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mmasaharuさんの恋色空模様の長文感想

ユーザー
mmasaharu
ゲーム
恋色空模様
ブランド
すたじお緑茶
得点
62
参照数
651

一言コメント

非常に丁寧な作り+テキスト3流=「鶏肋」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最初に感じたのは、画面効果をうまく活用しているな、という事。
テキストウィンドウがあちらこちらに表示されるので、画面に登場してない人物の位置も容易に測れる。
キャラや背景の拡大や縮小、または回転を使って、距離感やキャラの目線をうまく演出している。
また、あえて立ち絵の足元を隠すことで、騎馬戦や朝礼の風景も違和感なく表現できていた。
さらにヘッドフォンをつけるとわかるが、ボイスなども右から左からとこだわりを感じる。
登場人物も非常にかわいいキャラばかり。要所で挿入されるSDキャラの一枚絵もとても愛くるしい。
怖いくらい丁寧に作りこんである、というのが第一印象だった。


しかし、残念ながらこの作品で評価できるのは・・・多分これだけだと思う。
その理由は、この作品最大の癌であるテキストがキャラやシナリオの魅力を殺してしまってると思うから。


一番気になったのは、テキストによる説明過多が非常に目立つ、という事。
なかなか本題に入らないというか、一つの事柄に対して蛇足とも思えるほどの文章量を使っている。

特に酷い時には、同じ説明を2度も3度もしているシーンもあり、序盤の聖良との出会いのシーンがまさにそれ。
また、彩が初登場した際、主人公との距離感に対しての描写があったのだが、クリック数は26回にも及ぶ。
さらに、ただ洗濯するだけの場面なのに、テキスト量がなんと34クリックのシーンもある。
一度に表示されるテキストが多くないのでそう感じるだけかもしれないが・・・それでも多すぎる。
冒頭からこの調子だったので、その後の展開に嫌な予感がしていたのだが、全体を通してこんな感じだった。
もっと余分なテキストは削れるはず。共通パートが長く感じる原因の一つだと思った。

それと、パロネタも目立つ・・・というよりしつこいほど多用している。
個人的にそんなものに頼るテキストは好きではない。笑いを取ろうとするならライター自身の文才で取って欲しい。


そして主人公には違和感全開。
作中では、「頼れる軍師タイプ」という人物像だが、行動に首をひねるシーン多数。

例えば、敵役の有馬から話を引き出してくる!というシーンがある。
しかし主人公は、自分たちが得ている情報を一方的にベラベラ喋ってしまうだけ。
話術を駆使するわけでも、舌戦を展開するわけでもなく、ただ「こちらの情報を喋る」だけ。
有馬が「ならばお返しにこちらからも・・・」と、なぜか情報を出してきたから事なきを得たものの、
そうでなかったらどうするつもりだったのか?

また、クルセイダーズに新入りメンバーが加入した時。
勝手な行動をとる新メンバーに警鐘を鳴らす久志を無視して主人公は傍観しているだけ。
校長室占拠のイベントが起きてから「責任はすべて俺がとる」みたいな行動をとったが・・・
だったら最初から注意すればいいだけでは?主人公が意図することが理解できなかった。

他にも、
 ・証拠に使えないとわかっていた監視カメラを設置する。
 ・秘密裏のはずなのに、廃校反対運動していることを他人にベラベラ喋る。
など意味不明な行動が散見された。


では、仲間を思いやり、頼りがいのある主人公なのか?と言えば決してそうとも言い切れない。
学習しない、すぐへたれる、「ド畜生!」などと突然激高する。
また、暗殺者に狙われてると疑心暗鬼に陥り、さらに他人に当たり散らし、そして胃炎になる。

そんな主人公を、まわりの人たちはこれでもかというほど持ち上げる。
「やはり私が見込んだ男だ」
「さすが私が認めた男!」
「せいちゃんに任せとけば間違いなし!」
「将来が恐ろしいですねェ、フフフ」

・・・こいつらは洗脳でもされているのか?それとも遠まわしに主人公を馬鹿にしているのか?
こんな茶番に、「ここは私に任せて先に行って」的な厨二展開や、「誠悟くんの三角とび!」なパロネタがしつこいほど付きまとう。
登場人物全員、大きな病院に行ったほうがいい。稚拙なテキスト満載な共通ルートだった。


途中、暗殺者設定が出てきた時点でブン投げようかと思ったが、ここまで進めたんだからと、なんとか辿り着いた個別ルート。
しかし、個人的にHシーンも期待してたほどの完成度ではなかった。

理由は3つ
〇テキストとCGが合っていない箇所が多く、差分が不足している。
 ズボンをはいているのにズボンを探したり、胸に「直接」触れたとなっているのに服の上からだったり、
 または「キスをした」となっているのにしてなかったりと、違和感を持ったシーンが非常に多く見られた。

〇1つのCG内でキャラが小さく、背景の割合が高いCGが多い。
 それならば、メッセージウィンドウも背景に合わせて表示してくれればいいのだが、キャラに被って表示される。
 立ち絵は画面狭しと動き回るのに対し、Hシーンでは画面の枠を有効に活用できてない印象。

〇テキストが退屈。
 どこかで見たような文章の繰り返しでキャラの魅力や官能を引き出せていない。
 尺は丁度いい長さだったが、満足できるテキストとは思えなかった。

これらの要素から実用度は低く感じた。
シナリオゲーとわかっていたのでHシーンに過度な期待はしてなかったが・・・「絵はかわいい」、印象はそれだけだった。



細かい点はまだまだあるものの、プレイを終えた時に感じた自分の簡単な感想はこんな感じです。
色々こき下ろしましたが、シナリオ自体に大きな矛盾や破綻があったわけでもなく、最後までプレイできました。
目にも楽しい立ち絵などの作りこみを実感できたことや、個別でキャラ萌えできたのもまた事実。

テキストにはうま味を感じなかったけど、ブン投げるには惜しい・・・そんな作品。
この作品を一言で表すなら「鶏肋」ですね。



あと教頭すげぇ鼻毛。