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minoruさんの好き好き大好き!の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
好き好き大好き!
ブランド
13cm
得点
90
参照数
715

一言コメント

大好きですよ。主人公の壊れっぷりが・・・ヒロインの壊れっぷりが!

長文感想

当ソフトを知らない方向けにあらすじを簡単に説明いたします。
えーと。
「一目惚れした女の子がいつか自分を好きになってくれたらと思うちょっと内気な主人公が、その女の子を拉致監禁し、さらに自分の趣味であるラバースーツを着せ、時間が経てばこの趣味も理解してくれるよね!と願うドリーマーな話」です。

こうして表すと、結構簡単な話ですね。
表すのは簡単でも内容は全くもって単純じゃないっていうのがおオツですけれど。

結構エグそうに見えますけれど、実際はかなりピュアなソフトでした。
怯え、ラバーにも嫌悪感しか抱いていない女の子の気持ちも考えず、主人公はひたすら夢を見続けます。
いつか自分を、ゴムを好きになってくれるって変わらず思っているんです。
女の子の全身をラバースーツで包み、顔にはマスクも被せ視界を塞ぎ、ほぼ身動きが取れないと言ってもいいという彼女の世話を、主人公は甲斐甲斐しく見ます。
手は出しません。一切出しません。
妄想はします。ですが、実際本当に手は出さないんです。

この手のゲームのあらすじを見ると、どうしてもそっち方面への期待が高まりそうな気がするというのに、これにはびっくりです。
本当に好きだからこそ、主人公は女の子のことを大事にしようとするというのがよく伝わってきました。

とにかく、やり方は何であれ純愛です。
この主人公の場合ですと、相手の気持ちを考えず自分の気持ちを押し付けるだけという行為だけ見ると鬱陶しいことこの上ない所がありました。
このような幼さで成り立つ恋情は、どこか少女漫画を髣髴させます。

ヒロインちゃん正規ルート以外ではひぎぃな展開も多いんですけれど、とにかくそんな主人公とラバーに拘束されるヒロインちゃんがメインとなるのが本作です。
ぜひともプレイして欲しい! とオススメしたいのですけれど、最初に記述しました通り本作は随分前に発売されたソフトです。
うちのXPさんでは駄目でした。あくまでうちの、ですけれど。




本作が発売されたブランドの、母体となる会社はビジュアルアーツというとっても大手さんです。
keyとか系列ですよって言うと、分かりやすいですかね。
ここは昔発売されたゲームを、改めて最新のOSに対応させた廉価版という名の再販を度々行っています。
ですが、現時点でも本作の再販は行われていません。
これからも、行われる気配はございません。

何ででしょうね。
理由は知らないです。公表されてないですし、そこは想像するしかありません。
もしですよ。もし、その理由が今のご時勢上仕方ないということなのだとしたら。

私はここで、創作の限界を改めて感じました。
悲しかったです。
そんなものに縛られなくてはいけないということに、とても歯がゆい思いをしました。
表現は自由であるからこそ無限の可能性がある訳で、その個性が潰されてしまうというのは非常に残念です。





という訳で、前置きでした。
ここからが本題です。

本作の主人公の持ち味は、純情でうぶな性格とそれに相反する趣味という所です。
「僕はゴムが好き」というあまりに我が強い趣味が与える印象は、とんでもない強烈さを与えてきます。

一方ヒロインはというと、変哲のないどこにでもいる普通の女の子でした。
長い黒髪の清楚な容姿、しゃべり方も穏やかで素直に「いい子」と言える子です。
実はドS!とか、そんな設定もありません。
裏ないです。怒りに狂ったヒロインが主人公を刺すとか、そんなんもないです。

何もないんです。
綺麗なんです。
ヒロインは、正に穢れのない理想のヒロインでした。

本作は、主に主人公とこの捕われのヒロインとの二つ視点で物語が展開されます。
ヒロインに恋をし、彼女の世話を一生懸命焼こうとする主人公。
その裏で、拉致してきた上ゴム着せられ、次は何が来るんだと怯え続けるヒロイン。
二つの感情が交互に描写され、彼等の心境をプレイヤーに分かりやすく伝えてきます。

彼の戸惑いと彼女の畏怖は全くの別物です。
好きな子がこんな近くにいる。嬉しい。でも年頃の女の子のことはよく分からなくてどうしよう。
怖い怖い。ここはどこ、お母さん助けて。帰りたい帰りたい。
主人公のキモさ、ヒロインの弱さ。
クローズアップされる二人の人間の距離はかなり遠いですけれど、徐々に縮まってはいきます。

ヒロインの心境の変化には、正直「この子これからどうなるのかしら」という不安が湧き上がりました。
熱心に世話を焼いてくる主人公への警戒が弱くなっていくということ。
嫌悪しか感じなかった全身を包むゴムに対し、ヒロインの中でそれも徐々に薄れていったこと。

主人公は変わりません。
ただヒロインに恋する、ちょっと人よりゴムが好きな男の子です。
変わらない主人公に対し、どんどん変わっていくヒロイン。
そしてついにヒロインが心を開いた瞬間。私は。



最高の純愛ゲームに、出会った感覚を得ました。



純愛とは何か。
純粋に恋をしているということ、そこに相手や回りに対し優先する意図を含めていないこと。
純愛ゲーとは何か。
純粋に恋をしているという描写が強いということ、そんなコイバナがメインのシナリオが純愛ゲーだということ。
だから本作は、純愛ゲー。

純愛ゲー=おかずシーンが少ないゲーム。主に学園物。
このカテゴライズには、正直違和感しか感じません。
そんなの手抜きゲーとでも言っといてください。
純愛を舐めんなや。コイバナを舐めんなや。

どうして「どこにでもいる普通の女の子」が内気なラバーメンとの恋に落ちたのか、それを突き詰めてヒロインの心情を細かく描写させた結果、しっかりゲーム内のテキストという形に収めた本作の分かりやすさは異常。
プレイヤーの想像力をあてにしない、作品での真っ向勝負には感心しっぱなしです。
相手の女の子がこういう経緯で主人公を好きになりましたっていうのを分かりやすく説明できたのは、正にこのヒロイン視点の存在あってのものでしょう。

恋をして、みんな幸せになればいい。
そんな感情を抱かせてくれた本作に乾杯。





ちなみに、本作に存在するEDの内確か3/4くらいは死人が出る内容です。
主人公がお亡くなりになることもあります。
バイオレンスです。
ゴムゲーとか謳うだけあって、異質なシナリオばっかです。
……純愛ゲーじゃないや。これ。
私の大好きなヒロインとのシナリオが「純愛」だっただけでした。
人生そんなもんですよねー。