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minoruさんのツグナヒの長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
ツグナヒ
ブランド
BLUE GALE
得点
87
参照数
1812

一言コメント

精神肉体共に痛めつけられた、大事な妹のための復讐劇。妹のキャラデザが内面含めめちゃくちゃ好みだったということもあり、のめり込みました。つらさも倍増です。とにかく、ただただ悲しい。そんなソフトでした・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

自身の心の弱さが生み出した幻影に、主人公は追い込まれていくことになります。
基本的に、人の良い部類の人間なんでしょう。
ただそんな主人公像の説明ってのが、実際のテキストでは非常に少ないです。

主人公だけではありません。
本作、かなり読みやすい部類の作品だと思うのですけれど、全体的に荒削りと言いますか。
一つ一つのシーンの描写が、とにかく少ないんです。

その上で情報が唐突、かつ簡潔に飛び出してくるので驚きました。
設定が良いので私は引き込まれましたが、構成が稚拙な面は気になります。



嬉しかったのは、復讐のターゲットである五人の少女にもきちんと個別のエンディングがあったことでした。
上記の通り描写は少ないのですけれど、各キャラの性格付け、どろどろとした関係性はとても良かったです。

またこの関係性ですが、葵とナツキ姉妹に関しては物語中でお互いの気持ちがはっきり揺れ動くので、仲が回復している場合・回復していない場合とシーンが工夫されていてとても丁寧な作りになっていました。
ちょっと素直になれない彼女等の間に入った第三者である主人公という構図が、二人の世界を広げるきっかけになったというのが有り有りと伝わってきす。

シーンの回収作業にはなってしまうのですけれど、このような細やかな配慮は作品を引き付ける要素になると思います。
数が多いので、見ごたえありました。




また、この五人の中でしたら比較的出番の多いナツキ、それに主人公をおちょくりながらも他の女の子を助けるのに手を貸す茗子が印象的でした。

ただ、声優さんの演技が正直下の下で・・・。
奈々役の方は声質が理想でしたので、残念です・・・。

ターゲットである五人の少女のエンディングには、色恋とは別のベクトルが働いていると思っています。
勿論、主人公に思慕を抱いているヒロインもいます。
ですが根本となるオチとして、彼女等は皆最終的に主人公、そして被害者である奈々を包み込む立場になります。
とあるヒロインのエンディングでは、それが彼女達の「償い」だと語られました。

彼女達にも抱えているものがあり、それが主人公の受けた傷と相互する様は見ていてとてもせつなかったです。


心を通わす場面が決して多い訳じゃないということ。
また、そんな感情を双方持てるような余裕なんてないだろうということ。
妹をぶっ壊された主人公にとっては、色恋にうつつを抜かす暇ないぐらいの精神状態でもないでしょうし。

だから、そこまで恋愛面に発達しなかったのでは、というので自己完結もできるのですけれど・・・。
希望を言うならそこを煮詰め、和姦があってもおかしくないぐらいの相関性が欲しかったかな、と。

でも、せっかくの、美少女ゲーですし。
キャラも良かったので。残念です。





思わず奈々EDの終盤では涙してしまったのですが・・・あそこでの心中もまた、ひどい話だと思いました。
他のヒロインEDで回復の兆しを見せていた奈々の未来を、奪った訳ですからね。
それでも奈々を思い、果てた主人公の像は本当に儚くて悲しかったのですけれど。

奈々に救いがあるシナリオは、お返しディスクに収録されていたそうで。
今となっては入手ができる訳もなく、ただただ残念でなりません。
リメイク風味なツグナヒ2にはそれに似た形での救済EDがあるそうなんで、そっちもぜひ遊んでみたいと思いました。



そうそう。
奈々EDと言えば、銃をいきなり持ち出されたのにはびっくりしました。
情報屋がパラダイムノベルの小説版のような設定だったら、まだ違和感なかったんですけれど・・・。



びっくりしたと言えば。
あんだけバカスカ頭殴られて、主人公は大丈夫なんでしょうか・・・。
それもちょっと気になりました・・・。