SF設定、親世代のしがらみ、子世代の未来と、それぞれの持ち味を各ルートにバラけさせ丁寧に事実の紐を解いていく見せ方は綺麗でした。ただし恋愛ものとしては不向きな素材。ヒロインの魅力とシナリオの魅力が離れてしまったから。
途中下車系縦軸時系列作品の悪いところが出ちゃっていました。
稟、真琴、りな&ゆうみという最初の3ルートなら、恋愛成就の幸福も、主人公の将来に対する折り合いの付け方も、平等と思えるくらい丁寧な描写を心がけてくれているけれど、残りはアウト。雫と藍。真実を優先し過ぎてヒロインの存在意義が消えてしまっている。
反し私が一番面白いと感じたのが雫ルートだったので、世の中は酷。
ケロ枕の作品の中なら、本作が断トツで面白かった。
雫ルートの、雫と育む恋愛要素以外のシナリオが死ぬほど面白かった。
別に雫と育む恋愛要素に罪はないけれど雫と育む恋愛要素に関係ない、主人公の回想がこのシナリオの筋なんだもの。
雫ルートは直哉の半生において、芸術家としての未来を失った直哉が、最後の最高傑作を手がけるお話となっている。圭との熱い攻防が数年後繰り広げられる訳ですが、直哉にとっての当時の全力がここには込められていた。
この後分岐する藍シナリオについては、まるで一休みみたいな立ち位置で…。
藍に人生を癒されて終わる。直哉にとって逃げ場となれる藍という存在については、文句も何もないのですが、ただのドロップアウトなので話が広がらず。
実際広げられず。あっさり幕を閉ざされ。藍、不憫じゃない…?と…。
グランドエンドについて。
サクラノ刻へ続くということで、伏線張られて終わるんですが、雫が稟の付き人になっていたのに???が隠せず。
芸能人はやめたの??芸能人になった経緯は直哉への恩返しじゃなかったの??直哉よりも雫は稟を優先したの???と、本作の中でも一番しっくりこなかった…。