ErogameScape -エロゲー批評空間-

minoruさんのSi-Nis-Kantoの長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
Si-Nis-Kanto
ブランド
Ands
得点
77
参照数
597

一言コメント

ホモることが当たり前の世界なので、男同士という背徳感はゼロ。主人公は完全に雌扱い。ただし主人公総愛され系総受けというキーワードに縛られると勿体無いレベルで、主人公を差し置いて成り立っている男共の関係が非常に綿密なので、そこを期待しても充分に楽しめる作品。また、これは本作自体に罪は全くないのだけれど、近年のホモゲーヒット作はマフィアを題材にしたシリアス要素を取り入れている作品があまりにも多すぎるので、雰囲気や世界観、シナリオのテンション含め正直食傷気味。各ブランドさんには、他のテーマにも積極的に手を伸ばして貰いたい所。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一目ですぐ判断できるレベルで、共通ルートから個別ルートに入った際ライターが変わっていることが理解できた。
共通ルートである学園生活描写の魅力は、正直ゼロに等しい。
主人公のキャラ描写もぼんやりとしていて(そこを逆手に取ったのが、エシカシナリオで鴻上が主人公につっこんだ彼の性質でもあったのだが)、まず彼がどういう子なのかっていうのも上手く掴めなかった。

主人公と言えば、あくまでもヒロインのポジションから動かなかった徹底さは凄かった。
ユーゴルートもカルロルートも、物語の中心は常に組織であり、それこそ物語の主人公も組織の中心であるユーゴとカルロだった。
あくまでヒロイン、庇護の対象として守られるマキの存在を主張させ過ぎることなく、視点を主人公に留めず群像劇寸前の様々な視野で話を進めていった結果の広域な表現は、この作品の魅力だと思う。


そもそも恋愛ゲームによくある、個別ルートに入った途端主人公と攻略対象二人だけの世界が構築されるということが、本作ではまずなかった。

攻略対象はあくまで攻略対象の世界を生きていて、そこに関わる主人公が彼等にあらゆる影響を与えていく描写は、とにかく丁寧。
マキがいたことで組織が、まとまっていったカルロルート。
マキがいたことで組織が、崩れていったユーゴルート。
二つのルートの対比も面白い。

エシカルートに関しては、ユーゴやカルロの特性も生かした全キャラ大活躍な終盤など、最終シナリオとしても非常に映えある出来だった。

恋愛要素で言えば、カップリングの温度等含め雰囲気全般オーソドックス。
主人公総愛され系総受けダダ甘ムード全開。
サービスシーンは、挿入無しのスキンシップ含めると数だけなら絶大な量。
積極的に取り入れてくれた姿勢は、喜ばしいことこの上ない。

主人公が絡まないものでも、イベントは多々。
ホモゲージャンルとして衝撃的だったのは、攻略対象キャラ(攻め)が共通ルートでレイプされる展開がとり込まれていたこと。
シーン自体はスキップできるのだけれど、発生するイベント自体は強制。
素晴らしい。

本作で一番の失敗は、ゲーム主人公総愛され系総受けテーマを選んだことだと思う。
リバ当たり前カップリングぐちゃぐちゃゲームとして開発した方が、大勢のユーザーを獲得できたのでは、と邪推してしまう。