無料動画のコメントなどで書き捨てるならまだわかる。
だが問題は、この手法を用いて我々読み手の笑いを取ろうとしている事。
具体例に挙げた上記のワードは、本当にこのライターさんオリジナルのものか?
どこかで見た言葉でテキストを飾り、笑いを取って、そのうえで「これは自分の作品です」と本当に言えるのだろうか?

膨大な文章量の中で、1度や2度使うくらいならいいのかもしれない。
ライターが、「このキャラの個性なんです!」と言えばそうなのかもしれない。
だが自分には、「自分の文で読み手に伝える」という一番大切な本分を放棄しているようにしか見えない。
前作より使用頻度は減った印象だが・・・このライターさんはもっと自分自身の言葉で勝負してほしいと思った。

個人的だが、新作をプレイする時は「前作で気になった点が、今作ではどのように変化しているか」が楽しみの一つ。
そういった期待感は・・・「このライター相変わらずだな」という印象で終わった。



しかし、ここまで散々文句を言いながら、それでもこの作品には素晴らしい点もたくさんある。

HシーンでのCGの美麗さ、塗りなどはその辺の抜きゲーなどよりクオリティが高いと思う。
テキストも不快な部分が少なく、尺も長すぎず短すぎず丁度いい。
ちょっとテキストとCGがかみ合ってない部分があり、違和感を覚えたシーンがいくつかあったが、
BGVも充実していて、すごく丁寧に作ったんだなぁと伝わってくる。
エロに関しては期待以上の出来だった。

シナリオも大きく破綻してる訳でもないし、全体の尺もダラダラ間延びせず丁度いい長さ。
序盤の祖母とのエピソードなど、優しい雰囲気がうまく出せている。
手をつないだCGの暖かさ、離れた時の寂しさも、塗りやタッチの綺麗さでよく表現できてる。
ヒロインとのイチャラブも見ていてとても癒された。
不快な登場人物もいないし主人公にも好感が持てたので、深く考えなければ楽しくプレイできると思う。


色々偉そうに書いてしまって俺何様?な感想になってしまいましたが、最後には購入してよかったと思えた良作です。
前作らぶ2Quadが個人的にかなり残念な作品だったので、今作は期待以上の完成度でした。
パロネタが気にならなければ、エロ目的だけでもおススメできる作品だと思います。