お話の在り方がしっかりしていた。これは主人公の人生を変えた、音楽との触れ合いを辿る物語。各ルートのヒロインも、その場面で主人公の隣に居てくれた人、という位置付け。途中下車ものシナリオとしては上出来では。
ただし人生をかけた主人公の音楽活動自体、至るまでの道のりは非常に地道であり、地味であり、時に年表のようなかっ飛ばしが連なるばかりで、これもリアルと言えばリアルなのかもしれないが、読み応えはなかった。
ミュージシャンにならなかった未来。
尾崎さんをはじめ、クラスメート達と楽しい青春を送った学生生活の一幕。
ミュージシャンとして売れ線路線にこだわらなかった未来。
香坂さんと過ごす、その先なんて知らない、バンドマンとして過ごす熱い今の描写。
ミュージシャンとして大成功を収めた未来。
才能の塊であった三日月という中身が陰過ぎる眩い光に、これからもステージで歌いあげてほしいという願い。
ミュージシャンとして金銭的な成功を逃した未来。
音楽を作るという行為が目的だからこそ、主人公は挫折しない。
結果がついてこなくとも、熱量は衰えない。
一番最初に迎えたのが、澄シナリオでした。これぞ求めた瀬戸口シナリオ。
絶望を覚えても、前に進もうとすることは止めない執念をガッツリ楽しむことができた。
印象的だったものと言えば、存在自体がブラックジョークな金田が。
妊娠騒動とか。
男女混合で性を感じないワチャワチャとしていた貧乏共同生活は微笑ましかったです。