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mmasaharuさんのDRACU-RIOT!の長文感想

ユーザー
mmasaharu
ゲーム
DRACU-RIOT!
ブランド
ゆずソフト
得点
77
参照数
1592

一言コメント

丁寧に作ってあるが残念すぎる要素が山積。かなり期待してた作品だったのだが・・・長文は主に不満点

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ネタバレを多く含みます。ご注意ください。                      


CGは美しい、立ち絵差分はころころ変わる、システムもユーザーライクで・・・と、さすがのクオリティと言えると思う。
ちょっとスキップが遅いかな?とは思うが、快適にプレイできる配慮がそこかしこに見られて好印象。
選択肢も、同じような選択肢3つとか、「絶対外に出す」など凝っていて面白かった。
また、背景に過去キャラを何気なく登場させたりして、遊び心も感じられた。
オマケも十分なボリューム。SDキャラも愛くるしさ全開でとても癒された。

しかし、それら良い部分を消してしまうほど残念な部分も目立ってしまった。
以下、気になった部分を書き殴ってみようと思います。


まず、このサイトで評価されるほどHシーンの実用度は高くないと思う。
というのも、梓シナリオ以外はHシーンのテキストが退屈極まりない。
どこかでみたような描写の繰り返しで、「この作品だけのオリジナリティ」を感じないからだと思う。
精液描写も次のCGへの引継ぎがない。相変わらず絵や塗りのレベルは高いが・・・それだけかなぁ。
エリナの裸リボンと梓ルート全般は大変素晴らしかったが・・・ライターさんはもっと他作品との差別化を追及するべき。

そして日常会話は同じノリが繰り返される。
エリナが猥談→莉音がボケる→梓がたしなめる。基本これの繰り返し。もう少しやりようがあったはず。
キャラゲーに必須の、「日常の何気ない会話の楽しさ」が足りない感じがして残念だった。
それと、ルートにもよるがホモ医者ネタがしつこい。これは素で面白くなかった。

他にも
 ・一部のシリアスシーンやHシーンでのギャグテイストなテキストは蛇足。
 ・新人の学生を危険な現場へ平気で派遣するという設定の風紀班に違和感。
 ・BGMがNo.32の曲に変わりすぎ。ここで感動してください、みたいな押しつけを感じる。
 ・ライカンスロープがネガティブ要素という設定が全然活きていない。
など、細かい残念要素多数。


だが、一番の残念要素は主人公だと思う。
ルートにもよるが、とにかく不自然なほど言動が偉そう。
寮では一番の新米のくせに「おぅ」だの「まぁな」だの、こいつ何様?
話を進めていくにつれてヒロインたちの優しさに胡坐をかくふてぶてしさ。
特に莉音ルートではそれが顕著に出ていて、読んでて不快感を覚えた。
主人公に対してはまだまだ言いたいことはあるが、少なくとも良主人公ではなかったことは確か。

あとCGに主人公の顔を入れるなら、もう少し主人公も表情差分が欲しい。
ヒロインの表情はコロコロ変わるのに、主人公の表情だけ固定されてるシーンが目立った。
序盤の梓を助けたCGがカッコよかっただけに、肩透かしを食らった気分。
なんだか主人公が絵的に生きてる人じゃないように見える場面が多々あった。



さらにシナリオごとの具体的な感想(ニコラやアフターはあくまでもオマケなので書きません)

〇美羽ルート
 右肩下がりにつまらなくなっていったルート。
 というのも、ヒロイン美羽の性格がちょっと・・・いや、かなりウザい。
 助けた幼女やホモ医者にまでやきもちを焼くのはどういうことか。
 さらに、何かにつけて童貞童貞・・・勝手に人を評価して「不合格ぅ~」だの、はっきり言ってまったく可愛くなかった。
 途中までいい感じだったのに、個人的にゆずで初めてのハズレキャラになってしまった。
 それと主人公が鈍感すぎ。あまりにも不自然すぎて白々しいレベル。

 シナリオでもいくつかの山を無難にこなしつつ、最後に超展開。
 あの緊急時に地対空ミサイル?さらにそれを動かせる専門家がどこにいたの?
 しかも、一発は撃墜してもう一発は2人で力を合わせて・・・ご都合主義もいい加減にしろと言いたい。
 これは読み手にシナリオを読ませたいのか?それとも失笑を買いたいのか?
 もう最後はネタに詰まって丸投げにしたようにしか見えなかった。

 うーん、中盤くらいまでは面白かったのに勿体ない。ライターさんの実力不足という印象だった。


〇莉音ルート
 主人公に強烈な違和感を覚えたルート。
 先ほども書いたが、特にこのルートは主人公の言動が偉そうなのが気になった。
 「頼む」「おぅ」「まぁな」に始まって、「気持ちいいか?」や「~するぞ」など。
 これじゃ彼氏じゃなくて嫌われ者の上司だろ・・・名前で呼び合うようになってからさらに不遜になるのもマイナス。
 莉音が終始敬語ということもあり、少なくとも「気を許せる対等の立場の恋人」というイメージが最後まで持てなかった。
 ここの評価でこういった点を言及する人をほとんど見ないが・・・気になるのは自分だけなのだろうか?

 それとこのライターさん、某作品の時も同じことを感じたが、「かわいい」という言葉を使いすぎ。
 さらに過剰に相手を持ち上げすぎ。もう不自然にしか見えなくて読んでいて苦痛だった。
 ライターさんはいい加減、言葉や展開の幅を広げた方がいい。日常やイチャラブのテキストが退屈すぎる。

 初Hでも違和感全開。
 Hに対して内心でビビっている主人公なのに言葉に表れていない。心と言葉の剥離具合がおかしい。
 なんだか莉音だけ始めてで、主人公はSEX馴れしている感じに見えた。
 さらに挿入シーンのCGは構図的に縦長すぎだし、主人公の右手がぶら下がったまま。
 というよりこれ、主人公立ってるだけでは?莉音は何を相手にしてんだ?という感じで違和感ありまくりで萎えた。
 しかも、生活力がないからとプロポーズを先送りにしながら中出し選択肢が出るのは明らかな矛盾。
 もっと言うならキス~H終了までが長すぎ。退屈なテキストもあいまって、さすがにクリック連打した。

 しかしシナリオ自体は、物語の真相にもっとも迫っているこのルートが一番面白かった。
 ライカンスロープの設定も活きていたし、終わり方も綺麗にまとまっていて読み終えた後の爽快感もあった。
 癌はやはり主人公。こんな性格じゃなければ・・・と思わずにはいられなかった。


〇エリナルート
 キャラ設定の勝利だな、という印象のルート。
 主人公は相変わらず偉そうだったが、エリナのキャラと合っていたので違和感が緩和されていた。
 終始展開される「キャラクターのいい人描写」のしつこさに食傷ぎみになったりしたが、単純に読めるシナリオだった。
 それと裸リボンの破壊力は抜群だった。メインの4人の中で一番かわいいキャラだった。

 ところでエリナがどうしてもあの三条真琴と被る。
 前作で攻略対象外だったのでちょっとうれしかった。
 あと、エリナが「ユート」と呼ぶたびに「ニート」に見えた。かなりどうでもいいが。


〇梓ルート
 プレイ前から一番期待していたルート。
 このルートの主人公は、他のルートに比べてかなり好印象。
 やさしい性格がよく出ていて、梓に想いを伝えるまでのキャラ同士の心の迷いや葛藤がテキストによく表れていた。
 また、梓と恋仲になった後も相手を思いやる人物像を壊していない。
 全ルート中、もっとも主人公への不快感が少ないシナリオだった。

 まぁシナリオは、血液検査などのセキュリティが厳しいのに、変装だけで簡単に島外へ逃走できた敵キャラ~など、
 他ルートの設定がバックミラーの彼方に消えるような代物だったが、テキスト自体が秀逸だったので楽しく読めた。
 でも、ちょっと他ルートに比べて主人公の性格が違いすぎのような・・・
 この辺に、複数ライターの弊害を感じた。

 ところで、自分はこの作品で一番期待していたのは、梓のHシーンのテキストだった。
 このライターさん、今作でもHシーンの時にヒロインの可愛さや妖艶さを最大限に引き出せている印象。
 AVの知識を頑張って活用しようとする梓のいじらしさや、「~だもん」という可愛らしい語尾の使い方、
 さらに行為に夢中になっていく様や、事後の甘い雰囲気の描写まで、読んでいて微笑ましかった。
 主人公の言動や心理描写はちょっとアレだが、CGの美麗さと相まって高レベルの官能を表現できていると思う。

 だが、う~ん・・・他のヒロインのHシーンに比べて、テキストが群を抜いているのは確かなのだが・・・
 自分は正直、某作品の「くるくる」並みのエロをこのライターさんに求めていた。
 相変わらず尿率(尿率?)は高いのだが、梓というヒロイン像を大事にしすぎてる印象。
 Hに対するキャラの理性が勝ってしまっているために、「くるくる」ほどのブッ壊れ方が無かったのが残念だった。

 まぁ、個人的伝説の「くるくる」レベルを求めるのは酷かもしれ・・・

 いや、まだいける。もっと下品でいいと思う。
 この作品でも「きゅぽきゅぽ」という素晴らしいワードを産み出した。
 あと一歩、勇気をもって、もうちょっとだけキャラをブッ壊してみてくれないだろうか。

 何を言ってるか自分でもよくわからないが、今後に期待したいライターさんです。
 あ、あとGrowingという曲のインストバージョンが梓によくマッチした良曲でとてもよかった。



細かいところはまだまだあるけど、大体こんな感じでプレイを終了しました。
全体の感想としては、無理にシリアスに走って何もかもが中途半端にまとまっていた、ということ。
決して悪い作品ではないのだが、ゆずに求められているモノを今回は出し切れていなかったかなぁ。
良い点もたくさんあるのだけど、悪い点がそれを上回ってしまった作品、という印象でした。



嗚呼、せめて主人公がもう少しましな性格だったら評価も変わるんだけどなぁ・・・
なぜこのメーカーはサクラ大戦の大神さんみたいな主人公を書けないのか・・・