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minoruさんのCARNIVALの長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
CARNIVAL
ブランド
S.M.L
得点
92
参照数
1190

一言コメント

一章だけならただの凡作。二章、三章あってのカーニバル。学と理紗にとって人生最大のお祭りだったってことは確かでしょう

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

婦警とマリはキャラ的にも、本作では必要ないと当初は思っていました。
ですがマリは、詠美とのまさかのエピソードでこれは必要な子だったと思い直しました。

もう少し掘り下げて貰えれば、さらに盛り上がっただろうと思うと残念で仕方ありません。
学やリサと共通する、この作品の根でもある「幼児虐待」をこういう所でも引っ張ってくるのなら、それに順ずるシナリオも欲しかったです。
詠美とマリの個別シナリオ欲しかったです……あ、婦警はいらないです。



ただこの作品、どうも規模が小さすぎるように思えたんですね。
確かにリサとの話は非常に上質な物であり評価すべき物なんですが、
それにしても昨今のマルチエンドが主体のゲーム界の中、ゴールを一つだけに絞るんであれば、
もうちょっと心に響くものでないといけないかと。

納得はできるんですが「ああそう、よかったね」みたいな、
あまり後から思い返しても印象に残らないエンディングだったもので……。

嫌いな訳ではないんです。
ただ、その「ゴールが一つ」って所がネックなだけで。
何かしら色々なエピソードがあって、その一つがこれなんですって言われたのであれば、もちろん文句などつけないです。
そこら辺何とかしてくれていれば、もう「魂の作品」として崇め奉ったんですがね。



この作品で、自分は悲しくも嬉しくもないけど、心の底からせつないっていうのを初めて感じました。
何気ない日常シーンで自然とポロポロ涙がこぼれ、ささやか過ぎる平穏の大切さがとても身にしみました。
ここまで物語に引き込めたのも、一重にこのテキストあってのことだと思います。

三章とも全部違う、キャラの個性を最大限に露出させ、
かつ読みやすいテキストは鼻につくようなクセもなくグイグイ物語の奥底まで引っ張っていってくれました。

最初プレイした時は一章の文章が非常に読みづらく感じ、
何だかエロゲーやってる気分じゃねえなーとも思ったのですが、
この作品としての木村学というキャラ作りに関しては、とても活用されているなーとプレイしている内に思うようになりました。

むしろ、もうこれじゃないとカーニバルじゃないって思えるくらいです。
そう、エロゲーというよりも、他の方も書いていますが小説や、
或いは漫画にもある主人公が「主人公」しているって感じでしょうか。

個性が強すぎて、所詮プレイヤーは第三者の位置にいるような。そんな感じです。
確かに本作は、「ゲーム」というより「小説」というノリに近いと思います。
ゲームという意味での、プレイヤーが選べる様々な未来などほぼ皆無ですし。
出来のいいデジタルノベルでした。


エッチシーンについて。

一章の無意味にも思えるッチシーンの量は、何とかして欲しかったです。
すぐ感じる女の子ばかりで、何だかそれもパターン化されているように思えました。
あと、喘ぎ声がほとんどBGMで消されていたため、これはエロゲーとしてアウトだったと思います……


声優さんに関して。

もう完璧かと。
リサのたるいしゃべり方も、今ではそれが彼女の個性って感じるようにもなりました。
(心の中では色々作ってるしゃべり方ってあんな感じなんだろうな~、みたいな)
この作品により自分は吉川華生さんのファンにもなりました。
泉ちゃんいいですね!
EDは、どうもトゥルーの扱いが悪すぎるのでここで補完って感じもしましたけど。
…EDがあるだけマシなのかもしれませんが。

学声の緑川さんも、キャラには合っているとはあまり思えなかったんですが、その演技力はさすがだと思いました。


原画に関して。

これはもう、至上最高レベルでしょう!
絵の構図は目新しい物が多く、非常にセンスが高いと感じました。
女の子の体もいい感じに肉がついていて激しく好みでした。

好きなCGは、「リサ膝枕」と、「学自室」の2枚です。
この人の描く子供は、ぷにぷにしていて本当にかわいいですね。
また「学自室」や「万華鏡」のCGの満面笑顔の学は、見るだけでせつなくなります…。


最後に要望。

「君望ファンディスク」みたいな、「カーニバル第一章」がやってみたいなーと思いました。
それはもう「カーニバル」であって、「カーニバル」ではないんでしょうけれど。