今作が初グリーングリーンでしたが、そこまでのものではありませんでした。
GROOVERから出たグリーングリーンのリメイクである今作。リメイクと言ってもいろいろあるが、今作ではシナリオ・音声については手を付けず、歌・絵・演出・システムを一新という形をとっている。私は今回が初グリーングリーンとなるため、過去作との比較はできない(ただし、TVアニメ版グリーングリーンは視聴済み)。
10年以上前のシナリオではあるが、古臭さなどは感じない(それは当然とも言えるが)。ただ、PHSという単語が出てくると過去のシナリオということを意識させられる。ただし、古臭さは感じないと言っても、プレイしていればこれが今書かれたものではないシナリオということはなんとなく感じ取れる部分はある。最近のゲームでは恋人同士になった後の部分も重点を置いて描写されるが、今作では基本的にヒロインと結ばれるところで話が終わるという点。ヒロインと『結ばれる』というよりも、ヒロインを『攻略する』という表現が適切なシナリオの運び。今では珍しい体育会系のノリ。エロが少ない点などがそれにあたる。
個人の感想に入るが、このゲームは自分に合わないゲームだった。三バカである男キャラのふざけぶり、頭の悪さには怒りを覚え、みどりの常識知らずとしか言えない行動には縁を切りたくなった。自分はいわゆる真面目系クズなため、自分の中の「やってはいけない一線」を超える描写は多かった。アニメなどでは笑って見られる覗きシーンやちょっとエッチなイベントも、ゲームの主人公として、三バカの計画として起これば自分の目には不快なものにしか映らない。最も不快だったのは、若葉シナリオにおける三バカの目の前で服を脱ぐというシーンには本当に本当に嫌になった。
そしてここからは個人的ベストシナリオである飯野千種先生について。このシナリオを経て、「大人になりきれていない年上っていいなあ」とか思い始めた自分である。
同学年、下級生と比べたら大人にあたり、生徒をまとめ導くという役割を持つ教師という立場の人間。主人公たちより年上であり、『学生』という青春、悪く言えば間違いを犯す時期を抜けた人。けれど、描写される飯野千種は『諦め』という意味で大人になりきれていない。学生時代の青春を懐かしみ、苦い経験もあれど、それを決して「悪い」の一言では片付けられていない。教師であるがゆえ、主人公たち生徒に青春の過ごし方についてアドバイスをするが、本人の中でそれは迷いを含んだ、自分に言い聞かせるような言葉だった。
答えの見つからない中で、今まさに青春のまっただ中にいる若い、青い主人公の台詞に、自らの過去や理想を見てしまい彼女は悩む。今の立場や経験とは切り離された、グリーングリーンという存在になれば、理想を口にすることが出来る。逆に言えばそうでもしなくては理想を求めることが出来ない彼女の姿は美しかった。そして、本人が思うところの間違いを犯すシーンには痺れた。けれど、間違いを抱えた上で、大人としての判断で時間を置くことを選ぶアンバランスさもまた、彼女の魅力だ。
おまけ
評判の早苗シナリオは、「この程度か」と思ってしまった。ハードルが上がっていたため、こうなることは予想出来ていたが残念。心をフルボッコにされ、立ち直れないレベルを期待していたが、そこまでのものではなかった。