どれも計算された、巧みな構成でできていて感動。この世界についていければ、間違いなくはまれます。
センスオフは、とても面白いゲームだと思います。
でも、とても面白いエロゲーではございません。
だって、これ選択肢でヒロインのエッチシーンが(ほぼ)全て飛ばせるんですもん。
それくらい、エロスに執着がないゲームです。
エロスに執着がないゲームは、昨今別に少なくはないと思います。
ですが本作ほどエロスを蔑ろにした作品はないでしょう。
まず上記にも書きましたエッチシーン飛ばせるよ!の詳細を書かせていただきます。
本作にとって、エッチシーンとはシーンの繋ぎでしかありません。
選択肢で抜かすと、普通に事後のシーンが出てきます。
ヤるヤらない問題ないんです。
だって、既に心が繋がってるんですもの。
そんな感じです。鼻で笑っちゃ駄目ですよ?
また、本作はパンチラもほぼないです。
そういうサービスシーン全然ないです。
これ本当に美少女ゲーム? ってノリです。
本作の特徴として、イベントCGと呼ばれるヒロインのサービスシーンだったり
アピールポイントだったりする図画が、「キャラ絵」というより「一枚のイラスト」という印象を受けるということがあります。
この作品は女の子が主体というより、女の子と主人公が生活する世界を非常に大事にしています。
自然に囲まれた施設、そこで起こるハートフル(笑)な生活。
こう書くと癒し系なんですが、実際日常パートの平和っぷりは病み付きになります。
世界の雰囲気作りが上手いからこそ、そこで生活しているキャラクターにも活気が見えると言えばいいのでしょうか。
そんな感じです。
ここで、少し話をずらしまして。
一つ問いかけさせていただきたいのですが、皆さんは何をもって「メインヒロイン」という言葉の定義をされているのでしょうか。
オフィシャルがそう設定して謳っているから? はい、別にそれでいいと思います。
私もそうだと思います。
「メインヒロイン」と「サブヒロイン」に明確な違いってあると思いますか?
幼馴染? 義妹?
そういうアドバンテージだけでは、今や「メインヒロイン」の座はキープできません。
例えばSHUFFLE!という美少女ゲーム、アニメにもなったのですがそちらはまさかのサブヒロインEDで物語を閉じました。
「メインヒロイン」と「サブヒロイン」との垣根がなくなった例が、これに値するとと思います。
では、そのヒロインが「メインヒロイン」として君臨するにはどうすればいいのでしょうか。
私の考えとしましては、そのキャラ唯一が誇る特殊な設定が話の中心に来る様なものならば、その子は「メインヒロイン」でいられると思っています。
また例え話でも申し訳ないのですけれど、「AIR」ですと三章に分かれた物語のうち、分岐する最初の章は製作者自ら「IFの物語」と語っていました。
主人公は「メインヒロイン」を選ぶんだけど、可能性として他の「サブヒロイン」とくっつくこともあったんだそうですって。
……ごめんなさい、これうろ覚えなんで違ったら本当ごめんなさい。
で、これに対しまして同スタッフは手がけた「Kanon」を取り上げますと、これはそれぞれのヒロイン達が主となって物語が構成されております。
主人公はあくまで補佐的な役割で、メインとなるヒロイン達に力を貸すような形でお話に関わっています。
また物語としての核化もひどく、それこそどのシナリオがメインシナリオ? という状態にも見えると思います。
それくらい存在するエピソードがどれも濃く、甲乙をつけるのが難しいということもあるでしょう。
この場合、我の強いシナリオ達の中で「メインヒロイン」がその地位を誇る「メインシナリオ」という存在は、はっきり言ってそこまで大きな力を振るうことができないと思います。
そのどれもが「メインシナリオ」と読んでも良い位置付けにできるんですもの。
ある意味これは凄いんですけどね。
そのキャラ唯一が誇る特殊な設定が話の中心に来る様なものならば、その子は「メインヒロイン」でいられる。
上記でこう書きましたが、ではこれは「Kanon」に当てはまるか、否か。
すみません、私は当てはまらないと思います。
あゆのシナリオは確かに主人公の過去に関わってきますが、それを言ったら他の子もほとんど関わってくるんですよ。
あゆ唯一が誇る特殊な設定というものは、本作には存在します。
ですが、別にそれが話の中心に来るようなものではありません。
「あそこのシーンは、あゆが起こした奇跡なんだよ!」という推測だか妄想に駆れる方もいらっしゃるでしょうけど、それあくまで憶測の域でないでしょうし。
次に違う持論を用意させていただくとしますと、私はそのキャラ唯一が誇る特殊な設定が他のヒロインとの差別化の意味で生きている場合、その子は「メインヒロイン」でいられると思っています。
ちょっと分かりにくいですかね。では分かりやすい作品例を。
「さよならを教えて」
これで伝わりますかね。
知らない方のために説明もしたいんですけど、詳しく書くとネタバレにも程があるので曖昧に。
えっと。
存在する個の中で、主人公がそのヒロインに対し天使様という偶像を見た上での憧れを持っていた時点で、もうそのヒロインは「メインヒロイン」であったと思うんですよ。
それに輪をかけ、彼女の場合彼女と存在していた時点で既に「メインヒロイン」だったと言うのもあるでしょうし。
他のヒロインとの差別化という意味で、これほど分かりやすい例はないと思うのですが、いかがでしょう。
では話を戻しまして。
センスオフは、言わばセカイ系の様な側面を持った物語です。
セカイ系に詳しくない私がこの様な単語を使ってはいけないのかもしれないのですが、ニュアンスが伝わればと思います。
センスオフの背景にある世界の設定は主人公に大きな影響を及ぼすこともあり、また様々な形として表れ各ヒロインとのエピソードに絡んできます。
ここで面白いのはその設定に順ずるシナリオにまんま被りというものがなく、それぞれそのヒロインでなければ為し得ないシナリオがそれぞれに作られているということでしょうか。
代わりがいないんです。
「サブヒロイン」と呼ばれる彼女達皆に、単一の物語が与えられているんです。
それこそ、この部分は「Kanon」に似ているかもしれません。
代わりのない単一のシナリオはどれもレベルが高く、それこそこの世界の中なら「メインシナリオ」と「サブシナリオ」の垣根がなくなったかもしれません。
ですが、センスオフの怖い所はここじゃありません。
センスオフの「メインヒロイン」のシナリオは、他のヒロインに比べどこか浅いと感じる所があります。
何故か。
他のヒロインと比べれば、これはすぐに分かりました。
本作の「メインヒロイン」のシナリオには、本作の背景にある世界の設定が全く生かされていないのです。
どういうことかと言いますと。
本作の背景にある世界の設定はかなり細かいです。
上記にもあります通り、それが与える影響は主人公や「サブヒロイン」達に大きく関わってきます。
つまりそうなると、自動的に「サブヒロイン」等のシナリオにはその世界の設定や、与えた影響も大きく関わるということになりまして。
当たり前のことですけど。
その設定が生み出す個性的なストーリー、こちらが本作の売りと言っても過言ではございません。
ですが「メインシナリオ」の場合、あくまで「メインヒロイン」の世界で幕を閉じます。
世界の設定とか詳しいことは一切出てきません。
主人公も影響を受けません。
この作品の「メインヒロイン」は、『そのキャラ唯一が誇る特殊な設定が話の中心に来る』とかそういうレベルじゃないんです。
無理矢理、『そのキャラ唯一が誇る特殊な設定を話の中心に来させた』んですよ。
ヒロインの軸所じゃないんです、シナリオを構成する世界の軸のバランスすらも変えやがったのです。
『そのキャラ唯一が誇る特殊な設定が他のヒロインとの差別化の意味で生きている』にも程があります。
本作の『世界』の中なら、「サブヒロイン」達にも「メインシナリオ」に成り得るチャンスはあったでしょう。
ですが「メインヒロイン」はその上手を行き、『世界』の外でシナリオを起こさせました。
それは決して、覆せない単一です。
素晴らしいです。
織永成瀬。
それが本作、sense offのヒロインの名前です。
彼女の功績に、私は今も拍手を送り続けています。
……ただ隠しキャラだったりのおまけ的なシナリオのことを出されると、アレなんですがね。