人が死んで悲しいのは当たり前。それで泣けるのも当たり前。この作品には笑顔の涙をいっぱい貰いました。たくさん流させて、もらいました。
悪人がいない本作の世界は、とにかく綺麗です。
綺麗なので、居心地もいいです。
それを刺激がないので退屈と感じるか、優しい空気に癒されると感じるかは人それぞれ。
また、本作の魅力としまして作中できあがる主人公とヒロインというカップルの、ほんわかラブラブ加減が半端ないって部分がございます。
恋愛ゲームのシナリオパターンの多くに、カップルとして成立するまでの展開を楽しむと言うものがあります。
紆余曲折を乗り越えヒロインと結ばれる、その過程がまず第一な節があるのは否めません。
昨今、そのヒロインと結ばれた後のお話は「アフター」という扱いでファンディスクだったり何だったり、物語本編とは別の立ち位置にある作品が多いです。
本作、ましろ色シンフォニーは、そんなカップル成立後のイチャイチャっぷりも含まれた上で成り立っていました。
恥ずかしいぐらいにお互いを思いあっているカップルは愛らしく、微笑ましく。
4組全て、全員メインヒロインと思えるくらいのパワーがあります。
だからこそつらかったのが、誰かと付き合うことでその子以外のヒロイン達がサブキャラになってしまうことです。
祝福されるのがつらいんです。
笑顔で応援されるのがつらいんです。
その子と幸せになる未来があるというのを知っているから、せつなくなりました。
兄妹という関係の、桜乃。
主人公の前でだけ素の幼い可愛さを見せる桜乃は、他ルートですとかなり大人びているように感じます。
話す言葉も的確で、クールな印象も強く持ちました。
野良メイドのアンジェ。
いつでも何処でも明るく騒がしいムードメーカーのアンジェは、恋を知り、主人を思うことでその女らしさをぐっと引き上げてきます。
コメディ要因とはかけ離れた少女と化したアンジェの姿は、とにかく愛しいものでした。
主人公と思いあう様を見ても、一番彼とお似合いなのはアンジェだと思います。
容姿とは裏腹に、凄く自立している美羽先輩。
しっかり者の美羽先輩のしっかりし過ぎている部分が浮き彫りになり、そんな先輩を支えるというシナリオは大変読み応えがありました。
どこか不安定な先輩にはかなりハラハラさせられまして、他ルートとの温度差も面白かったです。
頑なな優等生像を作りあげる愛理。
愛理も美羽先輩同様、不安定な少女です。
ただ彼女は美羽先輩程精神的な大人びやかさがないためか、子供の癇癪に見えてしまう部分があります。
そうやって解れてゆく愛理の姿は、めちゃくちゃ可愛かったです。
ヒロイン達、みんな魅力的です。
でもそれ以上に、彼氏彼女となった二人の雰囲気が最高に良かったです。
元々涙もろいこともあり、アンジェと愛理のルートでは始終泣きっぱなしでした。
彼女達の心が変化していく様子が手に取るように伝わってきて、ボロボロになりました。
読後感のほんわかとなる暖かさ、作品に求めていたものがきっちり返ってきた感があり大満足です。