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minoruさんのサツコイ ~悠久なる恋の歌~の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
サツコイ ~悠久なる恋の歌~
ブランド
ALcotハニカム
得点
82
参照数
703

一言コメント

さっくり遊べて、めちゃくちゃ良かったです。上げられている二つのテーマが非常にしっかりしているため、どのルートも魅力的な仕上がりになっていました。見せ場としてのシーンの盛り上がりも素晴らしい。キャラクターもコミカルで可愛かったです。何を書くにしてもネタバレ直結のため、こんな薄っぺらい賛辞でしか表せないのが悔しいくらいです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

攻略順は新田さん→直さん→悠。
新田さんルートの家族愛と直さんルートの死生観を融合させた悠ルートの成り立ちは、グランドEDらしい壮大さがあると思いました。

正直新田さんルートに関しましては、起承転結の「起」だけをとりあげたら間違いなく神ゲーと信じて疑わないクオリティなのに、「承」を差し置き物語が光の速さで「転」展開に突入してしまい、呆気に取られる間も無く終「結」してしまったのが非常に気になり、ミドルプライス云々を差し置いた尺の采配が大失敗しているとしか、という否定的な感想をまず抱いてしまったのですけれど。
悠が死ぬの、早過ぎかと。

新田さんと悠と、三人で築いた家族の絆。
加納さんとの間にあった確執。
終盤、ずぶぬれのまま抱き合い、加納さんのことを憎いけれど愛しかったとイズミが新田さんに語るシーンは、凄く良かったです。
加納さんの望みを継いで学生を続けるイズミの意志に、今までなかった二人の絆を関じることができました。
性急さという不満は、このずぶぬれシーンからラストにかけての一連のシーンの美しさで、相殺された印象です。
せっかくのカニバシチュが全く性的でなかったのは、ちょっと勿体無かったですかね。


次に遊んだ、直さんルート。
幼馴染みたいなポジションの子だと思っていたのですが、イズミとの付き合いは年数的には結構浅かったことに、驚きました。
ルートに入ると同時、回想にて出会いから仲良くなるまでの全ての情報をきちんと描写して貰えたおかげで、彼女とイズミが如何に微笑ましい関係だったかということも分かりました。

他ルートでの直さんは、イズミにとって終わった恋の相手という認識で終わっています。
新田さんルートできちんと別れを告げたい的な相手として直さんを思っている辺り、それでもイズミにとって大切な存在でないことには変わりないというのは、よく伝わってきました。
一方の直さんは、告白して貰えるのを待っていたとか、一途で可愛らしい乙女だったのですけれど。

直さんルートと言えば、加納さんの扱いがコミカルで、新田さんルートでのシリアス振りを見ていたこともあり驚きました。


最後、悠ルート。
兄と妹のイチャイチャっぷりが最高に可愛らしかったです。
人魚なので血縁での交尾が当たり前という設定の上で、家族愛か恋愛か分からないけど悠が一番大好きなことに変わりないというイズミの純愛っぷりには、心打たれました。
最後、歌い終わった後、一生懸命イズミを呼ぶ悠のシーンとか、彼女のことが愛しくて仕方なかったです。

これまでのシナリオのフラグも綺麗に回収し、イズミが相羽を殺さなかったからこそ訪れた展開だったと言うのも、凄く良かったです。
助太刀に入ってきた相羽の表情グラが爽やか過ぎたのは、若干鼻につきました。