とにかく人間関係の表現が素晴らしい。一章で構築された人間関係が二章でまた新しくなったりもしていて、目が離せない。日常シーンのコミカルさとも相性が良く、話に入り易かった。対称的に各ヒロインのシナリオは重く、みんな凄く読み応えのあるものばかり。印象的だったのは、菜穂と楓子のシナリオ。不器用な楓子が心を開いていく様は、最高にニヤニヤさせられた。メインヒロインだけあって、菜穂の存在感も凄まじい。ちょっとアホっぽい所のある明るい可愛い面と、彼女の抱えるものの大きさの対比がせつなくて仕方ない。声の相性も抜群だった。
数年前。
コミケ会場で、私はこのソフトの存在を知りました。
サントラか何かを買ったんですよ。確か。
当時はエロゲのサントラというと一般流通していないのが殆どで、このようなイベントでないと入手するのは難しく。
ネット環境を持っていなかった私は、会場を歩き回り見境なく音源の名前がつくものを買い漁っておりました。
このCDには、かなり衝撃を受けました。
1コーラスしか入っていなかった、そのブランドの2作目となる新作の主題歌。
ドラマチックで美麗なイラストにも惹かれましたが、その曲を聴き、一発で落ちました。
―― これは、絶対やるしかないって。
それから時は数年経ち、このソフトはワゴンへ。
何でもバグがありすぎて、ブランド倒産してもバグを取り除くためのパッチを完全には配布しきれなかったという伝説だけが残ったそうで。
でも私は信じてました。
これは絶対面白いと。
こんな美しい曲がクソゲーの主題歌であるはずないと。
思い込んでいました。
勿論、即購入です。
ようやく本作をプレイすることになり、感無量でございますよ。
今、美しい思い出にヒビを入れる時!
色々な期待を込め、ゲームを起動した結果。
普通に神で困った件について。
何これ超引き込まれる。
システムや演出もちょこちょこ凝ってて、凄い頑張ってます。
中でも面白かったのが、「ないしょシステム」という独自の見せ方。
物語を進めていくうちに、主人公はヒロイン達と様々な秘密を共有していくことになります。
例えばそれは、パンツの色だったりという談笑できるレベルだったり。
キスをしてしまったという、恋に纏わるものだったり。
それを、これまた様々なタイミングで他のヒロインに詰問・・・といっても
そんな切羽詰るような場面ではありませんが、そういうのを受ける場面が随所に出てくるのです。
ヒロインAさんに、「何かあったのー?教えて教えてっ」と聞かれ、答えるかどうか。
そこでヒロインBさんとの秘密をばらしちゃうかどうか。
イベントの起こる頻度が高めですので、軽く冷や汗です。
ただ読み進めていればいいって訳ではなく、こういう形で常に選択を自分で考えなければいけないと自覚させられるのは、正直久しぶりの感覚だったかもしれません。
Yes or Noという二極化は、分かりやすさだけなら特化物です。
エフェクトもコミカルで、「ないしょ選択まであと○クリック!」みたいに出てきて視覚もめちゃくちゃ楽しめました。
と。
これだけですと、ラブコメ物のように見えるのですが、本作のテーマはめちゃくちゃ重いものだったりします。
主人公には幼馴染の女の子がいました。
菜穂という同い年の子で、菜穂は主人公にホの字です。
主人公もそれを理解しています。
そんな二人がこの度、親同士の再婚で家族になりました。
ちなみに主人公の父さんは二度目の再婚だそうで、主人公にはその時点で義理の姉ちゃんが一人いました。
主人公より数ヶ月早く産れていたということで、菜穂もまた主人公のお姉さんということになります。
心情的に複雑ですが、まぁこれはこれで仕方ないと。
学園内でもカップル公認な雰囲気満載なんですが、主人公と菜穂は男女の仲が進むことなく今日も連れ添うのでしたとさ。
そんな日常は、突然崩れることになります。
菜穂が倒れました。
原因は、遺伝子的なレベルでの病気でした。
菜穂の父さんの死因も、実はそれだったそうで。
現在治療法は見つかってません。
主人公呆然。私も呆然。
これ初っ端ですからね、まだプレイしてクリックもそんなしてないくらいですからね。
わー。
菜穂の担当医は、主人公の親戚のお姉ちゃんでした。
また姉ですよ。凄い姉ゲーですね。
お姉ちゃんも頑張って最善尽くすから、気を確かにもってね!と言われますけれど、いやぁきついです。
貧血で菜穂が倒れる度、主人公はどうしたらと葛藤をします。
菜穂の父さんとちょっと症状が違うらしく、菜穂はまだ自分が重態なことを理解していません。
普段の生活でも支障が出るようなレベルにまでは弱ってはおりませんので、この真実に心を痛めているのは主人公だけです。
好いてくれている相手がこんなんで、もうね。
それでも日々は過ぎていくばかりで。
主人公を取り巻く環境も、変わることはありません。
菜穂の体調という些細では決してないのですけれど、それでも「環境」という枠では些細という程度になってしまう問題。
主人公を取り巻く環境の構成員。
ブラコンで、すぐ主人公に甘えてくる義理の姉ちゃん。
姉ちゃんはパティシエを目指しているのですが、料理はからっきしといいう不器っちょさんです。
主人公のペースをかき乱すハイテンショさ、姉ちゃんも主人公に惚れているのですが主人公は姉ちゃんの気持ちには全く気づいていません。
主人公にとって、菜穂は幼馴染だったのですが姉ちゃんはやっぱり姉ちゃん止まりだったのです。
そこら辺姉ちゃんせつないです。
しかしですね、ここで姉ちゃんを主人公が女として扱ってしまうイベントが起き。
お酒で酔っ払った姉ちゃんが暑い~とスッポンポンになって寝ちゃいまして。
慌ててパンツを穿かせるものの、姉ちゃん主人公にベッタリでとれません。
仕方ないなーと主人公自身お酒も入っていたこともあり、そのまま二人で寝ようとしちゃいます。
しかしここで、空気を読んだ主人公の愚息が屹立してしまいます。
姉ちゃん起きんなよーと、ここで姉ちゃんをおかずにする主人公最低です><
・・・こいつ、菜穂の気持ち知っててコレかよ・・・。
主人公を取り巻く環境の構成員、その2。
菜穂の主治医でもある、親戚のお姉ちゃん。
実は主人公の許婚でもあります。
眼鏡で巨乳なスタイル抜群のお姉ちゃんと主人公は、ちょこっと年の開きがあるそうで。
それもあり、主人公達の爺様が決めたという許婚ってのにお姉ちゃんは当初めちゃくちゃ反対しておりました。
何の罪もない、主人公に当たるくらい。
それも今となっては懐かしいもの、と二人してお酒を飲み。
お姉ちゃん潰れ。
お姉ちゃん寝かしつけ、主人公は風呂に入り。
そこに酔っ払ったおねえちゃんがマッパで乱入。
そんでもって(ry
・・・こいつ、菜穂の気持ち知っててコレかよ・・・。
主人公を取り巻く環境の構成員、その3。
主人公のクラスの委員長。
委員長は、ひょんなことで菜穂の容態のことを知ってしまいます。
委員長は人付き合いが苦手な、堅物さんです。
クールで、菜穂曰く目が怖いとのこと。
根は悪くないんですがね。
お友達と呼べる人間がいない委員長にとって、主人公は初めてできたお友達でした。
委員長が赤裸々な告白を曝け出す彼女の日記を象ったシーンが出てくるのですが、いやぁ素直な子でしたよ。
そんな彼女と主人公、何と体だけの関係を作ることになり。
まさに、「は?」って感じです。
事の発端は、主人公が委員長のお仕事を手伝った時でした。
突然の豪雨に傘が無く帰るのもままならなくなったのですが、そこで主人公は委員長の意外な側面を発見しました。
何と、彼女雷が怖いんですって。
ふるふる震える彼女を安心させるためにも身を寄せ合うという、お約束なイベント発生でこちらはニヤニヤするしかありません。
しかしここで、空気を読まず主人公の愚息が屹立してしまいます。
それを悟った委員長が、しましょうかと。
彼氏とかそういうのいないしいんじゃね?的な感じで。
おい貞操観念おい。
一応委員長の日記続編で、彼女が主人公を大切に思っているから体を許したというような描写はしっかり出てきます。
それが主人公に伝わる訳ではないのですけれど。
結構仲良かったのに、この一件で一気に二人の仲はぎくしゃくしてしまうことになります。
普通のお友達じゃなくなったという関係が如実すぎ、ちょっと気まずいです。
実は委員長に、お友達だよ!と念押しのようなものをされ、男女の仲としての発展を妨げられたところはありました。
それでも主人公、、しっかりと委員長を意識しておりまして。
・・・こいつ、菜穂の気持ち知っててコレかよ・・・。
それにしても、凄まじい間男っぷりです。
甲斐性ありすぎて、もはや感嘆な類でございます。
何かあるとすぐ勃起しますし、昨今の不能主人公達とは一線を引いた素晴らしい精力です。
ここまでクーララが勃ったって騒ぐ主人公も珍しいと思います。
そんな彼が、ここに来て猛烈な悩みを抱きことになりまして。
それがこちら。
。。。( 俺は好きなんだろか? )
。。。( それとも皆を性欲の対象としてみてるだけなんだろうか・・・・・・? )
ィ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙t,
彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
イ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r''ソ~ヾ:;;;;;;゙i,
t;;;;;;;リ~`゙ヾ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ i,;;;;;;!
゙i,;;;;t ヾ-‐''"~´_,,.ィ"゙ ヾ;;f^! / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ト.;;;;;》 =ニー-彡ニ''"~´,,...,,. レ')l. < おまえは何を言っているんだ
t゙ヾ;l __,, .. ,,_ ,.テ:ro=r''"゙ !.f'l. \____________
ヽ.ヽ ー=rtσフ= ; ('"^'=''′ リノ
,,.. -‐ゝ.>、 `゙゙゙゙´ ,' ヽ . : :! /
~´ : : : : : `ヽ:. ,rf :. . :.: j 、 . : : ト、.、
: : : : : : : : : : ヽ、 /. .゙ー:、_,.r'゙: :ヽ. : :/ ヽ\、
:f: r: : : : : : : : !丶 r-、=一=''チ^ ,/ !:: : :`丶、_
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〃: :j: : : : : : : ゙i `ヽ、..,,__,, :ィ":: ,ノ:: : : : : : : : : : : :\
ノ: : : : : : : : : : :丶 : : ::::::::: : : : /: : : : : : : : : : : : : : : :\
こいつは大物になるよ。
表示されるグラフィックでは奥手なショタ眼鏡にしか見えないというのに。
こいつはすげーよ。
そんな訳で、次から次へとごった返しなイベントが連続して出てくるので、休む暇がありません。
だがそれがいい。
主人公の下半身に纏わる話ばかりを上げてしまいましたが、シリアスな場面もわんさかなんですって。
マジですって。
茶化しましたが、ないしょシステムも実はめちゃくちゃ重いです。
菜穂の病気のこととか、きっついです。
でもですね。
結局秘密になんて、できないんです。
姉ちゃんに菜穂のことで隠してることを教えろと言われ、私は黙っていられませんでした。
姉ちゃんだって家族ですもん。
姉ちゃんだって菜穂のことが心配でたまらないの、分かるんですもん・・・。
一度、昏睡してしまい菜穂の容態が一気に悪化してしまった時がありました。
菜穂がどうなるか。
憔悴していく主人公、お姉ちゃんからの病院来て!コールで駆けつけはするものの。
意識は戻ったがまだ目覚めていないという菜穂の前、泣き崩れる主人公の独り言で菜穂は自身のことを知ります。
気づかぬうちに起きていた菜穂と二人、ただ涙するシーンはとても痛々しかったです。
主人公の女関係が整理できない中、目を覚ました菜穂が行動に出たのはとても早かったです。
菜穂が退院して、すぐでした。
夜。
主人公の部屋に入り、着ていたパジャマを脱ぎながら菜穂は涙ながらに語ります。
自分が死ぬかもしれないということ。
でも、主人公には覚えていて欲しいということ。
忘れないでいて欲しいと、いうこと。
菜穂
「お願い! お願いだから……わたしを……
わたしをけーくんだけのものにして……!」
菜穂
「けーくんとは家族でいたくない!
けーくんとは姉弟になりたくない!」
そうして、「愛してる」という菜穂からの告白を主人公は受けました。
それは、主人公が避けてきた菜穂との関係です。
主人公は、ここまで来ても答えが出せておりません。
ただ、菜穂の気持ちを無為にするというのもできませんでした。
泣きながら身を委ねてくる菜穂の体を、そっと受け止める主人公。
そこに現れる闖入者。
「菜穂、あなた……どうして……」
母さんでした。
菜穂の母さん、主人公にとっても、義理の母さんに値する人。
……菜穂の発作は、その後すぐ起きました。
お母さんに見られたというショックか、偶然か。それは分かりません。
ただ菜穂が再び倒れてしまったというのは事実なんです。
菜穂がこうなり、家の雰囲気も重くなり。
結果、主人公は家を出ることになりました。
姉ちゃん達、委員長、菜穂。
全ての問題を置き去り。
主人公は、逃げました。
・・・それから一年。
一人暮らしにも慣れきった頃、父さんから連絡が来ます。
―― 菜穂が死んだ。すぐ帰って来い。
↑ ここまでプロローグ。
ドラマチックって、レベルじゃ、ありませんでした。
二章に入ってからは共通部分に数ある選択肢がちょっと面倒なんですけれど、それでも彼女たちと過ごすことで積み重なっていく思いや優しさってのは、かなり実感できます。
男女の関係になるまでの道が結構長く、逐一が丁寧でした。
悩み、それを昇華していく姿の描き方に妥協がなく、だからこそきちんと結ばれた後の関係ってのが輝いて見えます。
素晴らしい、としか。
こんなに綺麗な構成、滅多に見ません。満足度は非常に高いです。