絵の良さ、システム面の良さ、青春力が高いところが良かった。なんでもない日常が楽しく、輝いている作品は最高。
自身のブログからの一部転載です。
魔法使い云々の話で引っ張っていくのかと思ったら、楽しい日常で引っ張っていく物語。そこに気がついてからはプレイしやすかったです。
「魔法使いを見つける」「理想のようなこの世界から元の世界に帰るのかを選択する」あたりの物語全体を貫く要素は、作品全体の長さから考えると実際短め。本筋進める時間は主にツナギちゃんしか出てこず、登場人物が減ってわちゃわちゃ感が減ってしまうのは難しいポイント。
「こんな時間が続けばいい」「この楽しさに溢れた日常をもっと見ていたい」と思わせてくれたという点が限界突破してた。ここが理想と言われても納得出来る日常を描けているのは強い。自分はハナノキプール、水鉄砲サバゲー、一日中学生あたりがすごく好き。好きなのだけど上手く感想を書けない。「仲のいい友人とワチャワチャやってるの見るのは楽しいよね」みたいな単純な言葉になってしまう。
花火への告白に関しては素直には納得できないところあったんですけど、後からフォローとここは超えないというラインを引いてくれたのは良かった。元の世界と平行世界の登場人物はやっぱり別人という意識が強いので、完全にくっつくのはNG派閥です。最後の最後まで、これキスしてお別れとかにならないか心配していたのですが、そんなことがなくホッとしました。
入れ替わり系の物語は苦手としているのですが、その理由として「身近な人間が気が付かない」というのがあります。一番の友人などと主張する相手がいるのに、その友人が変化を見抜けないって悲しくなりません?
今作の場合、リアリティのライン、変わったと言っても本人、序盤で変わったことの共有がなされているので問題ありませんでした。
逆に、別の世界の祭であっても、地の部分が同じなのだからと友人・仲間として接してくれる面々の暖かさの強調になってました。小学生みたいなことでも気にせず一緒に出来る間柄って最高ですよね。
今作では割りと軽めな描写ではあったけれど「前向きなお別れ」は、個人的に好きな要素。ただこれ大抵がラストなので、人に「前向きなお別れあるよ」って紹介されると「なんでそれを言っちゃうんだよ」となるので紹介されづらい。そして自分も紹介しづらい。
テキストの書き方だと、会話や展開をザクザクカットするところが特徴的であり良かったところ。
小説、ノベルゲームでは会話のキャッチボールを現実と同じように描くとグダるという持論があります。例としてあげると、話したことに対して一々相槌を打っていたり、一つのちょっとした話題を長くしたり。今作ではサクサク進むため、そういうグダり方がなかった。じゃんけんするシーンでも、途中経過すっとばして結果だけを見せる。結果だけが大事な時はそっちのほうがいいんですよね。
逆にザクザク切りすぎて「あれは?」となるところもあった。ツナギちゃんからお題を貰って書いた小説の感想はあっさりしすぎていた。花火家を訪ねた時、花火妹の葵ちゃんと完成した絵を見せ合いっ子する場面も流されたのは残念でした。その要素は拾って簡単な感想をもらってから次の場面に行って欲しかった。
~~~キャラクター関連~~~
こんな感想をここまで読むのは物好きしかいないと思ってるのでグダグダになっても書きます。
花火
夜空に咲く花火のような笑顔が印象的な幼馴染。
元気と行動力というWエンジンで走っていく様子を眺めるのが好きでした。作中のキャラクターたちは手を引っ張られたり、走ってる様子を見て一緒に走り出すわけですが。
祭とは互いに信頼関係で結ばれてて、お互いある程度雑に扱って問題ない関係がいい。
花火自身に語るところはそんなにないシンプルさが良いです。
陽花さん
もはや読心術の使い手。話が早い人。
作品的に日常を楽しくするのが花火で、物語自体を上手く進めてくれたのは陽花さん。
美人なんだけど、ヒロインではないというポジションのキャラデザが上手い。
登場人物に有能な人間が多く、陽花さんはその筆頭でもあるのだけども、それが鼻につかない。さわやかさや、遊び心で上書きされている。
エコー
そこにいてくれるだけで安心を与えてくれるような存在。語られてないだけで過去にいろいろあったんだろうなあとは思います。祭に対しても、いろいろ内心に抱えてそう。
ツナギ
超スペック素直後輩。君に出来ないことはないのかい?
何でも出来るのだけど、全く嫌味がない。良い子だなあと言ってる内に魅力に落とされそう。
不敵な笑みというか、若干のドヤ顔してる時が一番可愛い。
秘密というか、祭に話していないことが多いのだけど、それが気にならない。いいキャラ造形ですね。
ツムギ
超スペック悪女後輩。祭には申し訳ないですが、祭がいじられればいじられるほど物語が輝きます。ということで、主人公と一対一での会話限定だと、ツムギとの会話が一番好き。祭が何を言っても華麗に返される。
夏祭り、一日中学生あたりしかまとまった出番がないのだけれど、それだけでも十分な魅力を振りまいて行った。
一日中学生でツナギのフリをしつつ、やりたい放題やってるところが好き。葉桜には若干バレかけてるのに強引に収めてしまえるところも見て楽しい。
テニスをしていたのはツムギの方だったということで、ちゃんと確認。確かに若干意地悪な面が出てるのでツムギっぽい。嫉妬と聞かれた際の反応というか、「面白いことを言いますね」の言い方だけを見ると完全にツムギ。ただツムギちゃんが本気で偽ろうとしたら、それは無理だろうね。
ツナギ・ツムギの双子を見て『翠の海』(18禁エロゲ)という作品の双子を思い出しました。あっちの双子もメチャ可愛いです。
葉桜
押しに弱い。環境に弱い。
葉桜好きですね。中学生ということで、恋の淡さが出ていていい。ただそれは報われることのない恋。幼いがゆえに自身の恋心を扱いきれてないのがね。結果として自分の気持ちを完全に肯定しているわけではなく、憎まれ口を叩いてしまう。
好きな気持は確かにあって、でもこの恋を本物に、実現させていいものなのか戸惑っている感じ。
中学生時代の男女の成長の差というのが好きな要素です。相手を異性と意識しだす時間のズレが、後々の関係に関わってくるのは癖ですね。特に描写されてないですが、勝手に妄想していた要素です。
想い人が同じということで、ツナギの気持ちにも気がついているフシがある。
「人を好きになることを教えてほしい」と言った結果、祭のかっこいいところを見てまた好きになってる自爆っぷり。
数年後に「なんであんなやつのこと好きだったんだろう」と言いつつ、久しぶりに祭に会った時には複雑な感情を抱えててほしい。祭が変わってなかったらイライラしつつ内心では嬉しさも感じていてほしい。祭が変わっていたら、もう私が知っている祭じゃないんだと、出来てしまった距離に寂しくなって欲しい。
食事会の時の一枚絵がとても好き。ドス黒いオーラ+ジト目。
先輩ズ
高身長イケメン、金髪お嬢様の百合ップル。コテコテなところはありますが、素晴らしいですね。
出番があまり多くなかったのは残念。この二人が登場する別の物語があって、今回は出張してきただけと言われても納得が出来るタイプ。
勝手に物語を妄想すると、諒先輩と勝負をして打ち負かす人間が現れる→美礼先輩が盗られてしまう→美礼先輩が新しい彼氏と過ごすもなにか違うという気持ちが心の片隅にある→諒先輩が再戦して美礼先輩を取り戻す
失って気がつく、雨降って地固まる系が定番の話でしょうか。キャラクターが強いので、こんな定番でも映えそう。
~~~祭の選択~~~
この作品のシナリオ軸となる、「祭とツナギを別の世界へと運んだ魔法使いは誰なのか」「元の世界へ帰るのか、理想の世界に残るのか」という部分。魔法使いが横村先生というのは妥当なところと言うか、ノベルゲームでミステリー風味の場合「立ち絵がある人間が犯人」問題。世界を移動させる理由も想像しやすい。魔法使いじゃないかと早々に指摘され、とぼけるシーンがあったとして横村先生が魔法使いだと当てられる人もいたと思います。だけど、陽花さんとコミケの話題時に出た内気な先輩。この謎の先輩が自分の中の魔法使い第一候補でした!(だってすごいわざとらしく出てくるじゃん……)
プレイヤー視点・神様視点で言えば、祭の居場所を盗っているだけなのだから、元の世界へ帰れという部分はある。メタ的にも祭は元の世界へ帰るというのは前提になってしまう。じゃあ、どういった理由をもって元の世界へ帰るという答えを出せるのかがポイントとなる。
作中で「理想と現実どちらがいいのか」と問われた全員が「理想の世界」と答えています(葉桜だけ何か他にいいたいことがありそう)。実際自分も「理想の世界」と答えるでしょう。そんな中で一人悩む祭。
横村先生からも早々に「悩んでいるってことは……」と指摘され、エコーには「カンニングが問題ない行為だったらするのか」と例を出され、それでも悩む。実感のない選択、納得のない選択は意味がないから。
シチュエーションは違いますが、葉桜の問題と似たようなところがあると思います。正論は十分にわかっていても、それに踏み出すことが出来ない葉桜。周りから「悩んでいる時点で」と指摘されても、自分の中で納得することが出来ていない祭。葉桜の場合は祭に助けを求め、祭が更に周りに助けを求めることで解決の糸口を見つけました。あの後もなんらかのしこりが残ったり、再燃する可能性はあるんですけど、葉桜の胸には既に希望があるので大丈夫だと思えるというのが重要です。正論をぶつけるのではなく、希望を見せ、持たせることが大切だった。
花火大会の夜、ツナギからの「なぜ花火を選ぶのか」という質問に「同じ時間を過ごしてきたから」という、なんともふわっとした答えを返す祭。最初に手を引いてくれたという大きな理由があるけれど、小学5年生から2年間だけとは言え「同じ時間を過ごしてきたから」その気持が大きくなったことは間違いないでしょう。
祭が大切にしている『過ごした時間』、それこそが元の世界へ帰る理由になるという構成は綺麗でした。
プレイヤーはこの夢のような時間を経て決断に至るまでという『過程』を見ています。それを無駄だと一蹴できない。無駄だったなんて言わせない。そしてプレイヤーが見る最後の『結果』が花火への挨拶。
手を引っ張ってもらうのも一つの関係性ではあるけれど、元の世界で祭は既に手を振り払ってしまっている。なら横に立って手を取るぐらいのことはしないとね。頑張れ!
~~~気になった点~~~
登場人物の名前が覚えにくいというか、直感的な読み方との差が大きすぎたのは辛い。陽花で「なかばな」とか、初めて読んだ気がします。主人公は祝葉祭と書いて「ときは さい」、咲夜と書いて「えみや」、葉桜と書いて「さくら」など。1人ぐらいなら、まだなんとかなるけど人数も多いのは辛い。
名前ウィンドウに表示される名前と、実際の呼ばれ方もあまり一致しない。主人公が呼ぶときは「陽花さん」、花火は「ヒマ」、エコーは「陽花」。表示される名前で呼ぶのがツナギちゃんぐらいしかいない。
それぞれのキャラクターの家族関係と名前が、わかりやすく紹介されることがないため、たまに登場するとイマイチわからない。祭に弟がいるという情報も夏祭りの時に軽く話題として出てきてはいたけれど、終盤すっかり忘れた頃にまた出てくるので不親切感があった。結局特にに登場しないので、いる意味を見出せない。
祭の母親も名前が表示されない(祭はママと呼ぶ)のに、花火からは「みっちゃん」と呼ばれてるせいでこんがらがる。自分は登場人物表を作って、確認しつつプレイしました。葉桜の母親は「恵若楓」or「恵葉楓」どっちなのだろうか……。
一部背景が足りていないと感じる部分があったのがもったいない。背景素材を使うのは何も問題ないですが、四川・中華料理屋なのに長テーブルだったりするのは違和感。実際に席決めの会話からすると、丸テーブルの可能性が高い。
あとこの作品の場合、岐阜要素を推しているところがあるのでオリジナル背景欲しかった。せっかく地元(?)の要素がいろいろ出てきているのに、舞台と背景が一致しないのはもったいない。コストを考えると、オリジナル背景は難しいのは当然なので、結局は何を優先するのか問題ですが……。時間とお金は有限!
もし自分に絵が書けたら背景を提供したいと思ってしまう。残念なことに私は絵が書けないし、書けるようになる予定もないので無理!
他に細かなところだと、食事会の諒先輩が怒る場面。BGMがシリアス過ぎてガチシリアス展開と勘違いしてしまった。あと同様にBGM関連だと、花火への告白BGMが壮大すぎた感。
ツナギ「どれだけ暗い過去でも、星が見えるだけ良いと思いませんか?」→祭「ここでは星が見えないから」はちょっとわかりにくかったような。最初はなんで急に星の話が入ったのか、星はなんの例えなのか意味が把握できませんでした。
~~~全三章関連の話~~~
コミケ購入特典に「あとがき」が付いてきました。その中で語られているのですが、本来は全三章で今作は第一章という構成だったそうです。熟考した結果、『おわきせ』の物語はここで終わりとし、以降の章は描かないという結論に。この続きを描くとジャンルが違うものになり、プレイした人が望まない方向に行ってしまうようです。
個人的に英断だと思います。この続きを見たいか見たくないかで言うと、非常に迷うところ。続きで物語ジャンルが変わるのは本当に鬼門ですし、個人的にはこの作品はこれで完結していると思っています。ジャンルが変わるとしても、ここまで長くやって一度はちゃんと締まった上でというのは難しい。
シリアスな要素や思い物語も好みではあるのですが、この作品に求めていない感はある。実際に見てみなければわからないというところはあれど……。あと、単純にもりむらひろさとさんが、シリアスやバトルを描ける人なのかがわからない。
一応これ以降の展開で使うはずだった要素に関しては、そのまま残っているっぽい。2周目で追加される要素は、これ以降の展開の取っ掛かりになるらしいです。
個人的に気になったところをまとめると
・理想の世界にいた祭とツナギちゃんはどこへ行ったのか
・なぜツナギちゃんだけ先に別の世界に来たのか
・元々いた祭はツナギちゃんではなく「ツナギ」と呼ぶ関係性だった謎
・元々いた祭はツナギちゃんを見て何を悟ったのか
・ツナギちゃんが元の世界で不登校になってしまった理由
・祭が中学に通えなかったことが原因で、なぜツナギちゃんが影響を受けてしまったのか
・祭たちの前に、横村先生が魔法使いであることを見破ったのは誰なのか
・ツナギちゃんはなぜ伝達係に関して何も話さなかったのか
・自身や祭が魔法使いではないこと、この世界の祭とツナギがいないことを明言できた理由
特に気にならないものもありますが、真相が明かされていない点、微妙に消化不良な点が残っています。
もしかしたらこれ以降で関わってくる可能性がありますが、自分の中でもっと深掘りしてほしかった要素としては
・主人公の文芸部設定、どちらの世界であっても物語を書いている
・『one love story』の名前がちょくちょく出てくるのに、物語中では特に機能していない
ここら辺でしょうか。後からいろいろ調べて気がついたのですが、キービジュアルに『one love story』らしきものが置いてありますね。キービジュアルにはツナギちゃんの音楽プレーヤーも置いてある。それ考えると大切な出来事があった後ツナギちゃんの曲を聞く場面ももう一個欲しかった気がします。ただその「大切な出来事」は2章、3章で使われる要素でしょう。
ここからは個人的な妄想。妄想なので強引なところもありますが、示されている情報を適当に繋げて納得できそうな設定を考えていきます。完全に感想ではない。
一番の違和感は2周目で追加されたラストのツナギちゃんとのやり取り。わざわざスケッチブックに文字を書いて出迎えたツナギちゃん。ここに違和感持った人は多いと思います。なぜ口に出さないのか。
当然、元の世界でツナギちゃんは「声が出せない」のではないかという推論が生まれます。その推論を前提にプレイした場合、説を補強出来るような部分がいくつもあったことに気が付きます。
・(ツナギちゃんが違う世界に来たことがすぐにわかった理由)「出来ないはずのコトが出来たり、あるはずのないモノがあったり」
・(元世界でツナギちゃんが抱えていた問題に対して)「私の問題は解決できない」
・(平行世界に来てから、以前作っていた曲に声を入れたツナギちゃん)「こちらの私も曲を作ったりはしていたようですが、歌って録音までしようとは思わないでしょうから」
・祭「梅中先生は音楽の先生だから。ツナギちゃんにはすごく目をかけてたんじゃない?」ツナギ「そう……なんでしょうね。音楽に関しては熱心な先生ですから」←ここの声に乗るニュアンス(小学校盆踊り二日目)
・横村先生「何度聞いてもツナギちゃんは可愛い声だね」ツナギ「……ありがとうございます」(小声)←ここの声に乗るニュアンス
・祭「ツナギちゃんもツムギちゃんと歌ったりしないの? お風呂とかで」ツナギ「……いえ、ないですね」
・最後の思い出づくりがカラオケ
ざっと並べただけでも、ひっかかりがこれだけあります。通常の授業に出席できなくなったと考えると、横村先生のお世話になっていたというところとも上手く繋がります。祭はいじめじゃないかと考えてましたが、ツナギちゃんがいじめ程度を返り討ちに出来ない理由はないですから。
2周目で追加されるツナギちゃん視点で平行世界の祭と出会う場面。
一応ツナギちゃんが声が出せることに驚いたりする描写はないです。私は最初勘違いをしたのですが、あれはツナギが世界を渡ってすぐの場面ではないため、既に世界と自身の違いに気がついていた時間です。
ツナギちゃん曰く、朝起きてツムギが横にいたことで世界の違いに気がついた=朝起きた時点が世界を移動した時なので、世界を渡った直後の描写は存在しません。
ツナギちゃんが声を失っていたことを確定として、次にツナギちゃんの過去に何があったかにも突っ込んだ推測。
祭が関わることで分岐するということは、後天的なもの、声を出せなくなった原因があるはず。妥当なところだと何か事故・事件のようなものに巻き込まれた可能性が思い浮かびます。そこで、7/29の怪談イベントを思い出します。ツナギちゃんが語ったのは猟奇殺人事件。その後で「先輩は聞いたことありましたか? さっきの話」と探りを入れてきます。何かの物語を参考にしたというのが妥当ですが、あえて穿った見方をすると元の世界で似たような事件があった可能性が出ます。それがツナギちゃんの身に起きたことなのかは定かではないですが、なにかの鍵にはなりそうです。
ここで
・平行世界でツナギちゃんの家がある場所は、元の世界では空き地。
・元の世界ではツナギちゃんはツムギと一緒に寝ていない
・ツナギちゃんはツムギとのあれこれにあまり触れてほしくない
ということ情報を思い出します。家が違う場所にある理由なんて、そう多くはないでしょう。元世界でもツナギちゃんが通っている中学は変わりません。やはり事件が原因で家族と声を失った結果、親戚の家に引き取られるなどして、元の家は空き家となり取り壊されたと考えるのが自然です。
おそらく両親は亡くしていると思いますが、ツムギは病院で昏睡状態にあると推測。ツナギちゃんの怪談では血まみれになっている両親は登場しますが、一緒に寝ていたと思われる妹(ツナギちゃん)に関しては言及せずに終わっているのが理由です。とは言いますが、本当の理由は完全にメタ的です。そっちの方が話を展開させやすく面白そうであり、ハッピーエンドを作りやすいから。
祭とツナギちゃんの違いに関して。
ツナギちゃんは、祭よりも一日早く平行世界にたどり着いている。一度の魔法で平行世界に送れる人数に制限がある。もしくは送った人物か、送った理由が別の可能性が出てくる。
祭に関しては何度か描写されているように、体力があまりない。運動神経に関しては記憶という経験がないせいで発揮されていない可能性があるものの、体力に関しては間違いなく前世界のものを引き継いでいる。
ツナギちゃんが声が出せない仮定が真実だとしたら、なぜ平行世界では声が出せるのか。祭と同じならば、肉体は前世界のもののはずで声が出せないままのはず。考えられるのは、声が出せない理由が肉体的なものではなく精神的なものの可能性、そもそも平行世界に送った方法や人物が違いがあった可能性、魔法使いが平行世界へ送るだけではなく声も取り戻してくれた可能性。
ここまでいくと推測に推測を重ねているだけなのでアレですが、家族を失ったことで声を失ったならば、家族を取り戻したことで声を取り戻したが一番わかりやすいかなーとは思います。
あくまで横村先生の言葉を受けた祭の推測ですが、おそらく魔法でも過去には戻ることが出来ない。でも祭が元の世界に戻った時間は夏休みに入る前(シチュエーション+Extraの日記の日付)。ということは、平行世界で過ごした時間は元の世界の時間軸とは別ということが確定する。
それを踏まえた上で平行世界の祭に関して。
平行世界の祭は本当に中学で不登校にならなかっただけの祭なのか。中学時代に花火たちに「友達になってほしい」と言ったことがやけに引っかかります。能力値が高いというのは重ねた時間が違うからとしても、何かが違うという違和感がある。「ジェットコースターが好き」のような趣味嗜好の変化もある。ツナギちゃんを見て何かを悟ったこと(2周目冒頭)、魔法使いの伝達係なんてものをやれたことも疑問点。
ここで「平行世界で過ごした時間は元の世界の時間軸とは別」ということを思い出すと、平行世界の祭は中学入学前に別の世界である程度の時間いて、何かを経験したことがあるんじゃないでしょうか。それか別の祭に入れ替わったのか。平行世界で長い時間を過ごした後ならば「(改めて)友達になってほしい」というセリフが出てくるのも納得しやすい。この説を補強できる部分として、陽花さんからも「弱いけど強くて、甘いのに厳しくて。みんなでいるのに一人みたいな不思議な感じがするの。昔はそんなことなかったのに。変わったと思ったのは中学の入学式が最初」とのコメントを貰っている。ツナギちゃんのメモに「この世界への分岐点は一つだけ」とわざわざ書いたのも、不登校云々ではなく平行世界に行ったかどうかの違いを言いたかったのかな、と。仮に平行世界でバトル系の時間を過ごしていたとしたら、諒先輩に一発当てられるのも理由にも繋がりますね。ツナギちゃんを、「ツナギ」と呼び捨てにして呼んでいるのも平行世界が原因かな?
ある種最大の疑問点である特になにがあったわけでもないのに、ツナギちゃんと積極的に関わりを持とうとしたところ。ツナギちゃん側に理由がないということは、祭側になにか理由があったということ。平行世界で仲良くしてくれた可能性。もしくは、平行世界での経験によってなんらかの形でツナギちゃんの身に起こる悲劇を知っていたからこそ、ツナギちゃんを守ろう行動した結果がツナギちゃんと仲良くなるということだった可能性。それが元世界と平行世界の違いだったのではないかと。
あと、祭を並行世界へ呼ぶきっかけを作ったのも平行世界の祭じゃないかという疑惑があります。祭の行動として確定しているのは、ツナギちゃんが平行世界へ来た日の朝ツナギちゃんと会う→なにかを悟る→(おそらく夕方以降)横村先生を尋ねる→不明、という順番と思われます。ツナギちゃんに状況を説明した部分がどこに入るのかはわかりません。横村先生に直接会ってツナギちゃんに伝える内容を話したのか、電話などで話したのかによって変わります。
正直おかしくないですか? 事情を全く知らなかったはずの祭が、なぜ伝達係をするまでになるのか。横村先生は祭がいなかったら伝達係をどうするつもりだったのか。
平行世界の祭は横村先生に「祭も呼ぶべきだ」と提案したんじゃないかと考えをでっち上げます。理由としては「ツナギちゃんには祭が必要だったから」とか? 「元の世界に帰った時、祭とツナギちゃんに接点を持たせるため」とか?
平行世界の祭に関して疑惑を書き連ねていますが、これが部分的にでも当たっていたとしたら「中学で不登校にならなければ手に入った未来」という部分と剥離してしまう。不登校云々は祭が勝手に考えたこととは言え、ボタンの掛け違いのような小さな出来事が原因だった方が『おわきせ』の物語としては綺麗だと自分は思います。
ということで、『おわきせ』内にあった情報でいろいろこねくり回してみた推測です。推測といいつつ、あんまりまとまっていないし、論理の飛躍が激しい!
この妄想を書くに当たり、いろいろな要素を拾って頭を捻っていたら、普通に続きが気になるようになってしまいましたね。別にこれが当たっているのか見当違いなのかとか、そういうのは別にどちらでも。妄想を書き残しておきたかったというだけです。
第二章では万能の願望器、という名前が出てきます。願望器というのは、とある作品の造語のようでして、「万能の願望器」がどのようなものなのかは、原典と同じなのかはわからないです。
原典と同じであるならば、「ツナギちゃんにはたくさん助けてもらった。ならば次は自分が助ける番である」と、ツナギちゃんを助ける願いを込めて……とまで妄想しました。妄想は妄想。ここまでで終わらせておきましょう。
余談ですが、ジャンルが変わる、理想という要素で似た作品がないかと脳内検索したところ、『臨界天のアズラーイール』という作品が近いかなあと思いました。理想の世界やらなにやら、ジャンルが変わる展開など。あと、平行世界や時間などの話だと『複数世界のキロ』(『小説家になろう』掲載作では一番好き)。
『おわきせ』が好きな人にオススメの作品というわけではないのでご注意ください。
~~~まとめ~~~
好きな青春系作品かつ久しぶりにエンディングで泣いてしまった作品なので、長々と書いてしまいました。好きなところが日常シーンなため、その一部を取り上げて感想を書けないのが難しい。本当はもっと手短に済ますべきだということはわかりつつも書いてしまう(読み返すのが大変だった)。基本的に自分のために書いて適当に公開しているものなので、最後までちゃんと読んだ人に関してはお疲れ様でした。
音楽もオリジナルなのは良かったところです。EXTRAではリメイク前のOP/EDも聞けたのは嬉しいところ。オープニングムービーで使われているのはワンコーラス版ですが、EXTRAではフル版も聞けるということで、何かの形でサントラ発売して欲しいですね。
リメイク版EDが好みで、コーラスから始まるイントロいいですよね……そしてキャラクターたちの名前が埋め込まれた歌詞はオタクが好きなやつですよ。
『おわきせ』の短編集や、『おわきせ』に登場する後輩たちが主役となった小説があるのですが、欲しいですね。読みたいですね。
青春作品、いいですよね!
素敵な作品に関わった皆様方に感謝を!