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minoruさんのラッキードッグ1の長文感想

ユーザー
minoru
ゲーム
ラッキードッグ1
ブランド
Tennenouji
得点
90
参照数
7969

一言コメント

軽快な日常シーンと、なかなかに派手なアクションシーン。シナリオ自体もダラダラした感がなく、あまりの面白さに一気にクリアしてしまいました。決して長くはないシナリオに、よくあれだけキャラクターの魅力をねじ込んだと驚きます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

どんなゲームかと言いますとね、まぁホモのADVなんですがね。

舞台はイタリアです。
主人公はマフィアの下っ端で、しょっちゅう務所に放り込まれては脱獄を繰り返すという駄目人間でした。
その脱獄すらもスリルを楽しむ趣味の一環としている主人公は、とにかく運が強いことで有名らしく、ラッキードッグなんて通り名もついちゃうくらいだそうで。

そんな主人公の下に飛び込んだトラブルが一件。
主人公がまたブチ込まれていた時のことなんですけれど、彼が所属するマフィアグループの幹部連中が、まとめてお縄にかけられちゃったそうなんです。
これにはさすがのマフィアも大混乱。

主人公に降りた指令は一つ。
みんなで脱出しなさい、とのことです。
しかも成功の暁には、主人公を時期ボスに任命しちゃうよ!というエサまで撒かれたサービスっぷりでございます。
証明書みたいなのも見せられ、どうにも嘘ではないらしいこんな現実。
こりゃやったるしかないね!というのが物語の始まりでした。



本作は三部構成になっています。
ほぼ共通ルートの一章と二章。
その二つを足したぐらいの量である三章が、実質の個別ルートに値します。

共通ルートでポイント稼いで個別ルートで分岐と、まぁ普通のADVとそんな大差はございません。
しかしただ読み進めるだけのVNと違い、攻略難易度はそれなりに高いです。
っていうか、それなりってレベルではございません。
私、自力でグッドED一個も見れませんでしたぜ。
世知辛い世の中です。

目に見える形で表示される値は二つでした。
選択肢で上下するのですが、どれ選べばどれが上がったり下がったりっていうのを一々覚えていないといけないので面倒です。
と言いますのも、その値でルートがバリバリ分岐されてしまうからです。

主人公が、どれだけラッキーであるかを表すラッキー値。
これが低いと死んだりなんだりで幸せになれません。

もう一個のオメルタ値というのは、どれだけマフィア色に染まっているかっていうのを表しているんですかね。
いえ、オメルタって言葉の意味が分からなかったので、ググったらそういうのが出てきたっていうだけなんですけれど。
実際は常識っぽい選択肢かどうかで判別!みたいな印象でしたが。

・・・あぁ。
紳士かどうかとか。
そういう雰囲気は、確かにあったかもです。
人として、マフィアとしてのご立派さとかも含め。そういうの。

これはもう攻略キャラのタイプにもバリバリ影響されてまして、人によってはうーんと下げてないとグッドへの派生が開けない子もいるぐらいでした。


この値の上下のしち面倒くさいことくさいこと。
攻略対象キャラに会いに行ったら、ラッキー下がったぜ!
でも会いに行かなきゃ好感度上がらないぜ!とかザラです。
ぶっちゃけ由良さんゲーなんて毎回こんなもんでしょうけどね。
厳しいったらありゃしません。

厳しいと言えばですね。もうね。
一章の脱出するぜ!話がですね。結構な作業でして。
一日二回の選択肢、選んだ人に会って脱出フラグを集めようぜ!というノリなんですがね。
いやぁ。集めなければいけないの、結構多く。
選択肢を覚えちゃえば楽なんですが。
その楽に行き着くまでが戦いでございます。

こういう自分でメモ取るようなノリは、決して嫌いではございませんけど。
今のご時世を考えると、笑ってしまいたくなります。
昔懐かし総当りゲー時代を彷彿させる理不尽されすね!



で、今作のウリはこの脱出するぜ!話だった気がしますが、実はこれあっけなく終わります。
真のトラブルは、脱出後だった模様でして。
脱出後、地元に帰るまでもちょっとした波乱万丈が続いちゃうんです。
迎えに来るよう手筈していた車は現れず、主人公等の行動が彼等と敵対するギャングに漏れてるとかで大混乱でございます。

それは個別ルートである三章にも続くのですけれど、とにかく抗争抗争抗争の嵐でございます。
4つあるルートで活躍する敵さん方にちょこちょこ違いはありますが、核となるマフィアVSギャングの構図は一定です。

それ故戦闘シーンもかなり多く、シナリオの半分くらいは占めているのではないでしょうか。
エフェクトが派手で、絵は圧倒的に少ないのですけれど読み進めるのも苦にはなりませんでした。
画面を斜めに走る、マシンガンのずだだだだってのがっちょよかったです。

そうそう。
さすがに今年発売されただけあって、エフェクト・システム面での不具合ってのは殆どなかったです。

最近のゲームは便利ですよね。
クイックセーブは当たり前。
オート、スキップ完備。スキップは未読既読判別してくれて。
あ、でも本作ボイスの個別ONOFF機能はなかったです。
まぁ。あっても使いませんけど。もれなく勿体無いお化けが出てしまいます。

ただ回想に登録されるのは各種サービスシーンと、グッドED、ノーマルEDだけでかなり残念でした。
バッドEDでも凝ったものが少なくなかったので、これも収録して欲しかったです・・・。
おかげで私のセーブデータ画面が火を噴くことになっちゃいましたよ。どうしてくれよう。

回想は、基本一人枠7個でした。
うち2個がED関係となりますと、残りの5つがサービスシーン枠となります。
サービス精神旺盛なゲームはおばちゃん大好きですからね、大喜びですね。
でもゲーム自体もそんな長くないですからね、結構せわしない第二ラウンドとか一抹の寂しさを感じますね。

それ以外にも既読判定の攻略度が表示されておりまして、これは攻略対象の4人の子が対象になっています。
埋めるともれなく、ラブいサービスCGが見れます。
これは頑張るしかありませんね。

しかしコレやるドラ並みに面倒くさく、前情報がないと草の根を掻き分けるかのごとくやりこまなければいけなくなります。
ググらないと。ググらないと。
ラッキー値とかで変わるイベントとか、もうね、存在自体を探すのがね、要ド根性になってしまいますからね。



読んでいて先が気になり、面白いと思ったシナリオはルキーノでした。
でも嗜好を絡めたキャラ造詣でいったらイヴァンがダントツです。

EDのですね、対比がたまらないんです。
グッドとバッドの。
ものすっごい分かりやすいんです。それが何故グッドで、それが何故バッドかっていうの。
イヴァンの心の移り具合が、もう愛しくって仕方ありません。

号泣でした。グッドED。
絆って素晴らしいです。
ステレオタイプなテーマですが、ストレートだからこその美しさがそこにはあります。
素直になれないこの子の性格もよく反映された、いいシナリオでした。



他、作品の印象として強く残ったのは、この攻略する子達なんですがね。
びっくりなことに、攻略対象4人のうち2人は愛を囁かないのですよ。
ベッドの中(笑)はともかくとしまして。
正直男同士で愛してるぜベイベ言い合ってるだけなのもそんな好きではございませんでしたので、素晴らしい距離感を味あわせていただきました。

縋る対象。多少の依存。執着。
それを全て恋愛事情に持っていくのはナンセンスだと思っています。
ラブとライクにだって、差なんていりません。
好意があるってだけで十分です。
それこそセックスだって子を孕むための行為ではありますが、肉欲だったり精神的な繋がりを求めるものだったり、ともすれば暴力にも繋がる等様々な用途に用いられます。
娯楽作品は表現が多ければ多いほど幅も広がり多彩さが増しますので、今作の空気はホントたまらなかったです。

またサービスシーン後暗転っていうのが殆どなく、まったりしてたりする描写にニマニマさせられたりしました。
あれですね。
とらハを思い出しますね。>謝れ!JAN○Sに謝れ!



そこまで長くなく、難易度も低くないのでかなりのめりこませてもらいました。
主人公もサバサバしていて、非常にやりやすかったです。
そこそこある残忍な描写も、テキストがしっかりしていたので安っぽさを感じず結構な迫力がありました。
のーとんの売り方を考えると、近作もアペンドディスク等出そうな雰囲気がありこれからの展開が非常に楽しみです。