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minoruさんのローズガンズデイズ ラストシーズンの長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
ローズガンズデイズ ラストシーズン
ブランド
07th Expansion
得点
85
参照数
195

一言コメント

07ブランドの作品は非常にアクが強い。作品の中で訴えてくるテーマも道徳なものばかり。 本作は過去作に比べ、そのポテンシャル、特に思想の訴えが異様に高い。なるほどなあって思いながら遊びました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1~lastまでひっくるめての評価。今を生きる若者のために当時の若者が成し遂げたこと。
時代を作るのは若者であるということ。
高齢者への人工比率の傾きが激しい現代日本において、この訴えは非常に未来があり、能動的ですばらしいと思いました。ジャンルとしては政治的思想なので、そこら辺冷や冷やすると言えばしますが。

四分割された物語について。
ツェルやアランといった新しい勢力を視点として置くも、物語はあくまでローズガンズデイズ、ローズを中心に展開していくのが面白かったです。
子供たちがきゃっきゃしつつも大業成し遂げていくツェル視点は、ひぐらしを思い出しました。厨二度高いツェルの言い回しなど、竜騎士さん節も炸裂していて凄く好きです。

非戦闘員である女子供ペット系に手を下すのは外道のやること下衆の極みみたいな頭でいたので、season3終盤からの怒涛の鬼シナリオには目ん玉ひん剥きました。
マフィア同士の抗争という男の子の憧れる硬派さ消し飛びました。
よくこんな残酷な展開をぶっこめるなあと。竜騎士さんは天才だと思いました。

また、作中で犠牲となったステラやオリバーのことで、メイン枠張っていたキャラのその後の扱いが、それこそ愛に溢れていて感動しました。
創作において、展開のために登場人物を利用するという概念はどうしても付きまとい、あまりにもそれが表立つ印象を持ってしまうと鼻について云々という作品の仕上がりとは別の観点で感情的な負を抱きがちなのですが、ローガンについては退場したキャラはシナリオというより他のキャラへ大きな影響を与え、意志や行動に変革をもたらしていました。
オリバーの仇を、ワンダリングドッグの三人でしっかりとっていたこと。オリバーが得意としていた足技をもって、ツェルがモーリスを撃退したこと。感動しました。

最終決戦については、オールスターを揃えた熱さは勿論、作中でも最強キャラとして表現されていたレオの一人勝ち展開を持ってこなかったのがとてもバランスよかったです。
あくまで彼は台座に座るローズのサポート、アルフレッドとはガチンコしましたがケイレブともメインの見せ場としての戦闘をレオには任せていなかったこととか。よかったです。

マダム・ローズの幕引きで語りは終わってしまうため、樹里の世代まで飛ぶまでの間、その後のプリマヴェーラのみんなの人生を追わせてもらえなかったのは寂しかったです。
とてもきりがよいので、パッケージ作品としては文句ないです。ひぐらし礼のようなサンクスディスクが出てくれていたらなあと。

07過去作のキャラが、ポコポコ出てきたのはファンとしては凄く嬉しかったです。
弱りきった様子で飼育されていたバトラーとか、うみねこのセルフオマージュですかね?そういうの含めての遊び心、楽しませてもらいました。