アニメの出来が群を抜いている。
細かい欠点はあるが、全体的に良くできている。
中でも全編アニメーションという点は非常に魅力的で、Hシーンで真価を発揮する。
作品の雰囲気が非常に良く、アニメを見ているように感じる。
テキストが独特。
エロゲーのテキストには、キャラの心情やシーンを説明した「状況説明文」とキャラがセリフをしゃべる「会話文」があるが、本作品には全編アニメーションという特性上「状況説明文」が一切無い。
その代わりにプレイヤーはアニメーションを見て、セリフからは見えない隠された設定を把握する必要がある。
この点は他の作品には無い点で、本作品ならではの面白さがある。
シナリオに関して。
一本道。
ありがちな設定ではあるものの、一応まとまりはあるがボリューム不足。
説明が全く無い状況でストーリーが始まるため、徐々に謎が解かれていく楽しみがある。
ただし伏線はある程度回収されるのだが、一部回収されていない点があるのが気になる。
「真相を敢えて隠してプレイヤーに想像させる」という範疇を超えている感じは否めない。
音に関して。
ストーリーにギターが絡んでくるだけあって、ギターを用いた曲が目立つ。
曲数は少なめ。逆にBGMが無い事で際立つシーンもあり、雰囲気が出ているという印象もある。
また、セミの効果音等も夏らしい良い雰囲気を出している。
そして主題歌。
商業作品であるにも拘わらず、ボーカロイドを使用している点は残念。
それまで良い雰囲気であったものが壊されていて、作品にまるでマッチしていない。
Hシーンに関して。
類稀なる実用性がある。
アニメーションであるのはもちろんのこと、動き、視点、表情にバリエーションがある。
先にも書いた通り余計な状況説明が無いため、そういう意味ではリアリティはある。
また、Hシーンに限り音声がループされる点が非常に実用的で良い。
欲を言えば、キャラによってHシーンの回数にムラがあるので物足りなさを感じるキャラもいる。
意味を持たせているHシーンがある点も良い。
操作性はあまり良くない。
部屋を移動するシーンを毎回見せられるのはやはり面倒。
アニメーションという特性上、スキップも出来ないシーンが多い。
話の区切りごとに、まるごとスキップ出来るようにして欲しかった。
重大なネタバレになるため詳細は書かないが、名前入力に関する隠し要素は非常に面白い。
クリア後のBGM観賞画面が欲しかった。
総評としては、良く出来ている。
エロゲーの新しい形を作りだした作品。プレイ時間も短いのでやってみて損は無い。
謎解きが多く、２周目をプレイすると新たな発見があるため、２周プレイする事をオススメしたい。