一本道だがバルドを期待しなければ楽しめる
攻略済みはルーのみだが、おそらく誰のルートでもさほど変化は無いだろうと感じたので感想書きます。
発売前の評判で戦々恐々としながらプレイした本作だったが、個人的には思いの外楽しめた。
バルドのようなゲームを期待していると肩透かしだろうが、別物として見れば(実際別物だし)面白い。
◯ストーリー
本作単体での評価はシンプル。それに尽きる。
特に驚くような展開は無いし盛り上がりに欠けるが、全体を通して見れば取り立てて悪いわけでもない。
どうも続編を出す想定なのか、明かされていない謎や未回収の伏線が多々仕込まれているのでこれ1作では完結していないすわりの悪さはあり、シナリオ上もそういった本来使えるだろうネタが使えず仕込むだけという制約で作られている感じがする。
ぱっと思いつくだけでも
・なぜ日本語が通じるのか?
・本作の舞台ユグドラ・キングダムは本当に異世界なのか?
・ノイマン
・駅長の正体
・主人公がハートオブドラゴンと契約したのはいつか?
などあり、これらに関してある程度推測できる伏線や思わせぶりなセリフはあるが明確なことは本作では語られていない(もしかすると他ルートで何か情報があるのかもしれないが...)。この辺りは続編を期待したいと思う。
良くなかった点としては敵対キャラクターの描写がストーリー進行で突然良い人になったりすることがあり、特にリディアで顕著だった。
またテキストと絵の不一致で違和感を覚えたところもあった。
◯ゲームパート(アクション)
現時点の最高難易度であるVERY HARDでプレイした感想。
ゲームパートは多少荒削りなところもあるものの、個人的には好意的に見ている。
バルドシリーズのアクションはスカイでほぼ完成してしまったところがあってハートは大きすぎる前作の壁に苦慮していた感想を持ったが、非バルドとして作られた本作では相殺というまったく別のプレイを軸にすることで新しいゲーム体験を提供している。
バルドと比較するとたしかにダッシュは遅いしもっさりに感じるかもしれないが、それは相殺戦を核としてゲームが作られているからだ。
ダッシュが早いゲームにすると動き回って回避するほうが楽で早いということになりかねないが、本作のダッシュはかなり低性能なので敵の攻撃に対してどう対処するか真面目に向き合う必要が出てくる。
プレイヤーが取れる選択肢は大きく2つで、「直前回避の無敵ですり抜ける」か「相殺」だ。
直前回避はあくまで相殺の影であると感じたのでここでは相殺についてのみ触れたい。
相殺で対応するメリットはいくつかあって、まず相殺はそれ単体では簡単であることが挙げられる。なにしろ猶予時間が長いのでゲーム序盤やザコが多数居る状況では適当に通常攻撃を振っているだけで相殺になるし敵AIもある程度相殺を狙って技を振ってくれている。
相殺すると魔痕(バルドでいうとHEATゲージに相当する)が増えて実際にダメージが入ったときに大きく体勢を崩せるようになり、コンボに入ることができる。
また相殺時は魔力(必殺技or魔法を使うためのゲージ)が貯まるので必殺技を並用すれば敵に攻撃が入ったところで一気に大ダメージを取ることができるし、自分では試していないが低難易度ならこれだけでも簡単に進められる気がした。
一方で相殺にはデメリットもある。魔痕の上昇は敵だけでなくプレイヤー側にも適用されるので思いっきり相殺した後に一発もらうとそのままデスコンボで即死することも少なくない。
またすべての攻撃が相殺できるわけではなく、大ぶりな攻撃や強攻撃では通常攻撃は弾かれたり一方的に負けたりするのでゲームが進むにつれて敵の行動パターンを慎重に見て、相殺後の動きから一瞬の判断で対応を決めることが求められるようになる。
この相殺周りの静と動の緩急が本作の面白いところで、5人居る操作キャラクターも相殺戦への対応をコンセプトに個性が付けられている。
スタンダードキャラであるシェリーは攻撃の発生が早く挙動が素直で相殺が取りやすいし、相殺後も直前回避からカウンターを入れたり技を先出しして潰すといったことがやりやすい。
ルーは攻撃発生が遅く小回りが効かないが敵の攻撃で怯みにくく、通常・強攻撃ともに攻撃範囲が広い上に溜め攻撃で敵の攻撃を一方的に潰すことができるので多数の敵を相手に相殺しつつ叩き潰すことができる。
唯一八雲は相殺を狙わずに敵の攻撃に合わせて無敵の居合斬りを合わせるというコンセプトのために相殺戦の前提を覆すことができて非常に強いが、代わりにいざ相殺したときや飛び道具に対しては弱く設定されているので一応のバランスは取られている。そうは言ってもかなり強いのでボス戦で困ったら八雲を使うのは大いにアリ
戦闘中の操作キャラクターの変更は控えに居るキャラクターの蓄積した魔痕を減少させる効果があり、また敵を崩した後のコンボパーツとしても有用で細かく切り替えることが推奨されている。
多様なキャラクターを使い分けることによって、バルドのような自機カスタマイズができないことによる飽きを軽減してくれていてこの辺りはうまく機能していると思った。
一方で相殺後の行動を見てから対応することが難しい敵の存在(攻撃を遅らせて空振りを誘発してくるランスロットなど)や、その対応を間違えたときに即死できるところはやや調整不足を感じた。
トレーニングモードが無くチュートリアルも文章だけでかなり分かりづらいのでゲーム理解の難しさを助長している。
延期したこともあるし開発は結構ギリギリだったのではないだろうか。
続編があればもっと洗練された調整や多少なりともカスタマイズ要素を増やした形を期待している。
全体を通しての批判点としてボリューム不足なきらいがあるのは否めない。特にバルドシリーズやデュエルセイバーは攻略順固定で徐々に全体像が明かされているという形を取っていたためオールクリアまでのモチベーションが保ちやすく、育成や引き継ぎ要素も豊富だった。
翻って本作はほとんど一本道のまま終わってしまうし3/5のアップデートまでは引き継ぎも無く、育成要素もやや弱い。
個人的には短いゲームでもさほど気にならないが、がっつりプレイしたかった人にとっては残念なポイントだろうと思う。
ストーリー的に完結していると言い切れないのも良くない点だろう。
総評としてバルドと似たようなゲームを期待していると良くないように感じられると思うが、別物として見れば決して悪いゲームではなく、むしろ良く考えて作られていて楽しめるものだと思う。
未回収の伏線も続編への期待として見れば一概にダメとも言えないので、今は続編なりFDなりを楽しみに待ちたい。