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minoruさんの裸執事の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
裸執事
ブランド
マーダー工房
得点
83
参照数
4330

一言コメント

いいとか悪いとか関係なく、宣伝文句として呷っていたものとはどうにもズレた路線という印象が強いです。頭のネジゆるゆるなお気楽おバカゲー想像していたのですけれど、まさかの鬱方向なダーク物でした。純愛シナリオも用意されてはいますが、そういう意味での和姦はありません。プレイは主人公が執事を虐げるきっつい系ばかりです。隠語だったりアヘ顔だったりも多いです。選択肢の判定が厳しいので、攻略の難易度はめちゃくちゃ高いです。EDに関わりのないイベントスチル有りのサブイベントも多く、やりがいはかなりあるでしょう。女性を交えての3Pというのはホモゲーではとても珍しく、見応えはかなりありました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

とにかく攻略難易度が半端無いです。

キャラEDを狙う際、一般的に見て好感度が上がりそうなものは選んではいけないのです。
褒めるか貶すかなら、貶さなければいけません。
声を掛けるか無視するかなら、無視しなければいけません。

主人公は御主人様ですので、執事達との距離感をしっかり意識しなければいけません。
執事は人間ではありません。
御主人様に仕える、謂わば下僕です。
そこの線引きをしっかり引いた上で、お情けも容赦もかき捨てないと駄目なんですって。

それで得られる幸せは、どんなもんかと。
いやぁ。
結構な、唖然度でした。

ちなみにそこで甘い顔しとくと、ラブラブ雰囲気EDにもいけるキャラもいますが、ルートとしてはBADED扱いだという。
細かいところまで容赦ありません。



攻略が難しい理由の一つとして、何が正しくて何が間違っているかっていうのがぱっと見でさっぱり分らない選択肢も多いというのがあります。
プレイ中は、とにかく手探りで遊ぶしかありません。
選択肢自体の数もそこそこあるので、この作業はつらいとしか言いようがありません。
BADの回収すら、ままなりません。
全27個のEDをどうやって紐解くか、正直攻略見ながらじゃないとやってられないと思います。


プレイ期間は一カ月なので、一ルート自体は長くはありません。
一日二回MAPを移動できるチャンスがあるのですが、基本は最初の一回目の時しかイベント起こりません。
なので、一日の経過はサクッサクです。



売りだと思われる肝心のエロースシーンは、半月くらい経たないと起こりません。
日常シーンが殆どないヤリゲーだったらどうしようという心配皆無でした。
全然エロ尽くしじゃないじゃないかこの野郎という気分です。

サービスシーンのテキスト量はそこまで多く無いのですが、ちゃっちゃと進むので私はちょうどよかったです。
基本的に主人公がひたすらマシンガン言葉責めしてて、執事がひぎいいいぃぃってなってんのばっかでした。
完全上から目線でいられる優越感は素晴らしく、作品のコンセプトに合っていてよかったと思います。
主人公が執事に対し「奉仕」することは、ありませんでした。

従属は絶対で、執事が御主人様に逆らうことはどんなことでも一切許されません。
執事同士で陰口言い合うとか、そういう生温い関係もありません。
上下の関係の強固さがあるからこそ、主人公が好き勝手できるってのはあります。



っていうか、この主人公めちゃくちゃいい性格していました。
こいつ元々女の子にモテモテのヤリチン野郎だったんですよ。
彼女はいません。
貧乏学生でして、ご飯奢って貰う代わりに体提供みたいなことを学部の女の子にしてるんですって。
結構可愛がられている模様です。

幼馴染のさやかちゃんは、そんな主人公の下の軽さにぷんすかしていらっしゃるんですけれど、いやぁ。
この子もまた、結構ないいキャラでして。
女性の愛らしさと鬱陶しさの詰まった、素晴らしい性格付けをされております。
この作者は女性に恨みでもあるのでしょうか。
勘繰りたくなるくらいです。



そんな訳で、主人公はホモではありません。
でも執事達をめちゃめちゃにします。
彼が満たしていたのは、己の征服欲とサディスティックな性癖でした。
自分より年上で頭の良い美青年や自分にはない美しい筋肉を持つ青年だったりを、何の障害なく自由にできるという環境が彼を暴走させます。
過程としましては相手を虐げる行為として性行為を選んだ主人公が、結局それに対する違和感を持たなくなり、執事相手にズコバコズコバコするようになったという所でしょうか。
この路線は、かなりしっかりしております。


この主人公の調子のつき方が、御主人様という立場だからこそできるっていう彼等の世界の根元でして。
どんな無茶でも執事は受け入れるので、主人公もますます残虐な行為に走ります。
何処にでもいる普通のヤリチンが、屋敷という閉鎖空間でこんな鬼に変貌してしまうとはと、びっくりしました。

物珍しかったり自分の指向に合えばオッケー的なノリも強く、主人公は執事同士を絡ませたりもします。
それを見て主人公が自慰をするというシーンはかなり多かったです。
自分たちのプレイを他の執事に見せつけるというシチュも目立ちました。


面白かったのは、賢者タイムだからか知りませんが射精したら主人公さっさと何処かに行っちゃうんですよね。
情事後の語らいとか、ありません。
めちゃくちゃあっさりしています。
あれが男性のリアルってやつでしょうか、勉強になりました。


そうそう。
声優さんはですね、みんなキャラにはとても合っていたと思います。
でもサービスシーンに関しては、ちょっと役者不足だったかなーと。
もっと叫んで欲しかったです。
もっと苦しそうにしていて欲しかったです。
エロゲ声優の勢いありまくりなあへあへボイスには引いていたんですが、あれがちょっと恋しくなりました。




以降はキャラ語り↓







・藤堂

まともなキャラEDが彼しかなかったのですけれど・・・。
何だかんだで御主人様である主人公との関係も、一番まともだった気がします。

こいつが主人公と付き合ってると勘違いしたエピソードには悶えさせられました。
好きとか愛してるとか言ってくれたじゃないっすか?! って。
ヤリチン主人公は、場を盛り上げるために口にしていただけだそうです。
最低ですな。

純愛EDの主人公姫だっこスチルは最高でした。



・一ノ瀬

茫然としました。
こいつ、可哀想過ぎるんですけれど・・・。

口下手で、いっつも御主人様とは何話せばいいか分らなくてで。
植物が好きで、お庭のお手入れが趣味で。
主人公、俺に構わないで庭弄るとは何事かと、彼が大事にしていた庭をぶっ潰して。

唖然となりました。
何この展開。
素直に、鬼畜だと思いました・・・涙がちょちょ切れます・・・。

こいつの場合どのタイミングで主人公に惚れたってのはよく分んなかったです。
恋っていうか、従属レベルがとにかく高かったので、もう奴隷方面になっちゃうかと思いました。
エピローグの主人公が与えた指示を守り続ける様がイっちゃってて、いやぁショック受けました・・・。


対しの、純愛ED。
エロ無し。キス止まり。
こ、これがですね! とっても良くてですね・・・っ!!!

この子が人間として成長し、主人公と同じ目線で生きていきたいと決意する場面にはきゅんきゅんさせられました。
エピローグでちこっと変わった髪型が、めちゃくちゃツボに入りました。



・小峰

ぱっと見で、執事の中なら一番好みの外見の子でした。
実際に攻略してみて、さらに好きになりました。
こいつ超可愛いです。
声もめちゃくちゃタイプ。

前情報通り、シナリオのメインは関係性の変容でした。
殻の中の小鳥の、アイシャシナリオを思い出します。
ノリはあれなんですが、如何せん本作は主人公がはっちゃけ過ぎだったという。

こいつは執事のくせに上限関係ノリが緩く、主人公のこともちゃん付けで呼ぶ上めちゃくちゃベッタベタしてきます。
ノリの良い関西人にこっちが合わせると、何とお笑い芸人EDになったりとお遊び要素も強く。
純愛EDも、これまたきゅんきゅんもの。


その雰囲気をぶち壊すTRUEED・・・。
友人ノリを続ける性根を叩きのめし、あくまで御主人様と執事という立場を教え込むのがですね。
彼の夢を潰すことに、繋がってましてね。
とにかく不憫でした。

こいつは、初期から主人公好き好き言ってました。
何で好きかよく分りませんが、べた惚れでした。
他の子等とは毛色が違ったんですよ、バイだのホモだのという意味でも。
性格も明るくて、やりたいことってのを自分で持ってるしっかりした人でした。
執事って職にも拘りを持っている訳ではなく、あくまで彼の場合人生の通過点としか捉えていませんでした。


主人公は、彼の夢を、人間性を、とことん壊しました。
彼の全てをへし折りました。
最後ひどかったです。
絶望って、こういうことを言うんだなー的な。
もう人を好きになれないという彼の最後の台詞が、涙を誘います・・・。
精液逆流大量嘔吐からのコレとか、居た堪れないわ何だわ・・・。



・有里

ただのショタ担当かと思いきや、メンタルヘラヘラと兼任されとりました^^q
病んでいらっしゃいます。
病んでいようが関係なく、主人公はボッコボコにしますが。

彼の心の病気との主人公の付き合い方は、とにかく乱暴です。
病んでるんだか何だかしらねーよと、御主人様という存在の優先順位を体で叩き込みます。
それで淫ら方面にこいつの気が回りあびゃびゃびゃになっちゃった! っていう展開はうわぁでした。
何かこの二人はそれはそれで上手くいっていたので、あぁこういうのも有りかという気にはなりましたけれど。

っていうか一番の衝撃が、女装ネタでして。
オナホ扱いも色濃く印象に残っておりますが、これがホント凄かったです。
ショタ担当なんで、容姿はそりゃもう可愛いですよ。
それはいいんですよ。

何故か、主人公も女装をしてレズビアンごっこ的なのを始めるんですよ・・・。
何これ新しい・・・。
ショタはメイドで、主人公はお嬢様的なの。着るの。
主人公完全にお嬢様言葉で、めっちゃノリノリなの。
何これ面白い・・・。


純愛EDでは、病気を乗り越え前に進みたいという方向性で彼も変わります。
雰囲気としては、一ノ瀬と同じような感じですかね。
幸せになってくれて良かったです、TRUEがTRUEだけに。



・佐久間

純愛EDはいい意味で、お互い恋に落ちていく様を描いたテンプレート物でした。
ラブラブしい雰囲気にニヤニヤさせられます。

TRUEではそれをぶっ潰すんですけどね。
分かってはいたんですけどね。

友達感覚の性根を潰す小峰シナリオとの違いとして、佐久間自身は執事としての風格をしっかり持ったキャラというのがあります。
主人公は童貞で恋人を持ったことのない佐久間の中で生まれた恋心を疑い、性の処理も執事の仕事と彼が考えられるよう躾ました。
何だかんだで思い合っているので、小峰や有里シナリオに比べたら主人公の荒行も微笑ましく思えるような、思えないような・・・。

少女漫画めいた丁寧な心情描写と、やってることのはっちゃけ具合の差は面白かったです。