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minoruさんの放課後の不適格者の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
放課後の不適格者
ブランド
Nostalgic Chord
得点
62
参照数
1436

一言コメント

新ジャンル:お通夜ゲー。あかべぇ系列のブランドカラーってのがあるからかもですけれど、奇抜なキャラクターデザインで異能力持った者同士によるカッコイイ系バトルものではなく、主人公が置かれている残酷な状況下でひらすら葛藤と慟哭にくれる鬱要素をメインに抑えた作りと宣伝だったら、もっと変わった見方をできたかも。また、設定自体はR18方面でかなり映えるものだったので、そこら辺フェチ特化した作りになっていたら、更に化けたかも。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・不満点

世界を救うために、担任教師含めたクラスメートを全員殴り殺さなければいけないという主人公の立場を、どうしてぼかしたまま宣伝していたのでしょうか。
むしろこの設定こそ、前面に推すべきでしょう。
オフィシャルホームページに掲載されている、完全ポエムなストーリー紹介こそ不必要でしょう。
色々とセンス悪いです。

死に対する達観とか、抗いとか、そっちの方面はあくまで殴り殺される側のキャラクターの問題であり、主人公はあくまで殴り殺す側なので、そこまでポイント置かれなかったことは気にはなりませんでした。
殴り殺される立場のキャラクター視点もそこそこは多いのですけれど、群像劇調な作りまでは行っていませんでしたので。

主人公ですが、物語開始時点で既にクラスメートの半数ほどを殴り殺した後だったこともあり、かつてサッカー部の主将を務めたリアルの充実している様が見るも無残だったのは、色々面白い鬱要素だと思えました。
派手なバトル描写なんてあっても無くてもどうでもいいので、主人公が大切な級友達をボコスカ殴っているシーンの詳細を、主人公の拳に伝わる級友の肉の感触を、そういうの、ひたすら濃く突き詰めてくれていたら、凄く好きなソフトになったでしょう。

「殴り殺さなければいけない」「脳を潰さなければいけない」という殺し方についての縛りがある以上R18だからこそのグロ表現に、もっと力が入っていた内容でしたら。
素晴らしい個性が、生まれたでしょうに。
ここまでお膳立てたグロ設定をR18方面で生かさなかったのは、残念で仕方ありません。
主人公の置かれた状況の悲愴さを考えれば、更に映える要素として輝いたでしょうに。



・その他

サブキャラ同士のカップルがとても可愛かったです。
物語が始まった時点で、既にくっついていた神田と三枝。
ずっと両片思いだったけど、死を間際にして思いを通じ合わせられた石川と前田。
今回の件を機に惹かれ合い、カップルとなった豊島と桑田。

先生ルートの神田と三枝が同時に変身を遂げ2対1になった状況・委員長ルートの豊島と桑田が同時に変身を遂げ2対1になった状況は、戦闘シーンの数を減らしたいのかな?という邪推をしてしまいました。
それくらい、戦闘シーンに関しましては魅力が無かったです。


主人公がパートボイスだったのは、かなり違和感ありました。
視点の変更が多く、主人公以外のサブキャラの視点の時等にだけ声が入るという仕組みは理解できたのですけれども、そもそもの視点変更時の尺自体が短いので、いきなり声が入ったと思ったらもう入んなくなっちゃった、という程度の印象にしか留まらず、声で主人公というキャラの魅力が増す、といった効果は微塵も感じられませんでした。
主人公の置かれた立場が特殊なこともあり、全編フルボイスでも問題無かったと思います。
戦闘シーンを少しでも盛り上げたかったのであれば、それこそ視点が主人公の時でも関係なく音声を入れて貰えていれば彼等の必死さももう少し味わえたと思いますし、友人や恋人を手にかける主人公の悲しみだって、もっと重く見てとれたかもしれません。