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minoruさんのPP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞
ブランド
Innocent Grey
得点
55
参照数
31

一言コメント

この前に出したのがカルタグラとなると、どうしても比べてしまう。狂気が足りない。殺人事件の容疑をかけられるも、身を隠す必要のある主人公は平和に寝てばっかいますし。生きやすすぎる。探偵役が実質機能しておらず、ただただ真相が障害なくスルーっと流れていくのも緊張感がない。戦災孤児という主人公の身の上など、世界観や時代背景の取り扱い方は魅力的なので、こんだけ良い素材の中どうしてここまで盛り上がらない内容に仕上がってしまったのか疑問のレベル。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

それまでの流れで匂わせなく、実はこうだったんだ!的事実が淀みなく単純に提示されていく、物悲しさ。
失われるミステリー要素。
あらすじを文字お越しするだけなら纏まりの良いものになりそうだが、どうしてこうなった。
千花や瑠宝など、とりあえず高跳びしようぜで物語をブツ切りにしているのも、情緒がない。
何の障害もなく逃げてしまうだけのオチをダダ被りで二つも用意する意味とは…?
久遠EDもその場から逃げるという意味では広義でこの属性に入るので、パターン無さすぎでは…?
これまで通りの日常に戻ることができる綾音EDの締まりの良さが際立ちます。
綾音EDがスッキリし過ぎるため、それまでの道楽を全て許してしまいたくなります。

主人公ではなくヒロインを探偵役に置いていたのは、発想自体は面白いと思いました。
そのヒロインを途中離脱させるので、探偵役自体がいなくなるのはズコーって感じです。
誰も推理しない。
主人公は無作為にお外出る訳にはいかないため、友人達が足で探した情報を平和に待っているだけ。
消える臨場感。
久遠が天才少女として世間を賑わせていたのであれば、それとない匂わせくらいは欲しかったです。
新聞に度々載っていたなら、記者をやっている美華夏くらいは感づいてもおかしくないのに。


ヒールの雑魚臭も凄まじくて萎えました。
葵の部下たちをマスコットキャラ的な可愛さで流すのは有り。
葵本人の浮いたサド属性がちゃちい。
主人公への執着設定も安っぽい。根っこからの深みが欲しい。
序盤の花魁VS主人公は鬼気迫っていてとてもよかったものの、後半の銃撃戦や刀使っての応戦は、戦闘描写そもそもが浮いている印象です。
敵の本拠地への潜入なんか、警備がザルどころか誰もいない。緊張感も無い。

主人公の友人である警察官が、ルートによって生死が変わっていることはマルチエンディングだからこその演出でよかったです。
そいつが攻略対象キャラでもある柚芭とカレカノ関係を築いていたことは??!!ってなりました。
(驚いただけで特別嫌ではないです)
殻シリーズを思い出しました。妹キャラに他の男を宛がうのが趣味なんですかね、このブランドは。


攻略ヒロインの三人がまな板属性ってのは物珍しかったです。
この時代の杉菜水姫さんが描写する線の細さが目立つ女の子はとても魅力的。
そういえば主人公がパートボイスなこと、あまりにもしゃべってくれるシーンが少ないため忘れるレベルでした。
こんだけのボリュームなら特に声優さん起用して声入れんでもよかったかも感。