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minoruさんのAIRの長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
AIR
ブランド
Key
得点
90
参照数
342

一言コメント

鍵ゲーの日常シーンは正直あまり好きではなかったのですが、本作は非常に楽しめました。シナリオに関しては、正直DREAM編でお腹いっぱいになった感はあります…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

正直AIR編は物凄くたるかったです、同じことの繰り返しで。
何か、それまでの自分の中での流れを止められた気がしました。
これ、すっごい心情的に厳しかったです。

薄い薄い言われているエッチシーンについてですが、私はしょぼいとかそういうの関係なく本作では必要だったと思います。
佳乃のストーリー上、あそこでぼかすのは不自然だったとDC版をやって思いました。
必要のある体の繋がりは、心の繋がりにもなりますし、感情移入しやすくなると思います。
ただ裏葉に関しては、もうちょっとそれに入る過程など細かく描写して欲しかったです……。

本作で私が一番好きなシナリオは、AIR編の観鈴シナリオです。
蝕まれていく観鈴の様子がありありと伝わってきて、せつなくて涙しました。
主人公の行動にも共感できました。
主人公と観鈴の二人がどうなるのか、本気でのめりこんでいた当時の思いいれは計り知れないほどです。

だからこそ、この勢いを維持して欲しかったというのもります。
Summer編は途中、とにかく神奈の考えが理解できず萎えたというのがありました。
優先すべきは母なのか、それとも好きな人のことなのか。
幼いということ、とそれで片付くことなのかもしれません。
ですが一番の最優先事項が何なのかということ、それは大事だと思うんですよ。

まぁ何だかんだ言っても、私が本作が大好きなことには変わりないんですけど。
AIRはKanonと違い、「主人公の物語」だという所が、私的には凄く好きになった原因だと思います。
Kanonは「ヒロイン達の物語」であり、主人公はそれに振り回されたり力を貸したりっていう展開が主でした。
別にそれが悪いという訳ではないのですが、様は好みの問題なんだと思います。

主人公と言えば、AIRの主人公は主人公のくせに、途中で消えてしまうじゃないですか。
退場しちゃうじゃないですか。
この展開には驚きました。主人公なのに、と。

私が一番好きなシーンは、この主人公が消えるシーンです。
最後の力で精一杯観鈴を抱きしめる、あのシーンで号泣です。
主人公最高です。
ゴールとかよりも、ずっと胸を打たれました。
この後をもっとさっぱりと、簡潔な物にしてくれれば良かったのになーというのが、私の感想です。

AIRとは、忌むべきものとされて一人大気の中に取り残された可哀想な女の子を、幸せにするための物語でした。
すべての話の根底にいる彼女を、救うための物語でした。
最後、彼女は解放された。
解放されたという解釈をしていいんですよね?

最後きちんとオチのついた、良作だったと思いますよ。