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minoruさんの神学校 -Noli me tangere-の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
神学校 -Noli me tangere-
ブランド
PIL/SLASH
得点
86
参照数
927

一言コメント

黒魔術が題材になっているゲームと言えば、BibleBlackの知名度がずば抜けているでしょう。 題材自体が非常に淫靡である黒魔術の良さを、BibleBlackはしっかり描いていました。 神学校はどちらかというと、その魔術による呪い描写の方がメインです。 ホラーを意識した雰囲気には、否が応にも恐怖心を煽られてしまいます。 対しキャラ同士のいちゃつき度は結構高く、カプ萌え要素も多彩でした。完全リバーシブルですので、受け攻めの不満も残りません。ただサービスシーンの尺は短めで、イベントCGも1シーン1枚程度であとは差分っていうのは寂しかったです。せっかくなので、そこはもうちょっと凝って欲しかったです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作の舞台は、牧師さん目指す少年達が学ぶ神学校です。
全寮制です。
不純異性交遊禁止です。
不純同性交遊も倫理的に禁止でしょうけれど、そこはやっぱりなホモゲー。
神様怒髪天。


家族を惨殺された主人公、その殺害事件の現場に残された不吉なマーク。
それは、主人公が通っている神学校に存在するかもしれないと噂されている、黒魔術結社のものでした。
結社で行われる不気味な黒ミサ、得体の知れない何かに翻弄される主人公は真実を見つけることができるのか。

お話としてはそんな感じです。




私が一番最初に攻略したレオニードっていうキャラは、学園物でいう生徒会長の役割を担っていました。
総監督生って言うそうです。
主人公は学年をまとめる、監督生でした。
彼も彼で優等生。

代々の総監督生は、黒魔術結社を暴こうと独自の調査を続けているそうです。
レオニードもそうでした。
しかし結社に進入した主人公は、結社のリーダーの声がどう聞いてもレオニードに一致すると気づき・・・。
やばいですね。
謎が謎を呼びます。


本筋のシナリオもそんな感じで、緊張感に塗れまくりで面白かったです。
しかし見所としまして、いやぁこれキャラ同士のやり取りといいますか。
イチャイチャといいますか。
そういうのの力の入れ具合も、半端なかったんですよ・・・。

最初は上級生、しかも総監督生相手だからと敬意を払っていた主人公も、仲良くなるにつれレオニードにガンガン素の自分を出していきます。
レオニードもレオニードで、完璧超人の優等生かと思いきや、抜けている所も満載で。
ギャップ最高ですな。
この睦まじさを、そこそこ時間をかけて丁寧に変化させていたのは好印象です。


次に手をつけたのは、レオニードとは対称的存在である不良の先輩ことニールでした。
今まで関わりがあることがなかった二人ですが、一転、ニールも進入して結社のことを調べていたことが判明し状況は変わります。

何処までも軽いノリなニールは、主人公を弟分のように見てとても可愛がっていました。
子供扱いをしてくるニールにいつも噛み付くような態度を主人公は取ってしまいますが、それも満更ではない様子。
年も離れていて大人っぽいニールに、主人公は自然と惹かれていきました。

一方主人公からの純真な視線に戸惑いを隠せなかったニールは、彼を引き離そうとします。
神の意志に背く的な意味で、ニールは主人公を彼の将来含め凄く大切にしていました。
とてもせつなかったです。
同性愛の禁忌っぷりの重さが、一番効いていました。


主人公のルームメイトでもある親友のセシルルートでも、その禁忌感はかなりのキャパを占めています。
神学校という舞台だからこそのモラルってのが、重く圧し掛かってきます。
自己犠牲で主人公を庇おうとするセシルのやつれていく様は、見ているだけでもきつかったです。
セシルが元々主人公に惚れていたこともあり、恋仲になるのが結構早かったのは救いでしょうか。
いちゃつきっぷりが微笑ましかったです。


色々明らかになるオーガストルート、最終シナリオであるガビィルートも勿論面白かったです。
しかし私の好みでいったら、最初のお三方である謎を追っかけているシナリオの方が好みでした。
それプラス、お三方のシナリオの場合ですと。
共通部分で、とあるサブキャラをフィーチャーしている部分がございまして。

主人公と寮の部屋が同室なものの、折り合いが合わない同級生、そばかすキツネことジャック。
こいつがですね。
めちゃくちゃいいキャラでしてね。

レオニードの前に総監督生を勤めていたのが実兄だったというジャックは、いっつも比較されっぱで結構可哀想な奴でした。
拗ね癖もついているらしく、どこかやること為すこと子供っぽいです。
そんな拗ねキツネと仲良くなるか、ならないかのですね。
温度差がですね。
これまた、凄まじいんですよ・・・。

監督生である主人公に、劣等感から妬みに似た感情を抱いていた、ジャック。
主人公がアウトオブ眼中で相手にしていなかったのも、ジャックを拗ね拗ねキツネにしていた理由の一つでしょう。
ある日、ひょんなことで主人公はジャックの秘密を知ってしまいます。
その秘密が、これまた微笑ましいもので。
微笑ましいからこそ、ジャックは秘密裏にしていたのでしょうけれど。

彼の本質を知り、誤解していたと語る主人公とジャックの間に生まれる友情。
拗ねキツネも拗ねキツネで、主人公と仲良くなることでどんどん性格がマイルドになっていきました。
心境の変化素晴らしいです。

そんなキツネを放置する道も、ありまして・・・。
余裕がなくなっていくジャックが、精神的に追い詰められる様は痛々しいとしか言えませんでした。

彼を救えることができて良かったです。
牛の目が一番可愛いと一生懸命ラテン語で詩を書いた彼の、夢を叶えてあげることができて感無量です。
ジャックの笑顔を守ることができたことが、とにかく嬉しくて仕方ありません。

ジャックはあくまでサブキャラですので攻略はできませんが、彼との交流はそこそこ深いので満足度は高いです。
あくまで友達! というスタンスも、嫌いではありません。
いえ。攻略できるもんなら、させて欲しかった面はございますけれど。
それでもお座なりな扱いをすることなく、しっかり彼とのエピソードを描いてくれた今作には感謝しきれません。
ありがとう神学校。あなたとの出会いに乾杯。



そんな神学校ですが、本作を発売したメーカーの母体はストーンヘッズです。
社長が退社されてしまったので一時期は存続が危なく思えた母体は、今もまだ細々と続いているみたいです。

女性向けホモゲーブランド、PIL/SLASHは社長が退いてから出来たブランドでした。
売れてるかどうかはよく知らないのですけれど、ソフトとしては非常に高レベルなものを提供してくれるので私は大ファンです。
そもそも、男性向け老舗ブランドであるPIL自体を私が一番推しているっていう部分はあったのですが。
それを抜かしても、ここのゲームは面白いです。

処女作であるマスカレードは、まさかの女性向け学園ソドムとして開発されたものでした。
企画の時点でぶっ飛んでいた本ソフトは、学園ソドムのネタっぷりを継承した上でシナリオに深みを与えられた大作です。
うんこピザでしかなかった学園ソドムが、こんな形で生まれ変わるとは思っても見ませんでした。

次作のコイビト遊戯は、サービスシーンをとにかく濃くした女性向けとしては珍しいくらいのエロゲーでした。
雑誌の付録のおまけゲームが元らしいです。
私、そっちは遊んでおりませんけれど。
愚かな主人公が攻略対象にぶっ壊されっぱなしだったり、時にはやり返したりとシチュエーションがかなり凝っていたのが印象的でした。


で。三作目の、神学校。
正直前二作のアクが濃すぎるという意味では、一番凡かもしれません。
それが悪いとかではなく。
今までのやらかし具合が、とにかく派手だっただけなので。

PIL自体が完全にインパクト大賞狙いの派手なイメージだったので、PIL/SLASHもそういう方向性なのかなぁと思っていました。
神学校という作品のカラーは、まず今までのPIL/SLASHで感じたものとはそこまで近くはありません。
中の人の問題と言えば、それでおしまいですが。
っていうか、それでおしまいの話題なんですけれど。


PIL/SLASHから現在出されている三本のソフトは、ライター陣営が全員違います。
っていうか、表立っているスタッフ自体が完全お外の方々です。
イメージとしましては、rufですかね。


マスカレード → 絵師もライターも元アリブル
コイビト遊戯 → 現乙女エロゲー屋


面白いホモゲーは、大抵ライターがエロゲー方面で実績あげている人ってパターンが多いです。
神学校の場合ですと、この人は元サイクのメインライターでした。
デビュー当時からサイクを追っかけていた時期があったので、私はとても馴染み深い方です。

ぽっと出ではなく実績がある人が作る作品ってのは、それだけである程度の保障ができるでしょう。
期待の裏づけを、持てますでしょう。
それはいいことです。

しかし次に繋げるということを考えますと、ブランドそのものに対し今後の不安ってのは残ります。
ここのブランドは残って欲しいです。
いい人常駐で見つけて欲しいものです。

まぁ、現在のホモゲー市場ですとライバルも多くないでしょうし、そういう不安はそこまで上らないのかもしれませんけれど・・・。
悲しい現実です。ハイリスクそこそこリターーーーーーン^^q